双子の一卵性、二卵性について

こんにちは、副院長の石田です。

当院では妊娠検査が陽性となって来院される方が毎日いらっしゃいますが、エコーを見てみると双子だったということが年に数回あります。その際によく聞かれるのが「一卵性ですか、それとも二卵性ですか?」という質問ですが、実はどちらなのかは生まれてからでないと分かりません。これに関しては「え?でもうちの双子は妊娠中に二卵性って言われたよ!?」といった感じで誤解なさっている方がとても多い印象なので、本日は双子の赤ちゃんの「膜性」と「卵性」について少し解説してみようと思います。

「膜性」とは

双子の胎児を超音波で診断する時に最も産婦人科医が気をつかうのが膜性の診断です。具体的には赤ちゃんたちを包む絨毛膜と羊膜の2種類の「膜」の数を数えます。ちなみに絨毛膜というのはその後胎盤に変化していく膜で、羊膜というのは赤ちゃんと羊水を包んでいる半透明の膜です。破水というのはこの羊膜が破れて羊水が出てくる状態のことですね。
赤ちゃんが2人見えた場合はこれらの膜がいくつあるか確認するのですが、数え方としては胎嚢(赤ちゃんのお部屋)が2つあれば絨毛膜は2つある(二絨毛膜)と判定できます。そしてこの場合は羊膜も必ず2つに分かれています。
逆に胎嚢が1つしかないのに中に赤ちゃんが2人見えてきた場合は一絨毛膜ということになります。この場合はさらにその内部で赤ちゃんを隔てる薄い膜があるかを確認しますが、もし胎嚢内で赤ちゃんたちの間が仕切られていれば二羊膜、完全に同じ部屋の中にいる場合は一羊膜と診断されます。
なのでまとめると双子の「膜性」は二絨毛膜二羊膜、一絨毛膜二羊膜、一絨毛膜一羊膜の3種類があるということになります。

「卵性」とは

一方で卵性とは受精卵の数を表します。一度の排卵周期で2つの卵子に1つずつの精子がそれぞれ受精して両方とも着床した場合は二卵性、一つの受精卵が途中で2つに分割してそれぞれ1人の人間として育つのが一卵性です。二卵性は最初から別の人間なので性別や血液型なども違う可能性がありますが、一卵性はもとの受精卵が一緒なので遺伝情報も原則的には100%合致します。なので一卵性の双子では下手すると顔認証のセキュリティがお互いに突破しあえるくらい似ていたりします。

「膜性」と「卵性」の違い

上記の通り、二卵性の場合はそもそも受精卵が違うので必ず二絨毛膜二羊膜双胎となるのですが、実は一卵性の場合は3種類の膜性全てになる可能性があります。これは受精卵が分割する時期によるのですが、具体的には受精卵が1個できた後に1~3日目で2人に分かれた場合は二絨毛膜二羊膜に、4〜8日目に分かれた場合は一絨毛膜二羊膜に、9〜12日目に分かれた場合には一絨毛膜一羊膜になると考えられています。(ちなみにそれ以降に分かれた場合は結合双胎という体の一部がくっついた双子になります。)これらのことから一般的に妊婦健診で確認できるのは膜性のみであり、卵性は出生後に遺伝子を調べないと診断できません。妊娠中に担当医から二卵性ですと言われたという方は、胎嚢が2つあります(二絨毛膜)と伝えられたのを誤解されたか、あるいはその医師が双子に対して誤った理解をしているかだと考えられます。

まとめ

というわけで本日は意外とみんなが知らない双子についての豆知識でした。実は世界では「二卵性の一絨毛膜双胎」とか不思議な双子ちゃんたちがちらほら報告されている(そのため一絨毛膜であっても一卵性と言い切れない)のですが、基本的にそれらは例外オブ例外なので皆さんは上記だけをご理解いただければ問題ありません。医学的には双子のリスクや注意点は膜性によってかなりの部分が決まってきますので、妊婦さんやそのご家族は一卵性かな?二卵性かな?とか思いつつも担当医とよく話し合いながら妊娠、出産を楽しんでみてください。