新たな子宮頸管熟化剤の選択肢、プロウペス®︎

分娩誘発の適応となった場合、全てが巷でいう「促進剤」をいきなり使うわけではありません。内診で子宮口の状態を確認し、スコアリングして(これを『ビショップスコア』といいます)薬剤の選択を行うのです。

子宮口がまだ狭い場合は当然ながら分娩まで時間がかかります。そこで子宮頸管熟化剤である『プロスタグランジンE2』を使用し、子宮口を開きやすくするのです。

現在のところ、プロスタグランジンE2は内服薬が用いられています。そして今回、腟内留置用製剤のプロウペス®︎が新たな選択肢として加わります。

(フェリング・ファーマ eラーニングから)

プロウペス®︎はプロスタグランジンE2(ジノプロストン)を含有する、乾燥した親水性ポリマーが網に包まれている製剤となります。

適応:妊娠37週以降の子宮頸管熟化不全の妊婦

『子宮頸管熟化不全』とは、内診によるビショップスコアが6点以下・未満とほぼ同義になります。

ビショップ(Bishop)スコア *転載禁止

また、あくまでも本製剤は子宮頸管の熟化を目的としているので、既に陣痛が開始している方には用いません。

投与方法

①投与予定の20分前に分娩監視装置を用いた連続モニタリング(NST)を行う。

②NSTの評価に問題がなければ、後腟円蓋部にプロウペス®︎を留置する。

③留置後、横になった状態で少なくとも30分間安静になってもらう。また連続モニタリングを再開する。

プロウペス®︎の除去基準

□プロウペス®︎投与後12時間経過した場合

□子宮頻収縮(子宮収縮回数が10分間に5回を超える)

□新たな破水が起こった時、人工破膜を行う時

□胎児機能不全やその徴候が見られる時

□悪心嘔吐、低血圧など、副作用と思われる症状がある時

□30分間にわたり規則的で明らかな痛みを伴う3分間隔の子宮収縮を認める場合

特に「陣痛が発来したらプロウペスを医師または助産師が抜去する」ことが重要です。

上記内容をふまえ以下、にしじまクリニックでのプロウペス®︎投与に関するさらなる指針として、

■プロウペス®︎投与は9時頃に投与する

■留置困難な場合は使用しない、容易に滑脱する場合もその後使用しない

とする予定です。

プロぺウス®︎は、腟内に留置することで他製剤より子宮頸管熟化機構をより期待したり(調節性)、児頭が高いため器械的子宮頸管拡張がしずらい時に用いることを想定しています。

一方でプロスタグランジン類を用いても器械的頸管熟化処置でも「頸管熟化促進の優劣はない」とガイドライン産科編やWilliams Obstetricsでも明記されており、他製剤そのものとの有意性がないことを強調しておきます。

今後当院では院内研修など終えた後、プロウペス®︎を導入します。プロウペス®︎を含め、分娩誘発に関してご質問がありましたら外来担当医師にお声かけください。

(院長執筆)