当院での胎児心スクリーニングについて

にしじまクリニックでは20週台と30週台の2回にわたって胎児心(臓)スクリーニングを行います。

20週健診(超音波外来):日本胎児心臓病学会が定める胎児心スクリーニングのレベルⅠ〜Ⅱに相当したチェックを行います。

20週健診にて見きれない場合は次回の24週健診で見直します。

24週健診の終えた全症例は、電子カルテへ取り込んだ心画像のチェックを行います。チェック項目に対し、画像が不鮮明の場合は26週助産師外来で、GCT採血の待ち時間の間に再度心エコーを見させていただいています。

30週健診:胎児心スクリーニングレベルⅡ相当の見直しを行います。

20週台の心スクリーニング同様、見きれなかった場合は次回の32週健診で見直します。

以下、当院のスクリーニング用紙を添付しておきます。

胎児(赤ちゃん)に心臓の異常が見つかったり、もしくは気になる所見があれば埼玉医科大学総合医療センターや県立小児医療センターらの小児循環器に長けた医師にチェックしてもらいます。

院長執筆

参考)

日本胎児心臓病学会 https://www.jsfc.jp/index.html

ガイドラインに基づく胎児心エコーテキスト

今回のコロナウイルスと100年前のインフルエンザのパンデミックがよく似ている

こんにちは、副院長の石田です。

コロナウイルス、そろそろ暖かくなってきたしいい加減に消えてくれないかなと思いながら過ごしていますが皆さんはお元気でしょうか。ウイルスによる直接的な健康被害はもちろんですが、経済も大打撃を受けており心配です。国際通貨基金(IMF)が厳しい経済見通しを発表しましたが、リーマンショックの時にはほとんどサブプライムローンを保有せず、加えて迅速に利下げなどで対応していち早く危機を乗り切った中国が世界経済を牽引したのに対して今回は全世界的に被害を受けており、見通しが全く立ちません。

さて、人類はこれまでに何度も感染症のパンデミックを経験しています。古くは2400年前にペロポネソス戦争中のアテネで謎の疫病(天然痘説が有力らしいです)が大流行し、多くの犠牲者が出ました。その後も発疹チフスやペストなどの流行を経て、100年前にはインフルエンザのパンデミックを経験しています。この大流行はインフルエンザとしては史上最大のものとなりましたが、その時のことが今のコロナウイルスとそっくりだと思ったので今回はそのよもやま話です。

どんな流行だったか

1918年3月頃から1920年まで全世界で大流行し、当時の世界人口の1/3以上が感染、数千万人が死亡しました。この時の致死率が2.5%とされています。スペイン風邪としても有名ですが、実はどこで最初に出現したのかは分かっていません。当時は第一次世界大戦の最中で、どの国も情報統制が敷かれていた中、参戦していなかったスペインでの流行が報道されたためにスペイン風邪と呼ばれましたが、実際の流行が確認されたのはアメリカが最初のようです。もともと季節性のインフルエンザ自体はあったのですが、この年は流行期を過ぎても患者が出続けたためにいつもと違うことにみんなが気付き始めます。しかしその頃には戦争の影響もあって世界的な人の往来があったことから急激に世界中に広がっていきました。流行の第1波は1918年3月頃から6月まで続きましたが、夏頃になると自然に収束します。この際は感染率は高かったものの、致死率はそれほどでもなかったようでした。しかし同年9月頃より始まった第2波では肺炎などを起こして重症化する人が続出し、大量の死亡者が出たということです。この流行は翌年3月以降の第3波まで続きますが、人類の大部分が感染と共に免疫を獲得することで自然と流行は収束していったようです。この間、兵員輸送船であるリヴァイアサン号の中で大量の感染者が発生、労働者の大量欠勤によりモノの生産能力が大幅に低下、収入減による消費の冷え込み、病院への患者の殺到に加えて医療者が感染することでの医療崩壊、その他各種インフラに携わる労働力が低下したことにより社会機能が麻痺していくなど「え?それって今年の話してる?」的な共通点が多く見られます。ちなみにこの時も感染拡大を防ぐために日本を含めて世界で不要不急の外出を控えるよう通達が出たり、実際に学校や娯楽施設の閉鎖命令も出ていたようです。ちなみに現在のコロナウイルスは高齢者に重症例が偏っているのに対して、100年前のインフルエンザは圧倒的に若者が重症化していました。65歳未満の死亡率は65歳以上と比べて6倍にもなったそうです。

感染症と差別

さて、感染症には直接的な健康被害以外にも経済をはじめ多様な悪影響が懸念されますが、その中でも大きな問題の一つが差別です。人類の歴史上、感染症に対する防疫を建前に差別が正当化されたことが多くありました。古くはペストに対する魔女狩りやハンセン病患者の強制収容、近年ではエイズ患者に対する偏見など枚挙にいとまがありませんが、残念なことにこれだけ情報アクセスが容易になった現代にあってもコロナウイルスに端を発したアジア人差別や患者さん本人に向けられる偏見などがあるようです。ウイルスのような目に見えないものに対する恐怖が一種のパニックのように広がっていくのでしょうが、そういった差別は受けた側はもちろんのこと、行った側にもよい結果にならないことは歴史が証明しています。日本でも今回の流行初期には特定の国に対するネガティブな発言が散見されましたが、この危機を乗り切れるよう世界中で協力していきたいものです。

まとめ

というわけで今回はただの雑談でした。歴史は繰り返すということでまだまだ予断を許さない状況ではありますが、その一方で必ず乗り切れるとも確信しています。にしじまクリニックとしては、こんな状況であっても赤ちゃんたちが無事に産まれてこられるように、また健康にご不安のある女性のご相談にしっかりとのっていけるように体制を整えてまいります。そのため患者である皆様にも面会や付き添いをはじめお願いさせていただくこともあるかとは存じますが、ご協力いただければ幸いです。

COVID-19 まとめ⑤:妊娠、出産、授乳への影響

こんにちは、副院長の石田です。

今回はコロナウイルスと妊娠、出産、授乳についてまとめてみたいと思います。

妊娠、出産とコロナウイルス

原因は不明ですが、妊婦さんはインフルエンザにかかると重症化しやすいことが知られており、コロナウイルス感染症でも同様のことが起こり得ると警戒されています 1)2)。しかし現在のところ妊娠、出産自体がCOVID-19の経過を悪化させるというデータは無く、事実ほとんどの感染した妊婦さんは問題無く軽快していることが知られています 3)。また、コロナウイルスに感染した妊婦さんから産まれた赤ちゃんを検査しても、臍帯血を含めてコロナウイルスは検出されておらず、子宮内感染を起こす可能性は極めて低いと考えられています 4)。ただ、新型のウイルスであることから集積されたデータが量に乏しく確定的なことが言えないこと、上記の通りウイルスによっては妊婦で重症化しやすいことが分かっていることなどから厚生労働省、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)、英国王立産婦人科医協会(RCOG)などたくさんの組織が妊娠中は特に感染に気をつける必要があると注意喚起しています 5)6)7)。分娩様式はCOVID-19に感染したからといって、必ずしも帝王切開にする必要はありません 8)。ただ、重症化した場合には母体保護の観点から帝王切開となりますが、これは他の感染症でも同じです。また日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会が連名で作成された指針によると、コロナウイルス感染者の経腟分娩を管理するのが難しい施設では原則帝王切開とすることもやむを得ないとされています 9)。ちなみに当院ではこの記事を書いた時点では、明らかな産科的適応がない限りはCOVID-19を疑っただけで帝王切開はしない方針です。(COVID-19の診断が確定した患者様は感染症予防法により指定された高次施設でないと分娩できない可能性があります。)

授乳とコロナウイルス

中国から出されたレポートによると、調査対象は6例と少ないですが感染者の母乳からはコロナウイルスは検出されなかったということでした 10)。それに加えて母乳には栄養だけでなく、赤ちゃんの体を様々な感染症から守るための免疫成分も豊富に含まれているため母乳は止めるべきではないと考えられています。ただ、母親から赤ちゃんへの飛沫・接触感染は起こるので、日本小児科学会では感染者からの直接授乳は避け、搾乳後に健康な保護者(例えば元気なお父さんとか)から哺乳瓶を介した授乳をするべきとしています 11)。これに対してユニセフやCDCでは同様の推奨はしつつも、直接授乳のメリットを包括的に検討した上でマスクの着用と手洗いその他の感染防御は必要とした上で直接授乳をしても良いとしています 6)12)。

まとめ

少し難しいお話となりましたが、上記をまとめると以下のようになります。

1)妊婦さんは、理論的にはCOVID-19が重症化する可能性があるが、実際のデータを見ると普通の人と変わらない。
2)子宮内感染(胎児への感染)が起こる確率はとても低いが、妊娠初期に感染した妊婦さんがまだ出産していないのでこれからのデータに注目。
3)経腟分娩は可能だが、施設次第では管理上の問題で帝王切開になる可能性がある。
4)母乳のせいでウイルスが赤ちゃんにうつる可能性はとても低い。
5)日本では哺乳瓶での授乳が勧められているが、海外では感染に注意しながらの直接授乳もOKということになっている。

というわけでCOVID-19に関する現時点での情報をシリーズでまとめてみました。日々の外来でも多くの方が心配されているのを感じますが、皆様の理解の一助になれば幸いです。状況は刻々と変わっていますので、にしじまクリニックとしても日々最新の情報を皆さんと共有できるように院長以下、スタッフ一同努力してまいります。

1) Meijer WJ, et al. Acts Obstet Gynecol Scand. 2015 Aug;94(8):797-819.

2) Pravda N, et al. J Infect Dis. 2019;219(12):1893

3) Liu D, et al. AJR Am J Roentgenol. 1-6, 2020 Mar 18.

4) Schwartz DA. Arch Pathol Lab Med. 2020 MAr 17

5) 厚生労働省: 妊婦の方々などに向けた新型コロナウイルス感染症対策をとりまとめました

6) CDC: Coronavirus Disease 2019, Pregnancy & Breastfeeding

7) RCOG: Coronavirus infection and pregnancy

8) WHO: Clinical management of severe acute respiratory infection (SARI) when COVID-19 disease is suspected.

9) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応(第三版)

10) Chen H, et al. Lancet. 2020;395(10226):809.

11) 日本小児科学会:新型コロナウイルス感染症に関するQ&A

12) UNICEF: Coronavirus disease (COVID-19): What parents should know, How to protect yourself and your children

COVID-19 まとめ④:治療について

こんにちは、副院長の石田です。

今日はCOVID-19になってしまった時の治療についてです。

現在のところ確立された有効な治療は無い

多くの方がご存知のことと思いますが、今のところ確実に効果があるとされる有効な治療はありません。熱には解熱薬、咳には鎮咳薬をといった感じで各症状が辛い時にそれに合わせてお薬を使う対症療法がメインになります。そして重症化した際には入院し、呼吸不全などがあれば人工呼吸器やECMOと呼ばれる人工肺を用いて全身管理を行います。ちなみにたまに誤解があるところですが、人工呼吸器やECMOは別に感染症を治療してくれるわけではなく、単に機能が低下した肺の役割をサポートしてくれているだけです。結局ウイルスを体から排除したり、傷ついた体を修復するのは自分の免疫・回復能力ということですね。その意味でも普段からの体のメンテナンスがとても大切なのです。

非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の使用

NSAIDsとはイブプロフェン(ブルフェン®︎)、ロキソプロフェン(ロキソニン®︎)、ジクロフェナク(ボルタレン®︎)などの解熱鎮痛薬のことです。これらは日常的によく使われる素晴らしいお薬ではありますが、COVID-19での解熱薬は一般的にアセトアミノフェン(カロナール®︎)というNSAIDsではないお薬を使用することが多いです。これはコロナに感染した数人の若者がNSAIDsを服用後に重症化したという報告があったこと(本当にNSAIDsが原因だったのかは不明)、もともとインフルエンザの子供にNSAIDsを投与するとライ症候群という致命的な合併症を起こす危険があり、コロナでもなんとなくそれが懸念されていることなどが理由です。加えてフランスのオリヴィエ厚生大臣が3/14にNSAIDsがコロナウイルス感染者に有害事象をもたらす可能性があるとツイートしたのが世界的に広まり、それがさらにデマを生んでコロナ以上の爆発力で世界に拡散しました 1)。その後すぐにWHOを始めとする世界中の保健機関がNSAIDsと重症化の間には科学的に証明された因果関係は存在しないことを公表しました 2)。ただ、アセトアミノフェン自体は安価で手に入りやすく、NSAIDsと違って妊婦や小児にも使用しやすいことから上記とは関係なく第一選択として使用されることが多いです。ちなみにコロナに限らず重症感染症では解熱薬を使用すると死亡率が上昇する可能性が示唆されています 3)。

アビガン®︎とは

ファビピラビル(アビガン®︎)はRNAポリメラーゼ阻害薬という種類の薬で、ウイルスの遺伝子の複製を邪魔するお薬です。もともと抗インフルエンザ薬として日本の富士フィルム富山化学が開発しましたが、インフルエンザと同様にRNAを遺伝子として持つコロナウイルスにも有効なのでは無いかということで使われ始めました。現在臨床試験が行われていますが、動物実験で問題が認められたことから妊婦さんは使用できません 4)。また、アビガンの他にもヒドロキシクロロキン(元々マラリアの薬だけど、感染症以外の病気にも有効性が確認されているすごい薬。)をはじめ色々な薬が治験に入っており、その効果が期待されています。

感染した後の自己隔離はいつまで?

さて、発熱と咳が4日間続いて保健所に行き、PCR検査で陽性となった後に自宅待機を命じられた場合、一体いつになったら隔離が解けるのでしょうか。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると検査ベースの判断としては

1) 解熱薬を使用せずとも発熱がない
2) 咳や呼吸困難などの症状が改善している
3) 24時間以上間隔を空けた検査で少なくとも2回連続で陰性となる

を全て満たした場合としています。また、検査が受けられない場合の指標としては

1) 解熱薬を使用しなくても少なくとも72時間以上発熱がない
2) 咳や呼吸困難などの症状が改善している
3) 初めて発症してから7日以上が経過している

を全て満たしていれば隔離終了で良いということでした。
ただし、この基準は周囲への感染の危険を大幅に下げるとはしている一方で、可能性を0にできるわけではないとも言っています。ちなみに無症状で検査のみ陽性とでた場合にはその日から自己隔離を開始、その後7日間無症状なら隔離解除となりますが、さらに3日間はマスク着用と他人との距離を2m以上取ることが必要とされています 5)。

まとめ

ということで効くとされるお薬のない感染症ではありますが、治療に関して気になる点をいくつか解説してみました。次回は妊婦さんのコロナウイルス感染について書こうと思います。

1) Olivier Veran: twitter

2) WHO: Could ibuprofen worsen disease for people with COVID-19?

3) Byung Ho Lee, et al. Crit Care. 2012;16(1):450

4) 白木公康. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含むウイルス感染症と抗ウイルス薬の特徴

5) CDC: Coronavirus Disease 2019, Ending Home Isolation

COVID-19 まとめ③:検査について

こんにちは、副院長の石田です。

本日はコロナウイルスの検査についてです。最初に言っておくと、ちょっとややこしいです。

検査方法の解説とPCRの限界

新型コロナウイルス感染を疑われた患者さんは、一般的にPCR(核酸増幅法)という手法でウイルスの遺伝子を検出することによって診断を確定します。検体は主に喀痰を使用しますが、痰が出ない人は喉や鼻の奥を綿棒で拭って採取することもあります。PCRという言葉がこの1ヶ月くらいで広く社会に浸透した印象がありますが、それと同時に偽陽性、偽陰性なんて言葉もよく耳にしますよね。これらの言葉が「病気じゃないのに検査が陽性に出てしまう」、「病気なのに検査が陰性に出てしまう」という状況を示していることをご存知の方も多いと思いますが、実際にどのくらい問題になるのでしょうか?そこで本日は一緒に計算してみようと思います。

まず、上記を検証するには検査の質を決める感度(感染者の何%を陽性と診断できるか)、特異度(健康な人の何%が陰性と診断できるか)、そして罹患率(検査する人の何%が本当に感染しているか)の3つの数字が必要になります。PCRの感度、特異度は諸説ありますが、本日は「両方とも99%」という超高性能検査として扱ってみましょう。対象は全東京都民とし、罹患率は1%と仮定してみます。東京の人口は計算しやすいように1000万人としますが、罹患率1%であれば10万人が既に感染していることになるので一刻も早い感染者の同定が必要ですね。

計算にはこちらの表を使用します。縦が病気の有無、横が検査結果です。まず、全検査対象数である10,000,000を右下に入れます。

続いて罹患率が1%なので感染者数:100,000人と健康な人の数:9,900,000人をそれぞれ記入します。

感度99%なので病気の100,000人中99,000人が陽性判定(1,000人が陰性)となり、特異度99%なので健康な9,900,000人中9,801,000人が陰性(99,000人が陽性)になります。

すると検査陽性の人の総数は99,000+99,000=198,000人、検査陰性の人の総数は1,000+9,801,000=9,802,000人になりました。

さて、これを見て既にお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、なんと検査陽性の人の半数は本当は感染していません。これを統計用語で「陽性的中率」(この場合は50%)といいます。そして割合は低いですが検査陰性の人の中にも1,000人もの感染者が潜んでいることになります。実はこれこそが流行当初から、専門家がこぞって「検査を無差別にやってはいけない」と言い続けていた理由です。今回の試算は感度・特異度ともに99%(超高スペック)、加えて都民が既に10万人感染しているという条件でやっているにも関わらず惨憺たる結果になりました。これをより実際の数字に近いであろう感度60%、特異度90%、罹患率0.1%に置き換えて再計算してみると検査陽性者中、本当の感染者の割合は0.6%程度になります。病院には残りの100万人近い偽陽性の患者さんまでもが一緒に殺到し、一瞬で医療崩壊が起こるわけです。孫正義社長の100万検査キット配布が実現するとまずかったのはこういうことでした。さらに実際の検査では、感染者から採取した検体にウイルスがちゃんと入っているかも問題になります。ウイルスは主に下気道といって肺の奥にたくさんいるのですが、とある研究によると感染者の喀痰ですら72%、上気道の拭い検体では僅かに32%しかウイルスが検出されませんでした 1)。以上のようにPCR検査自体は弱点だらけなのです。

PCRの弱点を補完するために

ではどうしたら良いのでしょうか?実は上記の計算中にその答えがあるのですが、検査を受ける患者さんが実際に感染しているであろう確率(検査前確率)を上げておくことで偽陽性の問題は大きく改善します。もちろん患者さんに1日人の集まるところで過ごしていただいてから検査するということではなく、本当に感染が疑われる人にだけ検査をするということです。最初の試算では罹患率1%と仮定した集団に検査を行いましたが、例えばコロナに感染している確率80%の人だけに絞って検査をした場合、感度60%、特異度90%だとしても陽性的中率は96%まで改善します。そしてこの検査前確率を引き上げる方法こそが、以下の厚労省からのご提案だったというわけです。特徴的な症状がある人だけに検査をすることでより正確な結果を得ようとしていたんですね。もちろん検査をめんどくさがっていたわけではありません。

その他胸部CT検査の方がPCRより感度が良いかもという報告もあるようですが、その一方でアメリカ放射線学会はCT上の肺炎像がコロナウイルスだけの特徴的なものではないことから第一の検査として使用することには否定的です 2)3)4)。

まとめ

というわけで随分と分かりにくい話だったと思いますがいかがでしたでしょうか?もし「コロナにかかったかな?」と思っても、余裕がある場合は少し様子を見てみるのも大切だということがご理解いただければ幸いです。そもそもコロナウイルスの検査は医療者は完全防御のうえ、陰圧室という特別な施設で検体を採取する必要があるため一般的な医療施設では実施することすら不可能ですので、いきなり病院に行っても検査してもらえるわけではありません。調子が悪かったり、受診するべきか迷った場合は上記の通り最寄の帰国者接触者相談センターへ電話で相談してみましょう。

1) Wang W, et al. JAMA 2020 Mar 11.

2) Fang Y, et al. Radiology. 2020 Feb 19.

3) Ai T, et al. Radiology. 2020 Feb 26.

4) ACR Recommendations for the use of Chest Radiography and Computed Tomography (CT) for Suspected COVID-19 Infection