緊急避妊薬について

こんにちは、副院長の石田です。

全ての女性にとって妊娠するかしないかの選択は社会的にも身体的にもとても大きな決断の一つですが、デリケートな話題であるほか文化的な要素も影響して日本では女性が主導権を取ってコントロールするのが難しい場面もあるかもしれません。本来は男性がしっかりと自覚しなければいけない部分ではありますが、いざという時には女性のためのレスキュープランが存在します。ということで本日はアフターピル、モーニングピルの名前でもお馴染みの緊急避妊薬についてお話ししたいと思います。

どんな人が緊急避妊をするべきか

基本的には妊娠を希望しないにも関わらず、適切な避妊方法が取られない性交があった全ての生殖可能な女性が対象となります。具体的には単純に避妊しなかった、ピルを飲み忘れた、コンドームが破損した、腟外射精のみしたなどが挙げられますが、その他にはもちろん性暴力被害者の方も含まれます。

緊急避妊の方法

以前はYuzpe(ヤッペ)法という2回の内服が必要な方法が採られていましたが、2011年からはレボノルゲストレルというお薬を1回飲めばよい方法(LNG単回投与法)が認可されて主流になりました。いずれも性交があってから72時間以内の内服で有効とされており、妊娠阻止率は85%前後と言われています。「意外と低いじゃないか」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、これに加えて元々1回の性交で妊娠する確率が10%前後しかないことを計算に入れると結局緊急避妊薬を使った後の避妊成功率は97%以上に昇ります 1) 。内服後は95%の女性に予定月経日の7日以内で月経が来ますのでそれが確認できたら避妊成功ということになります。逆に月経が来ない場合には避妊失敗の可能性がありますので妊娠反応を確認する必要があります。

LNG単回投与法は副作用もほとんど無く、アレルギーがあったりしなければまず安全に使用できる避妊方法ですが、授乳中の方に限っては内服後24時間授乳を中止していただく必要があります。ちなみに海外では2010年頃からUlipristalというレボノルゲストレルと同じくらい安全なのに性交後120時間まで有効なお薬 2) が出て主流になっています。日本でもどこかの製薬会社が販売しようとしているという噂を聞きましたが、まだよく分かりません。

処方の受け方

海外では町の薬局で手軽に買える国も多いですが、日本ではまだ産婦人科を受診しないと薬を手に入れることはできません。また、大きい病院では救急対応などを優先させるために原則として緊急避妊薬は処方していないことも多く、主にクリニックで取り扱われている傾向があります。24時間いつでも処方を謳っている施設もありますが、上記の通り72時間以内に内服すれば良いので落ち着いて最寄りの産婦人科へ診療日に受診されるということで大丈夫です。(事前に薬の取り扱いがあるかどうか、電話やホームページなどで確認しましょう。)そうは言っても大型連休中はうっかり72時間以内に診療日が無い場合もあります。そういう時にはお近くの「お産を取り扱っているクリニック」に問い合わせてみると良いでしょう。「お産を取り扱っている=24時間必ず医師が常駐している」ということになりますので休日でも処方を受けられる可能性が高くなります。

ちなみに処方を希望される女性が未成年の場合、どうしたら良いのかパニックになってしまうかもしれませんが、原則的には保護者の同意などは必要ありませんので安心してお問い合わせいただければと思います(※)。ご両親としてはお子様が薬を必要としている状況はとても気になるかと思いますが、成人しているかどうかに関わらず避妊に関しては全ての女性に平等に自己決定権があるというのが基本原則です。病気ではないので自費診療となりますが、逆に保険を使用することもないためプライバシーは守られます。当院では避妊指導料込みで¥15,000(税別)で処方をお受けしていますので必要な場合はお気軽にご相談ください。

また、不幸にも性犯罪に巻き込まれてしまった被害者の方に関しては、警察に被害を届け出ていただくと診察、検査、緊急避妊薬の処方、中絶などにかかる費用を公費で負担してもらえる制度があります 3) 。被害を訴え出るのはとても勇気の要ることですが、そういった選択肢があるということも皆様には知っておいていただきたいです。

(※)病院によってポリシーが異なる場合がありますので必ずご自身の責任で各受診先へお問い合わせください。

1) Novikova N, et al. Contraception 2007 Feb; 75(2): 112-8

2) Glasier AF, et al. Lancet 2010; 375: 555-562

3) https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/whitepaper/w-2019/pdf/zenbun/pdf/hd1s.pdf

NCPRインストラクター更新講習で感じたこと

先日、NCPR(Neonatal CardioPulmonary Resuscitaion:新生児蘇生法)インストラクターの更新のため、講習を受けてきました。

以前のブログで、にしじまクリニックでのNCPRに関する朝練の様子をお伝えしました。

朝練、NCPR編

蘇生手技が適切にできなければ、新生児仮死の赤ちゃんは救えません。逆を返すとNCPRのキーマニューバー(手技)である『人工呼吸』を確実にできれば、新生児仮死の90%は蘇生可能といわれています。

下に添付した写真の道具が赤ちゃんに人工呼吸を行うための器具・バッグで、このバッグから赤ちゃんの気道へ適切な空気および酸素を送ります(『陽圧換気』と呼ばれます)。

赤ちゃんの口にマスクをあてながらこのバッグを扱い、確実で有効な人工呼吸を行うことは手技の難度が高いのです。

お産に関わる医療従事者は、NCPRは必須の資格といえます。しかしながら適切に行えるかどうかは普段から設備や道具・器具に触れていることが重要で、『Low dose, High frequency training in hospital』が望まれています。よって当院での『朝練』の取り組みに間違いはないと確信した講習会でもありました。もちろん今後もNCPRに限らずこのような取り組みを続けていきます。

参考)

インストラクター対象フォローアップコース事前学習資料

NCPR e-ラーニング(https://www.ncpr.jp

つわりのあれこれ

あけましておめでとうございます、副院長の石田です。今年もよろしくお願いします。

年末年始で食べすぎてしまった方もいる反面、今回は『つわり』について投稿しようと思います。

妊娠初期の方の共通した悩みはつわりですね。食欲低下、嘔気、嘔吐はイメージにあると思いますが、その他頭痛や唾液量の増加、眠気など人によって様々な症状が出ます。何でせっかく妊娠したのにこんな苦行を強いられるのかと元気な旦那さんを横目に理不尽さを感じている世の女性も多いかと思います。

つわりとは何なのか

人によって程度の差はありますが、何らかのつわりの症状を呈する妊婦さんは全体の50〜80%くらいと見積もられています。特に3%くらいの妊婦さんでは健康に支障を来すような体重減少や脱水症状になる妊娠悪阻という状態まで発展することがあります。個人差も去ることながらマクロで見るとアジア人と中東人で特に多いと言われていて、中国の統計では10%の方が妊娠悪阻に罹るというデータもありますが、実際のところつわりと妊娠悪阻の境界線は曖昧で、国際的に統一された診断基準があるわけではないため実態は不明です。ただ、共通した認識として若年、初産婦、有色人種などがリスクファクターになると言われています 1)。その他うつ病の人は重症化しやすいとか、ホルモンが関係しているとか、ピロリ菌や遺伝子的な関連も示唆されていますが決定的なことはほとんど分かっていないようです 1)2)3)。

つわりの治療

嘔気に対して吐き気止めのお薬を出すこともありますが(欧米では対抗癌剤用の強いやつを使うこともあります)、妊娠が根本原因なので結局治療は対症療法のみです。中には分娩までずっと気持ち悪さが残る人もいますが普通は妊娠中期頃には良くなってくるのでじっとそれを待つことになります。最も気をつけなければいけないのは脱水で、生命維持に必要な水分やミネラル、ビタミンなんかが足りなくなってしまう時は点滴をして補います。また、ビタミンB6が症状を和らげるというデータもあるためご相談の上で処方することもあります。個人でできることとしてはショウガが吐き気を減らすのに効果があると言われているので試してみるといいかもしれません(食べられればだけど。)4)5)。

まとめ

というわけで分からないことだらけのつわりのお話でした。周りの人からは「つわりなんて皆乗り切ってるんだから頑張って!」とか言われるかもしれませんが、本人からしたら「そんなの分かってるけど他人とか関係なく私は今しんどいんだよ!」というのが本音でしょう。私たちから言わせるとつわりの症状の重さやそれぞれの妊婦さんの耐性は様々であり、人と比べてどうとかいう話ではありません。当院では患者さんの症状とご希望に応じて外来での処方、点滴から入院まで柔軟に対応できますので、特にかかりつけの方はお気軽にご相談いただければと思います。

最後に

私の奥さんは妊娠中に出産まで吐き気が抜けず辛そうにしていました。初期に唐揚げは食べられたのでずっとそればかり口にしていたのですが、生まれた子供が3歳くらいになった時に初めて唐揚げを食べさせたところ、「ぼく、この味知ってる!」と言い出してびっくりしたことがあります。知り合いのところもリンゴで同じ現象が起きたと言っていました。本当に関係があるのかは分かりませんが、今つわりで苦しんでいる皆さんにも近い将来にそういうこともあるかもしれませんので苦しい中でもそれを楽しみにして食べられるものを探してみてはいかがでしょうか?

1) London V, et al. Pharmacology. 2017; 100(3-4): 161-171

2) Grooten IJ, et al. Am J Obstet Gynecol 2017; 216: 512. e1-e9

3) Li L, et al. Gastroenterol Res Pract 2015; 2015: 278905

4) Viljoen E, et al. Nutrition J 2014; 13: 20, 2891-13-20.

5) ACOG Practice Bulletin. Number 189, January 2018

ミレーナについて

最近、テレビ効果かミレーナ®についてのご質問が多く、ブログに載せることにしました。

ミレーナ®はレボノルゲストレル放出子宮内システム、いわば黄体ホルモンを放出する子宮内デバイスです。

ちなみに、『レボノゲストレル』は緊急避妊薬としても使われる黄体ホルモンです。なお先日ピルについてのブログ投稿でも書かせていただきましたので、是非とももう一度ご確認ください。

ピルについて

現在日本ではミニピル、いわゆる黄体ホルモン単独のピルが、緊急避妊薬以外には用いることができないため、血栓リスクを理論上下げるためには、このミレーナが有効と考えます。

治療の適応は過多月経月経困難症となります。

自費診療として避妊目的にも使用可能です。

参照サイトhttps://whc.bayer.jp/mirena/mirena/index.html

にしじまクリニックではご来院後にまず問診、その後外来診療でエコーによる子宮の評価、性感染症のチェックをさせていただきます。可能なら子宮がん検診も強くお勧めします。もろもろの結果で異常ないことを確認した後、子宮内へミレーナ®挿入となります。

挿入装着時期は月経開始後1週間以内を目安にしてください。

ミレーナ®の使用を開始してから数ヵ月間3ヶ月が目安)は月経時期以外の出血がみられことがあります。 しかし、通常は時間の経過とともに減少します。

装着後は定期的な診察をお願いしています。装着留置期間は5年間です。

装着希望の方の注意点として、『子宮は筋肉による蠕動運動がある』ことがキーポイントになります。せっかく良い位置に挿入しても後にズレてしまう事があるのです。例えば、分娩後6週未満の方は装着を控えていただきます。子宮復古のため、オキシトシンという体内ホルモンによる子宮収縮が起こり、装着後のズレや子宮穿孔のリスクがあるからです。

気になる点ございましたら、私院長もしくは副院長石田にご相談ください。

いよいよ年末ですね。本日で今年の外来診療は終了となります。おかげさまで外来数は増加傾向で大変ありがたいことです。にしじまクリニックを頼っていただき、本当にありがとうございます。

来年は1月4日(土)から外来診療をスタートします。もちろん年末年始の分娩および緊急対応に休みはありません。

今後ますます、経験のみならず正しい知識とエビデンスを活用し、できるだけ皆さまの気持ちに寄り添える診療をしていく所存です。一緒にお悩みを解決していきましょう。

参考)

バイエル薬品株式会社 Web conference(2019年11月21日)

Essential obstetric and newborn care, 2015 edition

小さい子供のおりもの異常について

こんにちは、副院長の石田です。

たまに私生活や外来のついでなどでお子さんのおりものに違和感を感じるというお母さんたちから相談を受けることがありますが、実は女児の婦人科的な訴えとしては最も多い症状と言われています 1) 。実際には小さい子供の異常なので受診するとしても小児科が多いと思うのですが、小さくても女性のお悩みということで本日は産婦人科医がお話ししてみようと思います。

小さな子におりものの異常が発生する要因

多くの場合は感染性腟炎といってばい菌が腟で繁殖した結果炎症が起こっているようです。そうなりやすい要因としては、大人の女性との性器の形態的な違いやトイレ後の清潔、また女性ホルモンの量などの影響が考えられています。具体的には子供は腟と肛門の距離が近く汚染されやすい、うんちした後にお尻を拭いた結果技術的に未熟なためうんちが腟に付着してしまう、あるいはトイレットペーパーの切れ端が腟内に入ってばい菌が繁殖する温床になってしまう、女性ホルモンが少ないため腟内を雑菌から守るための乳酸菌が未熟などです 2) 。その他の例外として性病がありますが、これはほとんどの場合性的虐待によるものです。外性器に傷があっておりものも変な時は性病を疑って検査したり、状況次第では医療施設から児童相談所などに通報することもあります。

実際の治療

まずは生活における指導などが中心となります。具体的にはお風呂の時にしっかりとシャワーで流すこと、入浴剤などは避けること、キツすぎる下着などは避けるなどがあります。抗生剤に関しては小児に使用することの不利益も多く報告されているため安易に使用することはありませんが、はっきりと病原菌として言い切れる原因菌が特定できた場合には使用がお勧めされているということでした 3) 。

まとめ

おりものの異常と言うと小さな女の子にはあんまり関係ないような印象もあるかもですが、上記のように意外にばい菌が入りやすかったりします。思春期以降の女性と違い腟内の細菌のバランスに関するデータが少ないため検査をしても結果の判断が難しかったりしますが、もし変かな?と思うことがあれば試しにお近くの小児科や産婦人科へご相談ください。男の子と違って清潔を保つのが難しい部位ではありますが、何にしても予防が一番ということで、普段からご両親が気を配ってあげるのがとても大切なようです。

1) A Jaquiery, et al. Arch Dis Child 1999; 81: 64-67

2) Neyazi SM. J Nat Sci Med 2019; 2(1): 14-22

3) Manohara Joishy, et al. BMJ 2005; 330: 186-188

ピルについて

月経(生理)のある動物はそう多くはありません。ご存知でしたか?

ヒト、女性は通常月1回生理が起き、痛みや症状が伴うストレスは男性と比べ計り知れません。昔と比べ、現代の女性は出産回数が少ないです。ということは月経の回数も多いことになります。

そこでピルのお話、となってきます。初めてピルが使われたのは1960年代となります。21日内服し7日間休薬するタイプで、これは内服コンプライアンスの関係から、要するにカレンダーで合わせた飲み方ということになります。月1回の出血があれば安心するという方々がいらっしゃるのも事実です。しかしながら、ある研究結果から、月1回の生理は医学的に健康と関係なく、No health benefitであるということがわかっています。

それであれば、できるだけ生理の回数が少ない方が良いとの考えで、最近は120日間連続内服するピルも使われてはじめています。実際、にしじまクリニックでも処方することが多いです。

ピルはLEPやOCと呼ばれます。

LEPとはLow dose Estrogen Progestin、いわゆる月経困難症や子宮内膜症などの疾病に対して使うピルを指します。よって保険適応となります。避妊目的には使用しませんが、結局のところ服用中は基本的に妊娠はしません。

避妊目的に用いるピルがOCでOral Contraceptiveと呼ばれます。

ちなみに妊孕性(妊娠)については、LEPおよびOCを中止すれば可能です。

日本ではLEPもOCも『エストロゲン+黄体ホルモン』のコンバイン製剤なので、あとはエストロゲンの濃度や黄体ホルモンの種類に製剤の違いがあります。

今回は保険適応となるLEP製剤を説明します。以下3種類を私院長と副院長は処方します。

・ルナベルULD:エチニルエストラジオール(以下EE)+ノルエチステロン(第1世代)

・ジェミーナ:EE+レボノルゲストレル(第2世代)

・ヤーズフレックス:EE+ドロスピレノン(第4世代)

現在はエストロゲン系、いわゆるエチニルエストラジオール(EE)の濃度を少なくし、血栓症や乳がんのリスクを減らそうとする製剤が選択されます。ちなみに、EEは卵巣から直接分泌されるエストラジオールとは異なり、採血で反映されない外因性のものです。EEはエストラジオールの4〜8倍活性があり、よって50歳以上の方はエストロゲンの活性ありすぎて血栓症のリスクが高く、原則使用禁止がうたわれています。

また、黄体ホルモン中に含まれるアンドロゲンを減らすことで脂質プロファイル悪化、体重増加、多毛、ニキビを減らすことができます。世代が上がる程アンドロゲンが少ないのです。また、ドロスピレノンは月経前症候群(PMS)の効果が期待できるとされています。

黄体ホルモンの中で『レボノルゲストレル』は緊急避妊薬や子宮内デバイスのミレーナ®に使用されることを知っておいてもよいかもしれません。

他国ではミニピルと呼ばれる、黄体ホルモン単独のOCがあり、ドロスピレノン単独のOCは血栓症のリスクをさらに減らすことができます。残念ながら日本では内服薬に関してはそれがないので、血栓症のリスクを減らすためには

・ピルを中断する回数を少なくする

・OC単独の血栓症リスクに比べ、喫煙者がOC内服によりは約2.5倍以上増加することを理解してもらう(だから喫煙者は処方控えさせていただきます)

・前兆を伴う片頭痛もちの方は禁止

などの条件を確認しつつ私たちは処方しています。

あと、都市伝説(?)的なものとして、太りやすい、浮腫みやすいのでは、とのご質問をいただきますが、LEPおよびOCは代謝を上げるため太りませんし、浮腫みません。これは信頼できるエビデンスを提供するコクランレビューにも明記されています。

OC服用者は将来の子宮体癌、卵巣癌、大腸癌リスクを減らします。

子宮頸癌の予防ははワクチンで、適応年齢が過ぎているならがん検診を欠かさずお願いします。

ピルは欧米ではLife design drugsとも呼ばれます。月経に伴う症状が辛くて学業に支障が出たら困りますよね?またピルは女性アスリートにも用いられる薬なのです。

月経でお困りの場合はご来院いただき、私院長もしくは副院長へご相談ください。

参考)

OC・LEPガイドライン

第8回埼玉県女性医療フォーラム

今日の治療薬

Essential obstetric and newborn care, MSF book 2015 edition

二日酔い

こんにちは、副院長の石田です。

皆さんはお酒は好きでしょうか?楽しい気分になるとついつい飲みすぎて次の日にしんどい思いをしてしまう人も多いかと思いますが、そもそも二日酔いってなんで起こるんでしょう?というわけで今日はそんなお話です。

二日酔いとは

二日酔いとは大量の飲酒の翌日に起こる精神的、肉体的な症状のことで、血中アルコール濃度が0に近づくときに起こるとされています 1)。二日酔いは間違いなくお酒が原因で起こるわけですが、実はその実態はまだ解明されていません。アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドが原因物質として有名ですが 、実際にはそれだけでは説明できないメカニズムが疑われています。二日酔いになりやすい人となりにくい人がいることが知られていますが、ある研究ではアルコールに弱い人は強い人と比べて免疫力も弱い可能性が示唆されています 2)。

二日酔いの体に対する影響

二日酔いは精神、運動両面に影響が出るというデータがあります。具体的には発電所での複雑な機械作業を行う作業員や車の運転手を対象にした研究でエラーが出やすくなるという結果が発表されています 3)4)。また、ラグビー選手を対象とした有酸素運動能力の評価やスキー中の事故の発生率などでも悪影響が見られたということでした 5)6)。そのほか倦怠感、精神的不安定さなどの気分変調も報告されていますが、これらに対して対症療法的に治療を行うというのが現在の治療戦略として一般的なのだそうです 7)。

二日酔いの治療法

「治療戦略として一般的」とか上で言っておきながら気まずいんですが、確立した治療法は現在のところありません。吐き気や頭痛にはお薬でいくぶん対応できるものの、実際にはひたすら嵐が過ぎるのを耐えて待つというのが根本的な治療になります 8)。ただ、予防法で言うならお酒を飲んでいる最中にたくさんお水を飲むことが大切とされています。これはエタノールが抗利尿ホルモンの働きを阻害するため飲酒による排尿とともに脱水状態になるのでそれを予防するのと、お酒の間にお水を挟むことで総飲酒量が減ることが期待できるからです。

まとめ

アメリカの疾病予防管理センター(CDC)の試算では、二日酔いは年間に1790億ドルもの社会的損失を生み出しているそうです 9)。時には二日酔いも楽しいパーティーの後の醍醐味かもしれませんが、是非適度な水分を摂りながら楽しむようにしてください。ちなみに映画:ハングオーバー!はコメディ好きならお勧めです。

1) Van Schrojenstein Lantman M, et al. Current Drug Abuse Reviews, Volume 9, Number 2, 2016, pp. 148-154

2) Aurora J.A.E. Van de Loo, et al. Int J Environ Res Public Health 2018 Jun: 15(6): 1286

3) Rohsenoe D.J. , et al. Journal of Studies on Alcohol, 67(3), 406-415

4) Vester J.C., et al Psychopharmacology, 231(15), 2999-3008

5) O’Brien C.P. Sports Medicine, 15(2), 71-77

6) Cherpitel C.J., Journal of Studies on Alcohol, 59(2), 216-221

7) Marith van Schrojenstein Lantman, et al. Hum Psychopharmacol. 2017 Sep; 32(5): e2623

8) Vester J.C., et al. Curr Drug Abuse Rev. 2010 Jun; 3(2): 103-9

9) Marilou Markus Curr Drug Abuse Rev. 2017; 9(2): 106-112

若い世代のライフデザイン構築支援事業

先日、埼玉県少子化対策事業(https://www.pref.saitama.lg.jp/a0607/r1_lifedesign.html)の一環として、学生さん方がにしじまクリニックへ見学にいらっしゃいました。

施設見学はもちろん、産後の様子を身近に感じてもらうため沐浴を間近で見てもらったり、私院長からは妊娠に関わる基礎知識を、両親学級の一部から説明させてもらいました。

学生さん方は、そもそも産婦人科にかかったことがなかったため、赤ちゃんを見るだけでも刺激があったようです。

このような事業があるのは大変素晴らしいことだ思います。埼玉県としてもまだ始まったばかりの取り組みなようです。若い世代が自身のライフプランを描きやすい環境を構築するため、行政のみならず私たち産婦人科医療従事者もバックアップできればと思います。まずは女性に関わるお悩みを気軽に相談しにいける場が必要なのでしょう。クリニックの規模だからできることがありそうです。このブログもその一助になれば良いですね。

無痛分娩と硬膜外麻酔(概論)

硬膜外麻酔とは、硬膜外腔に局所麻酔薬を注入して分節麻酔を行う方法です。ちなみに硬膜外腔の場所は背骨の中を通る脊髄という太い神経の膜一枚外側にある空間で、この場所に麻酔薬を注入します。英語では”epidural”なので、医療者には「エピ」と呼ばれることもあります。

無痛分娩に硬膜外麻酔を使用する時には、本格的に陣痛がついてきたら(目安としては子宮口が4~5cm開いた時)細い管のカテーテルを背中から硬膜外腔に留置します。その際にクモ膜下腔(硬膜外腔の先の深い位置)に入っていないかの確認をしたり、少量の麻酔薬を注入して異常が出ないか確認します。その後患者さんの状態に問題なければ本格的に痛みをおさえるの薬の量を使用していくことになります。

帝王切開の術後鎮痛を目的に使用する場合には、手術前に帝王切開を行うための脊髄クモ膜下麻酔と一緒に硬膜外麻酔を行います。帝王切開を含め、腹部手術の後は痛みが強くなりがちですが、硬膜外麻酔があると術後をとても楽に過ごすことができます。

リスクとして特に気にしなければいけない重篤なものは薬のアレルギー、局所麻酔中毒、全脊髄麻酔、硬膜外血腫・膿瘍や脊髄損傷による下肢の感覚障害など、なんだか恐そうなものが並びますが、いずれも頻度の違いはあるものの数万〜数十万分の1程度と、とても稀です。

にしじまクリニックでは日本産科麻酔学会に所属する、経験を積んだ常勤の医師が麻酔を行なっており、施設としても埼玉県では最も早くJALA(無痛分娩関係学会・団体連絡協議会)に登録されております。 ご希望の際は無痛分娩、帝王切開ともお気軽にご相談ください。

(副院長執筆、一部院長加筆。12月2日公表)

安全な無痛分娩のための講習会

副院長の石田先生がにしじまクリニックに加わり、先代院長(顧問)も含めて当院での無痛分娩の拡充を今年から始めることができています。具体的には当院での無痛分娩管理マニュアルのアップデート、スタッフ教育、関連する協議会や学会の参加です。

おかげさまで、無痛分娩および帝王切開術後の術後鎮痛を目的とした硬膜外麻酔の件数が増えています。

だからこそ皆さまの安全を確保するために、産科麻酔である無痛分娩・硬膜外麻酔の手技・知識・対策を『整え』続けていかなければなりません。

先日、日本産科麻酔学会へ出席し、JALAによる講習を受けてきました。

JALAとはJapanese Association for Labor Analgesia(無痛分娩関係学会・団体連絡協議会)のことで、昨今の無痛分娩による事故から積極的な研修体制の構築や情報共有のために発足した協議会で、産科系の学会だけでなく、麻酔系の学会もマルチリンクした会となっています。

にしじまクリニックはJALAの考えに賛同し、昨年からJALA認定基準相当の体制を整え、埼玉県で初めてJALA公開事業ウェブサイトの無痛分娩施設として掲載されました。

JALAウェブサイト上現時点では全国で81施設が登録されており、最終的には300施設以上の掲載を目指しているそうです。ちなみに埼玉県内では当院を含め4施設が登録されています。

https://www.jalasite.org/area/3_11_0

JALAは安全な産科麻酔を提供するため積極的な講習会の受講を義務づけており、その講習会は4つのカテゴリーから成り立っています。

先日の学会内の講習では私と石田副院長がカテゴリーA講習を受講、D講習は遠藤師長が受講しました。

カテゴリーBの急変対応コースは、今年の日本産科婦人科学会にて私院長が受講・合格しました。

Cについては私を含め、当院全助産師がJ-MELSの母体急変時の初期対応コースを受講・合格しております。

参考)

第123回日本産科麻酔学会学術集会 JALA主催カテゴリーA講習

(2019年11月25日作成後公表)