クアトロテストについて

こんにちは、副院長の石田です。

無事胎児心拍が確認できて妊婦健診が始まると、胎児の先天性疾患を調べるための出生前検査についてどうするか考えることになります。というのも、少し前までは命の選別に繋がりかねないという懸念から、「出生前検査に関しては聞かれなければ答えない」というスタンスを取る医療者が少なくありませんでした。しかし有象無象の情報が入り乱れる現代社会において、正確な情報が提供されないまま誤った根拠による判断で後悔されるご家族が少なからず存在することから、現在は全ての患者さんに中立的な情報を提供して自己決定を促す「インフォームドチョイス」を行うのがスタンダードになりつつあります。そこで本日は出生前検査の一つであるクアトロテストについて解説したいと思います。

どんな検査なのか

クアトロテストは母体採血によりAFP、hCG、uE3、インヒビンAという4つの血清マーカーを計測することで胎児のダウン症候群、18トリソミー、開放性神経管奇形という3種類の病気の有無を予測する検査です。具体的には下の表のようになりますが、実際の判定では数値だけでなく体重や年齢などいくつかの要素を加味して算出することになります 1)。

検査の特徴として、それらの疾患を持つ可能性が「1/500」のように確率で報告されるため、どんなに低くても0にはなりませんし、逆にどんなに高くても1/2 (50%)を超えることはありません。検査結果は採血から1週間程度で届きます。

検査を受ける時の注意点

この検査を受けられる方が最も気にされるダウン症候群では、陽性か陰性かの境目になる数値は1/295に設定されています。しかし、例えば結果が1/200で陽性だったとしても、検査を受けたのが38歳の妊婦さんであればそもそもダウン症の罹患率は1/145であり、それと比べると低いことになります。逆に1/400で陰性だったとしても妊婦さんが25歳であればそもそもの罹患率である1/1040よりダウン症である確率が高いことになるので、意外と結果の解釈は難しかったりもします。また、そのような検査の性質から40歳前後の方がこの検査を受ける時には年齢要因により「陽性」という判断が出やすくなるため、クアトロテストを選ぶべきかは慎重に検討される必要があります。
また、胎児染色体を直接評価しているわけではないため、陽性判定が出たとしても本当に染色体に異常があるかどうかは羊水検査などの「確定検査」を受ける必要があります。事実、クアトロテストを受けた方の10%程度が陽性結果を受け取りますが、実際に確定検査に進んで本当に染色体異常が見つかる割合はそのうち2%程度とされています。

まとめ

本日はクアトロテストについて解説いたしました。「妊婦さんの年齢も考慮しつつ病気の可能性が低いと判断される場合にはほぼ安心して大丈夫ですが、実際に陽性と診断されても胎児が本当に罹患しているかは羊水検査をしてみないと分からない」ということがご理解いただければ本日は十分です。このような検査の性質から諸外国ではややオワコン扱いされているものの、NIPTという出生前検査へのアクセスがまだまだ限られている日本では需要があるのも事実です 2)。当院では本検査を提供しておりますので、ご希望の方はお気軽にお声かけください。

1) ラブコープ・ジャパン ウェブサイト:https://www.labcorp.co.jp/medical/quattro01.html
2) NHS. Quadruple screening test: https://www.genomicseducation.hee.nhs.uk/genotes/knowledge-hub/quadruple-screening-test/