コンドームの性病予防効果

こんにちは、副院長の石田です。

コンドームというと、一般的には避妊具としての認識が強いかと思います。しかしコンドーム自体の避妊効果は数ある避妊法の中でも実はそれほど高くありません。むしろ医学的にはコンドームは性病予防としての役割が大きいと考えられており、避妊はピルや子宮内避妊具などで行うのことを推奨されています。しかし、コンドームが性病予防に有用であるということはご存知の方が多いとは思いますが、実際にどのくらい性病を防いでくれるかは具体的にイメージのない人も多いと思います。そこで本日はコンドームにどのくらいの感染症予防効果があるかをお話ししたいと思います。

コンドームが性病予防に有効である理由

HIVやクラミジア、淋病、梅毒など性病には様々ありますが、その多くが接触により感染します。具体的には皮膚や粘膜に触れたり、精液や膣分泌、血液といった体液に暴露が感染の原因となりますが、コンドームは特にリスクとなる腟内や直腸内への陰茎挿入による直接接触を妨げることができるため感染予防効果があると考えられています。

どのくらい感染予防効果が期待できるのか

では、コンドームを使用することで実際にどのくらい感染リスクを低下させることができるのでしょうか?まず、性病の中でも最も恐れられているHIVで見てみると、性接触の形式(口腔、腟、直腸など)によってリスクの度合いも変わりますが、概ね80〜90%のリスク低減効果があるとされています 1)2)。また、2003年に出された南米の女性セックスワーカーを対象にした研究によると、コンドームを毎回着用していた場合は淋病に関しては62%、クラミジアに関しては26%の感染防御効果が見られたということでした 3)。コンドームはその他にも梅毒、ヘルペス、腟トリコモナスなど多くの性感染症に対して予防効果があるというデータがたくさん出ているため、いずれにしても性交渉を行う場合はほかの避妊法を使用しているかどうかに関わらず使っていただいた方が良いことが分かります 4)5)6)。

まとめ

というわけで本日はみんなコンドームを使ってねというお話でした。上で何%予防効果がありますよとお伝えしたものの、実はこの数字には報告によってだいぶブレがあります。というのも、データ収集にあたり本当にコンドームを使用していたか、正しい使用方法を用いていたか、性行動がハイリスクかローリスクかなど数字に影響する不確実な変数が多く介在するので正確な評価がとても難しいからなんですね。ただ、このブログを読んでいただいた皆さんにおかれましては、「コンドームには小さくない性感染症の予防効果があるんだ」ということが伝われば幸いです。性感染症は時として不妊の原因になったり命に関わる合併症を引き起こしたりと人生設計を大きく変えてしまうインパクトのある病気です。特に性行動のリスクが高く、パートナーが不特定多数になりがちな若い人たちは自分を守るためにもコンドームを使うようにしましょう。

1) Weller S, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2002;(1): CD003255.
2) Davis KR, et al. Fam Plann Perspect. 1999;31(6):272
3) Jorge Sanchez, et al. Sex Transm Dis. 2003 Apr;30(4):273-9
4) King K. Holmes, et al. Bull World Health Organ. 2004 Jun;82(6):454-61
5) Richard A Crosby, et al. Sex Transm Infect. 2012 Nov;88(7):484-9
6) CDC. MMWR Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021 Jul;70(4)