ピルの服用についてよく聞かれる質問

こんにちは、副院長の石田です。

私が医者になりたての頃と比べて今は非常に多くの女性がピルに関心を持っているように感じます。実際、ひと昔前と比べてピルを服用するということに対する社会の偏見もだいぶ無くなってきています。避妊だけでなく生理症状の緩和や生理時期の調整、ニキビの治療に至るまで幅広い機能を持つ便利なピルですが、「私も使おうかなー」と悩まれている患者さんたちからよく聞かれる2つの質問について、本日は整理していきたいと思います。

ピルを服用すると太りますか?

ピルの服用について最も多くの方が心配されるのが体重変化です。ピルを始めたら太ったという友人知人の証言が少なくないため「生理が楽になるのはいいけど太るのはなー…」と悩む方も多いです。ですが、結論を申し上げますとピルの使用により体重が変化する(増加も減少も)という副作用は無いことが分かっています 1)。そのため「ピルのせいで太った」という方に関しては、ピルとは関係なくたまたまその時期に体重が増えたか、あるいはピルを使用した結果元気になり食欲も増えてしまったかだと思われます。

ピルを服用すると将来妊娠しづらくなりませんか?

ピルを服用しても将来妊娠しづらくなることは無いと言われています。確かにピル服用終了後は排卵周期が戻るまで少し時間がかかる可能性が言われていますが、198人を対象とした臨床研究によると98.9%の女性が3ヶ月以内に生理周期が回復、もしくは妊娠に至ったそうです。生理周期が回復するまでの日数は中央値で32日間であり、多くの女性が内服終了後それほど時間をおかずに自前の生理周期が始まっていることが分かります 2)。また、ヨーロッパの7カ国共同で行われた臨床研究によると、妊活のためにピルを止めた2064人の女性において79.4%が1年以内に妊娠成立しており、これはピルの服用歴が無い女性とほぼ同等であったということが示されています 3)。以上のことからピルの服用による将来の妊娠に対する悪影響は心配しなくてよさそうです。

まとめ

本日はピルを使うか悩んでいる人の多くが心配している質問について解説しました。10代の女性とかですと、飲む本人はそれほど心配していなくてもお母さんが副作用を気にしているなんて状況もよく見られますが、この記事で少しでも安心してもらえれば幸いです。院長と私もよく外来で患者さんに説明していますが、ピルは女性が人生をより能動的にコントロールする道具として世界中で使用されています。もしピルの使用を検討されている方でその他にも気になることがあれば、気軽に最寄りの産婦人科へ相談してみましょう。

参考文献
1) Gallo MF, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Jan 29;2014(1):CD003987.
2) Anne R Davis, et al. Fertil Steril. 2008 May;89(5):1059-1063.
3) Maureen Cronin, et al. Obstet Gynecologist. 2009 Sep;114(3):616-622.

りんご病の妊婦の管理

りんご病(伝染性紅斑)は、飛沫感染か汚染した手の接触感染で伝播します。

成人に感染した場合、約25%は無症状(不顕性感染)であり、また症状があっても感冒様症状とその後の関節痛のみで特徴的症状が見られない場合があります。

お子さんがりんご病と診断された時、妊婦さんの管理

①B19IgG抗体を測定する

伝染性紅斑は一度かかった後は終生免疫を獲得するとされており、

まずはIgG抗体の有無を採血で確認します。IgG陽性であれば過去に感染しており、胎児に影響はないと考えてよいでしょう。

②B19IgM抗体は感染後10日以降から上昇する

りんご病のお子さんから感染した場合、感染後10日頃よりIgM抗体が上昇します。したがってIgM抗体が陽性であった場合、「伝染性紅斑に感染した」と判断します。

③不顕性感染でも胎児感染を生じる可能性がある

不顕性感染とは、感染が成立していながら症状を示さない感染様式のことを言います。B19IgM抗体が陽性となった時、特に症状がなくても超音波検査で胎児の状態を妊婦健診以外でもチェックする必要があります。チェック項目としては胎児水腫の出現や胎児貧血の判断です。胎児貧血を確認するには胎児中大脳動脈の収縮期血流速度(MCA-PSV)を測定します。値のおおよその目安として、妊娠週数×2以上の値となる場合は、中等度以上の胎児貧血が疑われます。

執筆 院長