ダウン症候群の方の福祉支援

ダウン症候群をお持ちの方の生活については石田副院長から以前のブログ記事で紹介がありました。

今回は福祉分野における金額面やサービスの提供・補助についてもう少し説明いたします。

療育手帳:ダウン症候群に限らず、知的障害がある方に交付される手帳

税金の減免、医療費の免除、交通機関・公共料金・レジャーの割引を受ける際、証明書として使用します。

また障害者雇用として就職を希望する場合にも用いられます。

厚生労働省HP

療育手帳は年齢や障害の変化に応じて更新判定があります。また療育手帳は都道府県・政令指定都市の定めによるものなので、転居した場合は転居先で療育手帳を取得する必要があります。

特別児童扶養手当:主に障害のある児童を育てる両親に支給される手当

埼玉県HP

支給基準は自治体により異なります。支給額は

1級(重度障害児) 55,350円

2級(中度障害児) 36,860円

となります(障害児父母の所得制限あり)。

障害基礎年金:障害年金は精神障害のほか、年金加入中の病気や怪我により生活や仕事が制限されるようになった場合に請求が可能な年金の枠組み

日本年金機構HP

障害を認定されていれば、20歳に達した日の翌月から、年金を受給できます。

その他、慢性特定疾病に対する医療費の助成や、地域単位での親の会など、福祉面だけでも様々なサポートがあります。

執筆 院長

うちの赤ちゃん、男の子なのにおっぱいがある?って思った時の話

こんにちは、副院長の石田です。

年に何回か、産後健診でご両親から「うちの子、男の子なのにおっぱいがあるんですけど…。」とご相談をいただくことがあります。触ってみると少しコリコリしてて、ひょっとして何かの病気じゃないかとご心配になる方も少なくないでしょう。そこで本日はこの件について解説したいと思います。

女性化乳房とは

皆さんは女性化乳房という言葉をご存知でしょうか?乳汁を分泌するための乳腺組織は女性ほどではないにしても、実は男性の胸にも存在しています。この男性の乳腺組織が乳首を中心に増殖し、ゴムのような硬い塊として触れるようになるのが女性化乳房です。新生児から高齢者まであらゆる男性に発症するとされていますが、新生児に関して言うと統計的には65〜90%に女性化乳房が見られるとも言われており、比較的よくあることのようです 1)。

新生児の女性化乳房

新生児が女性化乳房になる理由は、主に子宮内環境が原因と言われています。ちょっと難しい話をすると、胎児の副腎から分泌されたデハイドロエピアンドロステロンという物質が胎盤を経由してエストロゲンという女性ホルモンに変換されて大量に生成されます。このエストロゲンが胎児に影響を及ぼすため、男の子であっても女性のようにおっぱいが大きくなってしまうんですね。しかも、5%くらいの子では実際に乳汁が出ることもあるようです 2)。ただ、新生児の女性化乳房は通常、生後数週間〜1年程度で退縮すると言われており、ずっと戻らなかったり、後遺症が残ったりということはほとんど無いと言われています。

まとめ

本日は男の子のおっぱいについてお話ししました。そんなわけで赤ちゃんのおっぱいが腫れていてもあまり気にする必要はありませんが、それでも心配になってしまう場合にはかかりつけの産婦人科や小児科に気軽にご相談ください。

参考文献
1) GA Kanakis, et al. Andrology. 2019Nov;7(6):778-793.
2) Madlon-Kay DJ. Am J Dis Child. 1986;140(3):252.

47本の異数染色体はダウン症候群だけではない

染色体数が47本なのはダウン症[候群 47,XX(またはXY),+21]や18トリソミー、13トリソミーだけではありません。

以下症例を挙げます。

47,XXY クラインフェルター症候群

・頻度:およそ500〜1000出生男児に1人(推定)

高年妊娠にて羊水検査を行った時に見つかることが多く, 21トリソミー, 18トリソミーに次いで多い染色体異常

・主な臨床症状:比較的高身長、女性化乳房、不妊

・寿命:一般と変わりない

47,XX(またはXY),+mar 過剰マーカー染色体

・頻度:新生児2500人に一人

マーカー染色体とは20番染色体よりも小さい由来不明の染色体です。

(染色体は小さい順から21番<22番<Y染色体<20番<)

由来を同定するには通常の羊水検査の解像度では困難な(過剰マーカー染色体]があるとしかわからない)ため、児の表現型(個体に見られる特徴)に異常があるかどうかは、FISH法やさらに高解像度の検査(マイクロアレイ法)を必要とします。

過剰マーカー染色体は40%が両親由来、60%は新生(de novo)といわれています。

親が均衡型相互転座を持っていれば、児に過剰マーカー染色体が派生する可能性があります。

・主な臨床症状;

(1)過剰マーカー染色体が両親由来:表現型異常(疾患など)は原則ない

(2)de novoの過剰マーカー染色体:30%の確率で表現型異常を伴う

(3)親が均衡型相互転座を持ち過剰マーカーが派生:表現型異常を伴うことを想定する。特に22番染色体由来の過剰マーカー染色体が配偶子として受精すると以下の「エマヌエル症候群」といわれます。

47,XX(またはXY), +der(22)t(11;22) エマヌエル症候群

[tはtranslocation 転座、derはderivative 派生]

上記(3)のように、片親が11番染色体と22番染色体の転座・派生染色体を持つ均衡型保因者であり、

子はそれを受け継ぎ同様の保因者となるか(以下図B)、過剰に派生した22番染色体を持つエマヌエル症候群となります(以下図A)。

出典 http://grj.umin.jp/grj/emanuel.htm

・エマヌエル症候群の主な臨床症状:小頭症や口蓋裂、精神運動発達遅滞、腎奇形、鎖肛など

執筆 院長

出産時に立ち会うお父さんたちに写真撮影のアドバイス

こんにちは、副院長の石田です。

出産の立会いに臨まれるお父さんたちの最も重要な役割の一つに写真撮影があります。その日、その時間にしかない最高の瞬間を切り取って思い出として残しておくことはお産の痛みを代わることができない我々男性にとって、妻と子供のためにできる数少ない大切な仕事の一つですよね。しかしその一方で、(自戒の意味でも)これほど男性がしくじることが多い場面もありません。そこで今回は何一つ客観的な根拠はありませんが、私の個人的な思いのみで皆さんにアドバイスを送りたいと思います。

撮影量が少ない

まず99%くらいの男性に言えるのですが、撮影量が圧倒的に少ないです。自分では結構撮ったつもりでも、後で見返してみるとよく撮れている写真は思った以上に少ないんですね。でも後悔してもあの瞬間は撮り直すことができません。だから皆さんには是非自分で思っているのの10倍くらいは撮影して欲しいです。
とは言え自分も男性ですし、正直皆さんの気持ちも分かる気はするんですよ。一部の医者を除けば自分以外は全て女性なうえに、分娩中の奥さんは一人称の当事者で、それを囲む医療者は全て出産の専門家です。一通りの両親学級は受けたし本も何冊か読んだけど、それでも圧倒的なアウェー感を感じながらどう振る舞ったら良いか分からない男性がほとんどだと思います。ましてや写真と動画を撮りまくって妻や赤ちゃんの処置の妨げになったらどうしよう?写真や動画を夢中で撮りすぎた結果、後で医者や助産師から笑われてたらどうしよう?などご不安は尽きないかもしれません。でも大丈夫、写真も動画もいっぱい撮ってあげてください。もし撮影に適さないような、医学的に危険だったり緊迫した状況になる時はちゃんとお伝えするのでご安心ください。もちろんご自身の肉眼で赤ちゃんを見てあげることも大事ですが、家で固唾を飲んで待っているご家族や友人のためにもその瞬間をできるだけ記録して持って帰ってあげましょう。

奥様の撮影

出産直後の奥様の姿を撮影する方も非常に多いです。こんなに可愛い赤ちゃんを産んでくれた最愛の女性の勇姿を残したいと考えるのは当然ですよね。でもちょっと待っていただきたい。我々男性にとって命を賭けて出産をやり遂げた妻の姿は、美と戦の女神であるアフロディーテを凌駕するほど美しいと感じるでしょうが、一方で女性側からすると滝汗+髪ボサ+ノーメイクという極めて無防備な状態です。人によっては最も撮影されたくない瞬間かもしれません。そのためかお産でぐったりしている奥様を無断撮影して強めの怒られが発生していることが少なくないです。男性の皆様におかれましては臨月に入ったら奥様に分娩直後の撮影許可を得ておくか、あるいは最低限その場で「写真、撮っていい?」と聞くようにしましょう。くれぐれもいきなりレンズを向けることのないようにしていただくのが無難です。

まとめ

本日は分娩立会い時の男性へのアドバイスを書かせていただきました。色々と書きましたが、分娩室の父親は身の置きどころの無い中でそれでも必死に妻と子の無事を祈り続けていますし、にしじまクリニックはそんなお父さんたちが少しでもお産の輪に入りやすいようにマッサージなどのお手伝いをお願いしたり、写真撮影のタイミングで積極的にお声掛けしたりしています。当院で立会されるお父さんにおかれましては、分娩室での過ごし方について分からないことや不安なことがあればいつでもスタッフにお声掛けください。

18トリソミーと13トリソミー

ヒトの染色体は通常46あり、そこから1〜2本の増減を伴うのは異数体(heteroploid)と呼ばれる数的異常です。

羊水検査の迅速検査”Rapid FISH”は染色体が1本多いトリソミー、その中で21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーを対象としています。

出生前遺伝学的検査において、なぜ3つのトリソミーが迅速診断の一つとなっているのか

出生児の4%(出生時に確認できるものが2〜3%。生後に診断・確認されるもの全てを含めると3〜5%)は先天性疾患をもち、先天性疾患の中で染色体疾患は25%を占めています。

染色体疾患をもつ出生児の

53%は21トリソミー、

13%は18トリソミー、

5%は13トリソミーであり、

染色体疾患全体でおよそ70%を占めているのです。

21, 18, 13番染色体は保有する遺伝子数の少ない常染色体であり、そのため流産の経過を辿るほか、出生児でもみられます。

今回は18トリソミーと13トリソミーの臨床症状について列記します。

18トリソミー症候群(エドワーズ症候群)

・頻度:1/3500〜1/8500出生

・男女比:1:3

・主な合併症:先天性心疾患、肺高血圧、小顎、食道閉鎖、腎尿路異常

・転機:1年生存率は(医療介入を行なって)25%、18トリソミー児の多くが心疾患を合併しているため、心臓の手術にて生命予後は上昇(2年生存率50%)

13トリソミー症候群(パトー症候群)

・頻度:1/5000〜1/12000出生

・男女比:若干女児が多い

・主な合併症:中枢神経系異常(全前脳胞症)、頭皮欠損、小眼球、口唇口蓋裂、先天性心疾患、停留精巣(男児)

・転機:1年生存率は10%、経過や治療に応じて20〜50%

妊娠中の検査に関する情報サイトでは、トリソミー児の多様な成長と暮らしの事例紹介が公開されています。よろしければご覧になってみてください。

執筆 院長