家族歴はどこまで把握しておくべきか

今後お産まれるお子さんが病気や疾患を持っていないか心配、親となるカップルにとっては当然の思いです。

ではご家族の背景はどこまで知っておくとよいのか。

3度近親者までの家族歴を知っておくとよい

第1度近親者:両親、きょうだい、子ども

第2度近親者:祖父母、おじ、おば、甥、姪

第3度近親者:いとこ

出生前検査における遺伝カウンセリングでは、可能であれば上記血縁関係者の病歴等を把握しておくとよいでしょう。

家族歴を聴取することで遺伝形式の検討が可能となる

特にメンデルの法則に基づいた家系が関わる単一遺伝子病は、家族歴を把握することで遺伝形式の検討が可能となります。

  1. 常染色体優性遺伝:50%の可能性で次の世代で伝達する。よって患者の飛び越し現象はない。
  2. 常染色体劣性遺伝:親が保因者同士の子孫が罹患する。よって兄弟姉妹の中に複数の患者が存在する。
  3. X連鎖性性遺伝:男性が罹患する。罹患男性の娘はすべて保因者となる。保因者女性が母親になった時、その男児の半分が罹患し、半分の女児が保因者となる

出生児のうち4%に先天性疾患をもち、先天性疾患の中の20%は単一遺伝子病とされています。

執筆 院長

新生児の問題ない皮疹

あけましておめでとうございます、副院長の石田です。

お産が終わった後も1ヶ月健診までは産婦人科に通うのが一般的ですが、産後健診で永遠に聞かれる質問シリーズの一つが赤ちゃんの皮疹です。以前もこのブログの何かの記事で言及しましたが、私は「永遠に聞かれ続ける質問には永遠に答え続ける」と決めているので毎度外来でもお話しさせていただいています。しかし外来の限られた時間では言葉が足りないこともあるかと思うので、本日は新生児に見られるあっても問題ない皮疹についていくつかご紹介したいと思います。

新生児中毒疹

もう言葉が怖いですよね、中毒疹。英語でもerythema ”toxicum” neonatorumという「中毒」的な名前がついているのでこれを日本語訳してそう呼ばれているってことなんだろうか。
周りに赤くて丸い班を伴うニキビのような盛り上がりのある皮疹で、生後72時間以内に20%~70%程度の赤ちゃんにできると言われています 1)2)。出生体重が大きかったり出生時の妊娠週数が進んでいるほどよく見られるとされている一方、低出生体重児や早産児では少ないことが分かっています 2)3)。原因は不明ですが、一説によると無垢な皮膚に常在細菌叢を形成し始める時の免疫反応とも言われており、通常は2週間以内に勝手に消失します 4)。

脂腺増殖症

産まれたばかりの赤ちゃんの鼻の頭をよく見ると1mm程度の白い平坦なポツポツが無数に見られることがあります。これは脂腺増殖症と言って、中高年にも見られる皮膚変化ですが、一方で新生児の半数程度にも出現することが知られています 5)。こちらも多くの場合で生後数週間で消失することが知られており、治療は不要です。

稗粒腫(ひりゅうしゅ / はいりゅうしゅ)

小さなニキビの白いとこみたいなやつが主にほっぺや鼻にできることがよくあります。これは稗粒腫といって、雑に説明すると毛穴にケラチンとか皮脂が詰まるのが原因です。こちらは生後数ヶ月程度で勝手に消えるので心配要りません。

まとめ

本日は赤ちゃんのによく見られる心配ない皮疹について解説しました。本当は写真とか載せられれば良かったんですが、著作権とか大丈夫そうなのが見つからなかったので、それっぽい皮疹を我が子に見つけたらかかりつけの施設で「これ何?」って聞いてみてください。

参考文献
1) Roques E, et al. Treasure Island (FL):StatPearls Publishing;2024 Jan-.
2) Reginatto FP, et al. Pediatr Dermatol. 2017;34(4):422. Epub 2017 May 25.
3) Harshita B Reddy, et al. Curr Pediatr Rev. 2017;13(2):136-143.
4) Marchini G, et al. Pediatr Res. 2005;58(3):613.
5) Fabiola Farci, et al. Treasure Island (FL):Stat Pearls Publishing;2024 Jan 2023 Sep 4.