産後新型コロナウイルスに感染した場合の授乳

今回は「産後、褥婦さんが新型コロナウイルス感染が判明した」時、授乳(と児の対応)はどうするかをお話します。

原則、児にも抗原検査・PCRを行います1)。結果陰性であっても濃厚接触者として対応します。

授乳に関しては以下3つが考えられます。

直接授乳:褥婦さん本人がマスクを着用と手指消毒、乳輪回りを清潔にしたうえでの直接授乳は可能と考えます2)。可能であれば、褥婦さんの着衣に触れさせないように直接授乳ができればより良いです。褥婦さんが隔離期間中は、児のお世話をしない時はある程度距離(約2m)をおくとよいでしょう。

搾乳した母乳を別介護者が授乳:母乳栄養は通常どおり行うことを推奨している施設が多いです3)。搾乳した母乳を褥婦さんではなく別介護者が哺乳瓶で飲ませる手段もあります。母乳を冷凍保管する場合は詳しくは看護師および助産師にお尋ねください。

別介護者が人工栄養(ミルク)で授乳:上記どおり母乳栄養を行うことは海外においても問題ないと現時点でいわれています4)が、ご家族にとっては濃厚接触者となる児を今後隔離期間中はできるだけ感染リスクを減らしたいお気持ちもある場合もあります。その場合は濃厚接触者に該当しない方がミルクの授乳をするということになります。ただし、隔離明けに母乳育児を速やかに開始するために搾乳を続けて母乳分泌を維持しておくことは必要です。

濃厚接触者の待機期間については、未就学児は現時点で無症状であっても期間短縮の対象とはならず5日間です。

参考文献

1) 産科診療における感染防御ガイド〜2022年版. 日本産婦人科医会

2) 新型コロナウイルス感染症と母乳育児について. 国立成育医療研究センターHP

3) 新型コロナウイルス感染症と赤ちゃん(濃厚接触者扱い)の対応について. 亀田総合病院・亀田クリニックHP

4) COVID-19: Intrapartum and postpartum issues. UpToDate

文責 院長

5〜11歳の新型コロナワクチン接種

本日から長女のクラスが学級閉鎖になるようです。最近は新型コロナウイルスの家族内感染も問題となるなか、もしお子さんに感染したら、病状の悪化をできるだけ抑えたいと思うのは、どのご両親も思われることだと思います。

先週から日本でも5〜11歳のお子さんに新型コロナワクチン接種が可能となりました。以下ポイントをまとめておきます。

・経緯:2021年10月、アメリカのFDAはファイザー製の5〜11歳用の新型コロナワクチンを認可しました。これは2000人以上のランダマイズドトライアルのデータにおいて、91%以上が新型コロナウイルスに対して有効で、かつ成人データの結果と同様との判断とされました。よってCDCはこのワクチン接種を『推奨(recommendation)』となり、日本も続いてこの小児用ワクチン接種が可能となりました(COVID-19 vaccination in children 5 years and older, UpToDate, November 2021)。

・製剤は小児(5〜11歳)専用:コミナティ筋注5〜11歳用:キャップがオレンジのものです。-60度以下なら9ヶ月間保存可能です。

・接種量は12歳以上で接種する量の1/3:希釈し1回接種量が0.2mL(10μg)で

接種間隔は12歳以上と同様で3週間あけ、計2回接種します。

・結論;

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/child/

ニューイングランドジャーナルの文献では、このワクチンは5〜11歳に安全かつ有効に新型コロナワクチンに対しての免疫応答、いわば抗体が得られると結論づけています。

以下厚生労働省と埼玉県のサイトも是非ご覧になってください。(院長執筆)

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/child/

https://www.pref.saitama.lg.jp/a0710/covid-19/parent.html

新型コロナワクチン非接種妊婦の予後

現在、オミクロン株による新型コロナウイルスが猛威を奮っている状況で、にしじまクリニックにおかかりの妊婦さんやそのご家族も例外ではありません。当院も埼玉県産婦人科医会のリエゾンシステムに基づき、感染者や濃厚接触者に毎日健康状態を確認させてもらっています。

以前から基礎疾患もつ方や妊娠中の方は、新型コロナウイルスに感染すると予後不良とされていましたが、とりわけワクチン非接種だとより危険であることがスコットランドのおよそ8万8000人妊婦の追跡調査で示されました。

https://www.science.org/content/article/covid-19-starkly-increases-pregnancy-complications-including-stillbirths-among?utm_campaign=Gadi&utm_source=AAAS&utm_medium=Facebook

ワクチン接種が始まった2020年12月以降にスコットランドで妊娠した8万7694人が対象(2021年10月までの追跡調査)です。

新型コロナウイルスに感染し、1ヶ月以内に出産した620件のうち、14件が子宮内胎児死亡もしくは新生児死亡が起こったと報告しています。その14件全てがワクチン非接種妊婦であったとのことです。

この(周産期)死亡率は1000件出産のうち22.5という比率になり、スコットランドの本来の1000件出産のうち5.6の比率を大きく上回ります。

また新型コロナウイルスに感染した妊婦は、早産率が2%ポイント上昇したとも報告しています。

新型コロナウイルスに感染し集中治療が必要になった妊婦の98%がワクチン非接種とのことでした。

(院長執筆)

新型コロナウイルスにかかったら

私達はもうしばらく、新型コロナウイルス感染症とそれに関わる生活に付き合っていかなければなりません。

誰もが感染する可能性はまだあるのです。

今回は、にしじまクリニックで健診を受けている妊婦さんがもし今後新型コロナウイルス感染症にかかったら、また濃厚接触者になったら、のお話をさせてもらいます。

①【重要】新型コロナウイルス感染症と診断されたら、当院へ電話にてご連絡ください。

また濃厚接触者と判断された方も同様、必ず当院へご連絡ください

*新型コロナウイルス感染症だけでなく、37.5度以上の発熱や感冒症状がある場合、来院を希望する方は事前に当院へご連絡ください。診察予定時間等の調整を致します。

②管轄保健所へ届出が済んでいるかの確認など、当院でも各機関へ連絡調整をさせてもらいます。

③自宅療養の場合、1日2回、体調の状況を伺うため電話またはオンライン診療にて当院からの連絡があります。

④入院療養が必要だと思われる場合を以下に載せておきます。

□息苦しさが1時間に2回以上

□トイレに行く時に息苦しい

□心拍数が1分間に110回以上

□呼吸数が1分間に20回以上

□安静でも酸素飽和度が94%以下で回復しない

⑤出血、破水感、頻回の子宮収縮、胎動が少ない時はすぐに当院へご連絡ください。診察予定時間等の調整を行った後、まずは当院で診察を行います。

上記④以外に、切迫早産などのため入院が必要と判断した場合は保健所と県調整本部へ当院から連絡を行い、入院の調整を行ってもらいます。

埼玉県産婦人科医会では安心して妊娠・分娩に対応できるよう『COVID-19対応産科リエゾンシステム』が9月から稼働しています。入院が必要な場合はが連絡調整がスムーズにいくよう、産科的相談役として担当医療機関(主に周産期センター)が毎日割り振られています。

(院長執筆)

コロナワクチン接種が不安な妊婦さんへ(6月21日時点)

・妊婦は新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)のワクチンを接種しても大丈夫なのか

海外からの経験と情報から、現在日本でおかれた状況を鑑みると、ワクチンを接種することのメリットはデメリットを上回ると考えられています。一般の方と比較しても副反応に差はなく、流産や早産などの危険性は自然発生率と差がないという報告もあります。

日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会は、「感染の多い地域や感染のリスクが高い職場、糖尿病・高血圧・気管支喘息などの基礎疾患を合併している方はぜひ接種をご検討ください」と声明を発表しています。

また妊娠中や授乳中の方々のみならず、妊娠を計画中の方々の接種も「問題ない」と見解が上記学会らからの声明が6月17日にありました。今後、妊娠の確認の初診時に「もう既にワクチン1回目接種したのですが」という質問を多くいただくことが予想されますが、その際は予定どおり2回目を接種して構いません。

しかしながら妊娠週数や社会的背景などからワクチンに対する考え方は人それぞれです。にしじまクリニックではそのようなご心配な方に対し個別で外来またはオンライン診療でご相談をさせていただいております。

・コロナワクチン接種前に確認すべきこと

健診・外来の時に、ワクチン接種前に医師へ確認しましょう。

接種の予診票には「現在妊娠している可能性はありますか、または授乳中ですか」という質問項目がありますので、「はい」をチェックし、接種会場の医師にも伝えてください。

・副反応について

一般の方と妊婦さんとの差はありません。

接種後発熱や頭痛があった場合はアセトアミノフェンの内服をお考えください。

・里帰り先など住民票と異なる居住地で接種を受ける場合

住所地外接種届の提出は不要です。

・その他のワクチン接種との間隔

まず、現時点では他ワクチン(産婦人科領域では風疹ワクチンやHPVワクチン、インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチン、日本脳炎ワクチンなど)と同時接種はできません。新型コロナウイルスワクチンを接種した2週間後は他のワクチン接種の投与が可能となります。

(院長執筆)