妊娠中の運動

こんにちは、副院長の石田です。

妊娠中の運動をどうしようかなと悩んでいる妊婦さんは多いです。以前他院で働いていた時はボディビルダーの妊婦さんを担当したことがありましたが、「何kgまでなら上げてもいいですか?」と聞かれて困ったことがありました。実際何kgまでなんだろう…?さて、ウォーキングやゴルフ、マタニティスイミングなど日常から外来では様々な運動について聞かれることが多いですが、そもそも妊娠中の運動ってどうなんでしょうか。ということを本日は書いていこうと思います。

妊娠中は運動した方がよいのか

運動は原則的に妊娠中でもした方がよいです。妊娠中の運動は母児の健康に対してほとんどリスクが無いだけでなく、肥満を予防し、心肺機能を強化することで妊娠高血圧症、妊娠糖尿病、肺塞栓症など様々なリスクを回避できると言われています 1)2)3)。その他帝王切開率や産後うつの発症率なんかも下げるらしく、むしろ妊娠中に運動しない理由がありません。実際多くの国のガイドラインで産前に運動習慣があった人は引き続き運動するように、これまで運動してこなかった人にはこれを機会に運動するよう助言しましょうということになっています。

どんな運動をした方がよいのか

ウォーキングや水泳、ゆったりとしたエアロビクスやピラティスなどはすべての妊婦さんにお勧めされます。また、ランニングやジョギング、ラケットスポーツなどは経験者に関しては安全性が高いと言われています。ヨガなんかもよく聞かれますが、静脈還流を減らしてしまうようなポーズさえ避けていただければ基本的に安全です。逆に避けた方がよいとされているのはサッカーやバスケ、格闘技などのコンタクトスポーツ、転倒・転落の恐れがあるスキー、サーフィン、乗馬など、その他スキューバやスカイダイビングなんかも避けた方がよいとされています。また、ヨガやピラティスはいいんですけどホットヨガやホットピラティスは避けましょう。これは妊婦さん(特に妊娠初期)が熱ストレスへの耐性が落ちていると考えられているからです 4)。

運動しない方がよい人

色々とメリットの大きい妊娠中の運動ですが、もちろん医学的な理由により運動してはいけない人たちもいます。まず絶対に運動してはいけないのが心肺機能に問題があるような病気を持っている方、切迫早産の方や頸管縫縮術を行なった方、性器出血が見られる場合、妊娠26週以降の前置胎盤の患者さんなどです。また、貧血がある、太り過ぎ、あるいはやせ過ぎ、赤ちゃんの成長がイマイチの時、ヘビースモーカーなどの方々は絶対ダメじゃないけどお勧めはしませんというカテゴリーになっています 1)。

運動する時の注意点

とにかく脱水には気をつけましょう。また、フィットネスウェアは締め付け過ぎないものを選ぶこともとても大切です。めまい、嘔気、しびれ、性器出血、子宮の張り、胎動減少などは妊娠に悪影響が出ている信号かもしれません。すぐに運動を中止してかかりつけの産婦人科に相談するようにしてください。

まとめ

妊娠中に限らずですが、運動は体だけでなく精神面にも素晴らしい効果がたくさんあります。無理をしないように妊娠前より運動強度を落としたりして調整しながら健康的なマタニティライフをお過ごしください。また、妊娠中は必ず体重が増えるものですので妊娠前の意識で無理な食事制限などはしないようにしてくださいね。

1) ACOG Committee opinion. Number 650, Dec 2015

2) Mottola MF, et al. J Obstet Gynecol Can. 2018 Nov; 40(11): 1528-1537

3) Davenport MH, et al. Br J Sports Med. 2018 Nov; 52(21): 1367-1375

4) Wing, et al. ACSM’s Health & Fitness Journal: Mar/Apr 2016; 20(2): 4-6