流産の頻度は加齢により増加
流産の頻度は臨床的全妊娠の約15%であり1)、その多くは妊娠12週以前の早期流産です。
流産する確率は母体の加齢とともに増加します。加齢により染色体異常が増加するのです。例えばダウン症の確率を思い出していただければ納得がいくと思います。
ダウン症は常染色体異常のトリソミーに分類されます。これは卵子の老化によりものです。卵母細胞の減数分裂時の染色体不分離(受精前)が原因となります。
実のところ、染色体異常のある初期胚の多くは妊娠判明前に生理や化学流産等で生理様の出血として流産しています。
早期流産と後期流産
早期流産は染色体異常などによるものなので、胎児側の原因で起こるので治療を行うことはできません。
後期流産・切迫流産は母体側因子(子宮内感染や頸管無力症など)によるものなので、治療の介入の余地があります。
流産の治療・管理
・稽留流産、不全および進行流産では原則、子宮内容除去術(MVA)を行います。流産を繰り返す場合は内容物の病理検査のほか、染色体検査を行う場合があります。
・完全流産は経過観察とします。
・胎児心拍確認以後、妊娠12週未満の切迫流産で有効な薬物療法はありません。安静とし、こまめな経過観察を行います。
・妊娠12週以降の切迫流産では使用可能な薬剤を用いることがあります。妊娠16週以降では薬剤の選択肢が増えます。
参考文献;
1)産婦人科専門医のための必修知識2020年度版
(院長執筆)