帝王切開の子宮創部縫合

帝王切開において、開腹後子宮下部を横切開し、児を娩出します。その後胎盤を娩出後、切開した子宮創部を縫合していくのですが、その方法については分娩施設によって多少異なるのが実情です。

簡単に申し上げると、子宮創部を1層縫合とするか、または2層縫合とするか、ということです。

1層縫合は2層縫合より手術時間を短くすることができますが、TOLACで子宮破裂の発症頻度が増加すると言われています[Bujold et al. 2002]。

当院としては、特に初産で骨盤位による選択帝王切開の場合、次回妊娠時のTOLACを希望される場合に備え、子宮創部は2層縫合を行います。

また縫合の方法については間隔をおいて一箇所ずつ結紮する単結紮縫合を行うか、連続縫合を行うかも分娩施設によって異なります。

当院は1層目の縫合を単結紮し、2層目の縫合は連続縫合を行います。

単結紮縫合か2層目の連続縫合かは、実のところ助手の手術介助力により決める場合もあります。2層目の連続縫合において、執刀医による縫合の際に助手が吸収糸の適切なテンションをかけれない場合、縫合創部が容易に裂けてしまうのです。私と副院長が執刀医、または助手のペアの時は問題ありませんが、

緊急帝王切開時に助手が看護師の場合(ちなみに海外では「手術看護師」という専門職があり、帝王切開時は当たり前に看護師が助手をつとめます)、私院長は吸収糸を創部にかけた直後にインターロックを行い、その後自身で再び糸を把持し適切なテンションを意識しながら連続縫合(2013年にACOGに掲載されたシステマティックレビューで推奨B)を行います。

今後の妊娠を望まなければ帝王切開の子宮創部は1層縫合で良いと考えます(前述のシステマティックレビューで推奨A)。ただし1層であれ2層であれ子宮内膜面もすくった子宮筋層の縫合を意識しなければ、子宮創部の菲薄化により産後生理が再開した後、帝王切開瘢痕症候群(月経困難症や続発性不妊症)を起こす可能性があるのです。

院長執筆