タピオカドリンクで腸閉塞

こんにちは。

本日は少し気分を変えて、とあるブームに関するトピックをお話しします。

皆さん、タピオカドリンクはお好きでしょうか。私院長は飲んだことないのですが・・・。一年半前、ベトナム在住の弟が「日本でタピオカブームは再来する!」と宣言していました。どうやら予言は的中したようです。

以下、朝日新聞デジタルのサイトからのニュースです。

https://www.asahi.com/articles/ASM8R6DPHM8RUHBI030.html

ニュースを要約すると、『ベトナムで、とある男性がタピオカの過剰摂取で腸閉塞となり、手術をしました』とのことです(うちの弟の話ではありません)。

怖い話ですね。ただし、あまり人ごとでもないかもしれません。

妊娠中、胃腸の動きは鈍くなります。1)

特に妊娠初期は、ホルモンバランスの変化から便秘傾向が顕著となりますし、消化しにくいタピオカを過剰摂取したら・・。またタピオカドリンクは、キャッサバというイモが主材料なので、イモとしての糖質だけでなく、ミルクティーとしても糖分の摂りすぎは目に見えてますよね。

なお、妊娠中の方々は『偽性腸閉塞』という病態にも注意が必要です。2)

これについてはまた後日お話できればと思います。

1)イラストで学ぶ妊娠・分娩・産褥の生理

2)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjgs/45/3/45_45.326/_pdf

避難所で生活をする赤ちゃんのためのQ&A

台風19号の影響、皆さま大丈夫だったでしょうか。個人的には3.11以来の家族に迫る危険を身にしみて感じました。備えはやはり大事ですね。

私の住まいの地域では避難勧告が発令されました。今回は家にいることを選択しましたが、今4ヶ月の乳児がおり、もし避難所等で生活することになった場合、不安やストレスはいかほどか、想像を絶するものがあります。

『備え』とは、知識を得ることも当てはまるのだと思います。日本未熟児新生児学会が作成したリーフレットを添付しましたので、皆さま是非ともチェックなさってください。

http://plaza.umin.ac.jp/~jspn/shinsai/pdf/qafamily.pdf

被災された方々の一刻も早い復興をお祈り申し上げます。

院長記載

インフルエンザ

こんにちは、副院長の石田です。

先月神奈川県の小学校がインフルエンザの流行により学級閉鎖になりました 1)。冬に流行するイメージが強いインフルエンザがこの時期に?ということで驚かれた方も少なくないと思います。ということで今日はインフルエンザウイルスに関してちょっとお話ししようと思います。

そもそもインフルエンザウイルスとは何なのか

インフルエンザは気道感染を起こすウイルスで、軽い風邪症状程度から重篤な肺炎まで様々な症状を起こします。実はA〜Dまで4種類の型があるのですが、このうち流行シーズンに人間に感染を起こすのはAとBなんですね。A型はウイルス表面に発現しているヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)というタンパク質の種類でさらに細かく分けられます。ヘマグルチニンは18種類、ノイラミニダーゼは11種類あり、その組み合わせでH1N1とかH3N2とか言われます。この組み合わせの多様性がインフルエンザウイルスが変異しやすい要因の一つなんですね。一方でインフルエンザBは系統別に分類されますが、最近の流行を形成しているのはYamagata型とVictoria型です 2)。

インフルエンザの検査と治療

診断は鼻腔粘膜のぬぐい液による迅速キットを使いますが、インフルエンザの季節では特に検査せずに診断してもよいというのが最近は一般的な考え方です。というのも日本では抗インフルエンザ薬が頻繁に処方されるものの、本来インフルエンザは大部分の人達にとってただの風邪と同じであり、症状も自然に軽快するため特別な治療を必要としないという背景があります。ただし、妊婦さんや高齢者の方、その他持病などで抵抗力が弱っている方に関してはしっかりと検査、治療が必要になります。

実は暑いところで結構流行る

インフルエンザウイルスは湿度と気温が低いとウイルス活性が高くなることが知られておりそれが冬の流行という形で出ているのですが、実は暑いところだと年間を通して患者さんが出ています。私が月1回働いているカンボジアでもインフルエンザはよく診ますが、日本国内でも沖縄は時期に関係なく感染するそうです。クーラーが普及したのが原因だとか、熱帯には途上国が多く栄養状態が悪いことが原因だとか諸説立てられては色々と研究されているようですがどの説も結局立証されていないということでした 3)。

まとめ

ということで簡単でしたが今回はインフルエンザウイルスに関するお話でした。特に妊婦さんは免疫が落ちているため重症化のハイリスクと言われており注意が必要です。予防には手洗い、うがい、マスクがとても効果的ですが、それに加えて予防接種はガイドライン上もお勧めされていますので是非受けるようにしてください。当院でも妊婦さんをメインに接種を開始しておりますので希望される方はお声掛けください。ちなみにワクチンは鶏卵を使用して製造されるため卵アレルギーだと打てないと思っている人が結構いますが、実は関係なく打てます。唯一の禁忌はワクチン自体にアレルギーが出たことがある患者さんとなっていますので、もし重篤な卵アレルギーがあったとしても問題なく接種しましょうというのが今のスタンダードですのでご安心ください 4)5)。ところで暑い場所でも患者さんが多いこと、ここ数年異常気象がどうとか言われていること、神奈川でこの時期に学級閉鎖などがあるとインフルエンザの今後の流行がひょっとしたら温暖化とかに影響されるのかな?とか考えてしまいますね。今後さらなる研究が進むことを期待したいと思います。

1) https://www.kanaloco.jp/article/entry-194678.html

2) Samei W. Bolt or, et al. In: Stat Pearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2019 Jan-

3) Cecile Viboud, et al. PLoS Med. 2006 Apr; 3(4): e89

4) CDC Flu Vaccine and People with Egg Allergies. https://www.cdc.gov/flu/prevent/egg-allergies.htm#algorithm

5) Greenhawt MJ. Pediatr Ann 2013 Jul; 42(7): 122-7

妊娠中に温泉に行っても良いのか

こんにちは、副院長の石田です。

行っても良いです。と言い切ってしまうとそれで終わりなのですが、これに関しては外来で定番のご質問です。恐らくイメージとしては温泉の成分が体に染み込むことで赤ちゃんに届いて問題を起こす的なご心配かと思います。ちなみに不安を煽りたいわけじゃないけど哺乳類の実験で母体の高体温は赤ちゃんの奇形の原因になる可能性は示唆されています 1)。まぁ、深部体温が温泉ごときで急激に上昇するわけはないので関係ありませんが。

いずれにしても「ネットでも大丈夫って書いてあったけど心配だし一応医者に聞いておこう」という人が多いのではないかと思いましたが、中々外来では時間的にも詳しくご説明できないので、ちょっとブログで書いてみることにしました。

温泉が妊娠に悪いという科学的根拠はない

これ、調べた範囲では国内外で温泉の妊娠に対する悪影響を証明した論文はありませんでした。昔は「温泉法」という法律で妊娠は温泉への入浴に対して禁忌として扱われていましたが、科学的根拠がないという理由で平成26年の改訂の際に撤廃されました。というか、色々と調べてみましたが、そもそもなんで温泉が妊娠に対して禁忌になったのか誰も知らないらしいです…。ちなみに「温泉とかサウナは赤ちゃんに影響ないから安心して」っていう論文はシドニー大学のチームから発表されてました 2)。

そうは言っても気をつけた方が良いこともある

まず、妊婦さんはお腹が大きくなるにつれて体の重心の位置が変わっています。そのため思いがけず転倒するリスクが無いわけではありません。泉質や浴場の材質によっては床が滑りやすくなっていることもありますので転んで怪我をしたりお腹を打ったりしないように気を付けましょう。また、経験的に何人かの妊婦さんが強い泉質のお湯に入って肌荒れを起こしてしまったのを診察したことがあります。事前に自分と温泉との相性を調べることは難しいですが、妊娠すると肌が荒れやすくなる人もいらっしゃいますので異常を感じたらすぐに水道のお湯で体を流し、入浴を中止するようにしてください。

温泉は直接関係ないけど…

地元の温泉に行かれる人はまだ良いのですが、ちょっと足を伸ばして温泉旅行という場合には出血や腹痛など何か良くないイベントが起きた際にかかりつけの医療機関を簡単に受診できなくなります。なので絶対ダメというわけではないけれど、旅行のリスクをよくご理解いただいたうえで、万が一の時に受診できる医療機関が近辺にあるかどうかを確認してから出かけましょう。

日本人は昔から温泉が大好きです。「温泉離れ」なんてことも言われますが、年間の延べ宿泊利用者数は最新のデータで1億3000万人以上です 3)。 温泉に行かれる方は体調管理やいざという時の備えに十分注意しながら快適な温泉ライフをお楽しみください。

1) Edwards MJ. Terato Carcinogen Mutagen 1986: 6(6): 563-82

2) Ravanelli N, et al. Br J Sports Med. 2019 Jul; 53(13): 799-805

3) https://www.onsen-r.co.jp/data/cs/

がん検診

10月に入りました。

本日はがん検診で受診される方が多かったです。子宮頸がん検診の無料クーポン券が使える方々の対象が11月までなので、秋の始まりとともに、外来でも「このような時期に入ってきたな」とも感じます(あとインフルエンザ、もそろそろでしょうか)。なかでも、がん検診としてだけでなく、当院でお産をされ、大きくなったお子様を見せに来ていただく方も多くいらっしゃり、大変嬉しいかぎりです。ある方は体調により、大きい周産期施設でお産をされたのですが、わざわざお子様を見せに来ていただきました。

私自身、前院長(顧問)の手伝いを、にしじまクリニックで始めてから約5年が経ちます。このような出来事は励みになりますし、皆さまの健康をより支えていきたい、と思いが強まります。

話は戻り、無料クーポン券をお持ちの方、11月までになりますので、お早目の受診をお勧めします。

以下、富士見市の健診(検診)サービスのサイトもご参照ください。

https://www.city.fujimi.saitama.jp/kenko_fukushi_iryo/02kenkou/kenshin/2010-0510-1902-136.html

院長記載

私はよくTOKYO FMを聞きます。TOKYO FMがキャンペーンとして行っている、子宮頸がん予防のための”Hellosmile”プロジェクトをご存知でしょうか。私はこの考えに賛同しています。

子宮頸がんワクチンがなかなか普及しない日本だからこそ、がん検診は本当に大切です。

無料クーポン券の対象でない方でも、保険診療の適応となる場合がありますので、是非ともお問い合わせ及びご来院をお待ちしております。

膀胱炎の対処、漢方編

ある患者様から、膀胱炎症状に対し、『ボーコレン』で治った、というお話がありました。

『ボーコレン』は、小林製薬が販売する「五淋散(ゴリンサン)」という漢方薬になります。

膀胱炎の治療は、通常より多い飲水を心がけていただく事が基本になります。検査によって細菌尿や、膀胱炎症状に加え尿白血球反応が強い場合は抗菌薬を追加処方します。

ただし、尿性状に異常がなくとも症状が気になる方も多くいらっしゃいます。そこで漢方薬の出番となり、五淋散のほか、清心蓮子飲(セイシンレンシイン)や猪苓湯(チョレイトウ)、猪苓湯合四物湯(チョレイトウゴウシモツトウ)などを処方する場合もあります。

私院長、もしくは石田から、症状に合わせ適宜処方をさせていただきます。

参考サイト;

ツムラ https://www.tsumura.co.jp/kampo/list/detail/056.html

妊娠中のサプリ

こんにちは、副院長の石田です。

妊娠を目指す人も既に妊娠した人も、よく外来で質問が出るのはサプリについてです。妊娠に絡めたビタミン剤は世の中に多く出ているのですが、いつから飲んだ方が良いのか、いつまで飲んだ方がよいのか、そもそも飲んだ方が良いのかなど、ビタミンに関する疑問はとても多いです。ということで、本日はこれについて少しお話しします。

そもそもサプリって意味あるのか

妊娠、出産に焦点をあてて出されるサプリは英語でprenatal vitaminと言って、世界中で星の数ほどの種類が出ていますが、メインは葉酸、鉄、カルシウム、ビタミンB群、ビタミンDなどになります。これらの栄養素は基本的には食事でしっかり摂ることが大事で、妊婦さんの食事摂取基準が1日それぞれ葉酸:480μg、鉄:8〜9g(初期) / 20〜21g(中期以降)、カルシウム:650mg、ビタミンB12:3μgという感じです 1) が、これに対して日本人の平均摂取量は、例えば葉酸だと大体220〜250μg、鉄では6〜7gなど 2) 妊娠によって増大した需要に対して食生活が大きく変化するわけでもないためどうしても不足しがちになってしまうのも現実です。なので手軽に足りない分を補えるサプリはとても便利なんですね。

葉酸がすごい

妊娠系サプリの栄養成分の中でも一際存在感があるのはやっぱり葉酸ですね。葉酸は二分脊椎という病気を予防するのに効果があります。人間の脊椎は妊娠7週頃に形成されますが、その際になんらかの理由で背骨が一部形成されずそこから脊髄という大事な神経の幹が外側に向かって飛び出してしまうのが二分脊椎です。重度になると腰に大きな塊を形成するだけでなく下肢の麻痺や排泄機能異常などを起こし日常生活にも関わる重大な障害を引き起こす大変な病気ですが、葉酸のサプリにはこれを予防する力があるんですね。具体的には妊娠前から1日0.4mg(400μg)を飲み続けることで効果が発揮されます 3) 。(逆に、妊娠早期で脊椎の形成が完成するため妊娠に気づいてから飲み始めても遅いわけです。)

鉄もすごい

次に鉄ですが、妊婦さんは元々の鉄需要が増大するだけでなく妊娠末期に向けて血液の量も増大するため材料不足と希釈効果の両面から容赦なく貧血になる傾向があります。それに加えて出産自体が出血を伴うイベントになるので貧血状態でお産を迎えてしまうともうフラフラなわけですね。なので妊娠中は産婦人科医や助産師、看護師も妊婦さんが貧血にならないようにとても気を遣っているし、一旦その傾向が見つかればすぐにお薬を使うようにしています。それでも日本は諸外国に比べて妊婦健診が多く貧血が見つかりやすいのですが、海外は健診回数が少なく日本ほど検査もしないので、初めから全ての妊婦さんにサプリを勧める地域もあります。

その他も大事

その他の栄養素もとても大事です。カルシウムは妊娠、授乳を通して強烈に赤ちゃんに持っていかれるため、この時期のお母さんの摂取量が少ないと若くして骨粗鬆症になってしまうことなんかもあります。同様にビタミンDもとても大切だし、その他多くの必要な栄養素が手軽に摂れるとあって最近は自主的に飲んでいる妊婦さんが増えたような印象があります。

まとめ

必ずしも飲まないと妊娠できないとか無事に出産を乗り越えられないというわけではありませんが、その反面で様々なメリットがあることも事実です。薬局とか通販でもたくさん種類があって選べますし、当院でもご希望の方にエレビット4) という製品をご用意しておりますので興味のあるかたはお気軽にご相談ください。ちなみにうちの院長がこれでの利益をあんまり考えていないらしく、まとめ買いじゃなければECサイトより少し安いみたいです。

1) 日本人の食事摂取基準(2015年版):厚生労働省

2) 国立健康・栄養研究所 http://www.nibiohn.go.jp/eiken/kenkounippon21/eiyouchousa/keinen_henka_eiyou.html

3) 産婦人科診療ガイドライン 産科編2017:日本産科婦人科学会

4) https://www.shop.bayer.jp/elevit/?_ga=2.172540643.1123320824.1563860664-1911164368.1563860664

Patient Safety Day

こんにちは。本日はWHOが定めるPatient Safety Day、日本語では『患者安全の日』になります。

日本では『医療安全』という言葉がよく用いられますが、世界では『患者安全』の方がしっくりくるようです。

にしじまクリニックでの『患者安全』の対策として、”チームSTEPPS”1)というプログラムを導入し始めています。

チームSTEPPSは、患者安全とチームパフォーマンスの向上をはかるため、アメリカで国と医療業界が開発したプログラムです。

医療安全・患者安全の取り組みは、なかなか把握しにくいものですが、チームSTEPPSは、エビデンスに基づいたプログラム、というのがポイントで、2011年のWHO患者安全カリキュラムガイドにも引用されています。

チーム医療の中に患者さんも含まれ、患者さんもスタッフも、心配事があれば汲み取る、メンタルモデルの共有が軸となっています。

当院ではまず、CTG(ノンストレステスト)での評価、産後出血時の対応、産後健診での記載欄で用いられています。

患者さんの安全がより高まるよう、当院ではこの取り組みを積極的に行ってまいります。

院長記載

1)チームSTEPPS 2.0

にしじまクリニックでの貧血対策

先日、石田先生が貧血についての投稿がありました。

WHO(世界保健機関)は妊娠期間中、30〜60mg/日の鉄および400μgの葉酸の摂取を推奨しています。1)

なお、私が以前活動していた国境なき医師団では、65mg含有の鉄と400μgの葉酸を含有したタブレットを貧血対策として使用していました。2)

当院の貧血対策として、まず定期採血でHb(ヘモグロビン)を確認します。

Hbが11g/dL未満の場合、(妊娠性)貧血と判断します。

次に、MCV(平均赤血球容積)という項目で、大球性貧血の鑑別を行います。

大球性貧血と判断した場合、葉酸や血清ビタミンB12の不足が考えられます。当院では『エレビット』という葉酸マルチビタミンサプリをご用意しております。

大球性貧血を否定し、さらにHb 9g/dL未満の場合、鉄剤の注射の対応としています。鉄剤注射を行う場合、やみくもに静注してしまうと、肝臓などに鉄が付いた病態のヘモクロマトーシスが問題になります。どの位鉄剤を静注してよいかの指標に、フェリチンをいう、鉄貯蔵量を反映する値を確認しています。

Hbが9以上11g/dL未満の場合は鉄剤内服を処方します。錠剤の内服が難しい場合はシロップ剤を院外処方することが可能です。なおこのシロップ剤は小児科でも処方されるものです。

少しややこしいかもしれませんが、皆さまへ適切な処方を行うために取り組んでいることをご理解いただけたら、と思います。下に当院マニュアルのフローチャートを載せておきます。3)

院長記載

1) e-Library of Evidence for Nutrition Actions

2)ESSENTIAL OBSTETRIC AND NEWBORN CARE 2015 edition

3)日本医師会雑誌2018年7月、適切な貧血診療のポイント

妊娠と貧血

こんにちは、副院長の石田です。

妊娠されたことがある人はご存知かと思いますが、妊婦健診中に結構な確率で「貧血」が言い渡されます。実際データ的にも半数以上の妊婦さんが貧血と診断されることが言われていますが 1)、これは一体どういうことなんでしょう?

というわけで本日は妊娠と貧血のお話です。

貧血とは

貧血とは「血が足りない」状態ですが、具体的には血液中の赤血球という細胞が正常よりも少ない状態を言います。検査的にはヘモグロビン(Hb)やヘマトクリット(Ht)が指標になりますが、世界保健機構(WHO)は妊娠中の場合はHb <11 g/dL、あるいはHt < 33%の場合で貧血と定義しています 2)。また、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)では妊娠中期はHb < 10.5 mg/dL、Ht < 32%としていますが、それ以外の妊娠初期と後期に関してはWHOと同じ基準になっています 3)。ちなみに当院の場合は妊娠中も産後も一貫してHb <11 mg/dLを貧血として治療しています。

なんで貧血になるのか

妊娠中は血の原料である鉄分の需要が増大します。妊娠・出産を通して全部で1000mg以上の鉄が必要になると言われていますが、内訳としては赤ちゃんと胎盤に300〜350mg、お母さんの血液量増加分に500mg、分娩中の出血による喪失量が250mgくらいと試算されています 4)。妊娠初期には単純に生理が無くなったことで一時的に鉄の需要は低下するものの、妊娠末期には7.5mg /日まで増加します。厚生労働省によると、鉄の食事摂取基準は妊娠していない生理のある女性だと大体10mg /日前後ですが 5)、実際に腸管から吸収されるのは10%程度になりますので普通の食事をしていると1mg程度しか補われないため貧血になっていくんですね。

貧血を放っておくとどうなるのか

貧血自体がふらつきや息切れなどの症状を起こしますし、本当に重度の貧血の場合は心不全になることもあります。また、出産自体が出血を伴うイベントになりますので、貧血の状態でさらに大出血になったら体へのダメージは深刻です。出産自体も大変ですがその後の育児はもっと大変なので、貧血の状態で臨むのは非常に辛いと思います。さらに言うと妊娠中の貧血は胎児の発育遅延や早産との関係も示唆されており、あらゆる観点から放っとくとロクなことが無いということになります 6)。

治療法

諸外国では日本ほど密な妊婦健診も行われず(途上国だと妊娠中全部で4回とかの国もあります)貧血が見逃されやすいこともあってか、ほとんどの女性が妊娠するとサプリメントをお勧めされているようです。妊婦さん用のサプリがたくさん販売されており、主に鉄分、ビタミンB群、葉酸など赤血球を作るのに欠かせない栄養素がたくさん入っています。ちなみに当院ではエレビット®︎という製品を取り扱っています。サプリメントを摂っていると貧血の予防効果が期待できますが、実際に貧血になってしまった場合には医薬品での治療が必要となります。具体的には鉄のお薬を処方することになりますが、中には内服で気持ち悪くなってしまう人もいるので、そのような方には注射での治療の選択肢もあります。

まとめ

というわけで意外と恐い貧血というお話でした。皆さんもご存知のように鉄分は小松菜やほうれん草などの青菜類、また豆類にも豊富に含まれています。貧血になってしまうのは妊婦さんの宿命的な部分が大きいですが、皆さんも是非普段の食生活から意識してみてはいかがでしょうか?

1) Achebe MM, et al. Blood 2017 Feb 23: 129(8): 940-949

2) World Health Organization; 2001

3) Centers for Disease Control and Prevention. MMWR Recomm Rep. 1998; 47(RR-3): 1-29

4) Bothwell TH. Am J Clin Nutr. 2000 Jul; 72(1 Suppl): 257S-264S

5) 厚生労働省 鉄の食事摂取基準: https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4aq.pdf

6) Ren A, et al. Int J Gynecol Obstet. 2007 Aug; 98(2): 124-8