にきびについて

こんにちは、副院長の石田です。

若い女性の日常のお悩みで多いものの1つににきびがあります。医学用語で「尋常性痤瘡」といい、思春期の80%以上がかかる病気なので若者のイメージがあるかと思いますが、実は20代の半分くらい、30代の4人に1人、40代でも10人に1人が患っているというデータもあり、全世代で他人事ではないことが知られています 1)。日本では「時間が経つと勝手に良くなる」みたいな風潮があって軽視されがちですが、その一方で重症のにきびは子供たちの間でいじめの原因になったり、患者さん本人の見た目へのコンプレックスが労働生産性の低下に繋がるというデータもあることから必ずしも侮れない病気です 2)。本日はそんなにきびについてです。

にきびの種類

にきびは大きく分けて3段階あります。詰まった毛穴に皮脂が溜まった面(めんぽう)、赤く炎症を起こした丘疹(きゅうしん)、さらに大きく(>5mm)水っぽく腫れた膿疱(のうほう)ですが、とくに膿疱までいくと治った後も痕が残りやすくなってしまいます。治療にあたっては早期の介入により瘢痕化が防げることが知られており、侮らずに対処することが肝要だとされています。

にきびの治療

の段階ではレチノイドというビタミンA製剤の塗り薬が使われます。日本だとアダパレンという薬が主流のようです。これはビタミンA製剤がケラチン細胞の増殖を抑えて毛穴の詰まりを改善したり、新しい面の発生を抑えてくれるためだと言われています 3)。その他抗炎症作用もあるためとても重宝されているんですね。ビタミンAは実はにきびの全ステージで使用されますが、面からさらに進行して感染を起こした状態(赤く炎症した状態)の丘疹や膿疱には、ベンゾイルという殺菌薬と、さらにはその重症度に応じて抗生剤を塗り薬→飲み薬と使用していくことになります。

避妊ピルも治療の選択肢

産婦人科的にはピルも治療薬としておススメです。特に思春期に増加する男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌が皮脂の産生を増やすことがにきびの原因の1つと言われていますが、避妊ピルはアンドロゲンを抑制するためにきびの改善効果が期待できるんですね。日本ではにきびに対する保険適応は通っていませんが、世界的には既に多くのデータがピルのにきびに対する効果を証明しており 4)、実際に海外では適応が認められている国も多くあるそうです。もちろんピルは望まれない妊娠もコンドーム以上に阻止してくれること、卵巣癌や大腸癌のリスクを抑えてくれるなど多岐にわたる効用が期待できるため、適切に使用されれば非常にメリットの大きい選択肢となることが分かっていただけると思います。

生活習慣

生活習慣を見直すことでにきびの改善が期待できることもあります。例えば洗顔ですが、1日2回、ぬるま湯を使って擦り過ぎないように洗うのが良いようです。にきび用の洗顔フォームは色々と販売されていますが中性石鹸を使うようにしましょう。スクラブがいいかどうかは結論が出ていないということですが中には無い方が良いというデータもあるみたいです。また、乾燥や日焼けは良くないみたいですので保湿剤と日焼け止めを使いましょう。水溶性の化粧品やクリームがより適しているという意見もあるようです。ちなみに、特に避けるべき食材とかは無いらしいのと、にきびを潰すと痕になりやすいっていうのは本当みたいです 5)6)。

まとめ

男性もそうですが特に女性にとってはにきびで見た目が変わってしまうのはとても辛いことです。にきびごときと高を括ったり、逆に1人で悩み続けるのではなく悪くなる前に医療機関を受診するのはとても大切なことです。まずはお近くの皮膚科に相談しましょう。でも、流石に皮膚科でピルは処方してくれないと思うからご希望の方は産婦人科まで気軽にお問い合わせください。

1) Perkins AC, et al. J Womens Health (Larchmt). 2012 Feb; 21(2): 223-30

2) Pena S, et al. J Am Acad Dermatol. 2016 Jun; 74(6): 1252-4

3) Czernielewski J, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2001: 15(Suppl 3): 5-12

4) Arowojolu A0, et al. Cochrane Database Systolic Rev. 2012; 7: CD004425

5) Goodman G. Am J Clin Dermatol. 2009: 10 Suppl 1: 1-6

6) 日本皮膚科学会ガイドライン 尋常性痤瘡治療ガイドライン 2016

疼痛管理にマルチモーダルな処方を

帝王切開において心配な事といえば、『術後の痛み』ではないでしょうか。

早速ではありますが、国境なき医師団の産科マニュアル本「Essential obstetric and newborn care」から帝王切開術後の疼痛管理を日本語にしてまとめてみましたのでご覧ください。

麻薬類似薬(非麻薬性オピオイド)、非ステロイド性鎮痛薬(NSAIDs)、アセトアミノフェンと幅広く痛み止めが用いられているのがお分かりいただけるでしょうか。これをマルチモーダル(multimodal)な、いわば様々な鎮痛薬を使ってできるだけ痛みを抑える仕方がワールドスタンダードなオーダーとなります。にしじまクリニックの帝王切開術後管理も上記の表に準じています。

様々な薬剤を用いるとお母さんにとって心配になるのが

「赤ちゃんに授乳しているけど大丈夫か」、という事です。これはまず『RID』値が参考になります。

RID(相対的乳児投与量)が10%未満であれば、児が摂取することになる薬剤の用量は少ない、と捉える事ができ、よって児に悪影響が及ぶような用量を摂取することにはならないとされています。例えばNSAIDsであれば

・イブプロフェンやロキソプロフェンのプロピオン酸系NSAIDs:0.1 〜0.7%

の値で、授乳中にこれらの鎮痛薬を使用しても適切なオーダーを受けていれば問題ありません。

また、NSAIDsの血中半減期で考えても

イブプロフェンは2時間、ロキソプロフェンにいたっては1.3時間と短い半減期である事もお伝えしておきます。

NSAIDsはプロスタグランジンの合成を阻害する作用を利用し、あるNSAID薬では動脈管開存症の治療に用いられます。成熟児であれば生後数日で動脈管は自然に閉鎖するものなので、分娩退院後にNSAIDsを再度服用するのはこの事象についても赤ちゃんに問題になることはまずありません。

「妊娠と授乳(南産堂)」でもロキソプロフェン(ロキソニン®︎)を含めほぼ全てのNSAIDsが授乳における総合評価は『安全』となっていますし、

国立成育医療研究センターホームページにも『授乳中に安全に使用できると考えられる薬』としてロキソニン®︎など、しっかりと掲載されています。

https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist_aiu.html

むしろ産後に痛みがあり、我慢してご自身の体調が悪化してしまう方がマズイと私院長は考えます。

ただし、NSAIDsは喘息をお持ちの方には使えない場合もあり、家に手持ちの鎮痛薬があるからご自身の判断で飲む、ということは避けていただきたいです。また調剤薬局での薬剤師によっては産婦人科の処方に慣れていなくて意見の違うアドバイスがある事もありますから、一度かかりつけの産婦人科に相談するのが良いでしょう。

鎮痛薬に限らず、もし授乳中の方でお薬の内服で心配なことがございましたら、相談をお受けします。忙しくて来院が難しい場合は当院のオンライン診療をご活用ください。

参考文献;

妊娠と薬の使い方; 日本医師会雑誌2019年5月

分娩と麻酔. No.100, 2018. 11

今日の治療薬

赤ちゃんの性別

こんにちは、副院長の石田です。

妊婦さんとそのご家族にとって赤ちゃんの性別は楽しみなことの1つです。超音波検査だと妊娠10週台中盤以降で判断しやすくなってくるため17週前後くらいで健診に来てくださった方に関しては「性別知りたいですか?」と伺うようにしていますが、実際に知らせると悲喜こもごもといった方もいらっしゃいます。本日はそんな性別判断の検査についてです。

性別の決定は難しい

性別を超音波で判断するのは実は結構難しいです。お股がきれいに写せるかどうかは赤ちゃんの姿勢やへその緒の場所なんかにも左右されますし、男の子の場合はおちんちんがあるので分かりやすいですが、女の子の場合は無いものを無いと言い切るのが結構チャレンジングです。以前勤めていた別の病院では、妊娠中にご両親が外来担当医から女の子と聞いていたのに産まれたら男の子だったということが1回だけありました。100%で決めるには羊水を採取して染色体検査をするのが確実ですが、性別のためだけにそこまでする人は見たことがありません。

性別確定のための新テスト

そんな感じで日本では我々産婦人科医が頑張って赤ちゃんのお股を映すわけですが、実は海外では妊娠7週くらいから性別が分かる検査があります。お母さんの血液中に混ざっている赤ちゃんの遺伝子(cell free DNA)を調べることによって性別を判定するという方法で、2010年にオランダのチームが約200人の妊婦さんを検査したところ100%正確だったとした論文を出しました 1) 。ロイターやThe New York Timesなどでこのことが記事になったのもその頃で、その後欧米では割とお馴染みになりつつあるのかざっと見ただけでもいくつかの検査会社がウェブサイトで案内を出していました。実際には妊娠9〜10週以降で受けていることが多そうですが、例えばPrenatal Genetics Centerというところだと$290で検査ができ、結果も7営業日で報告してくれるそうです 2) 。(オプションで3日で検査結果を出してくれる迅速サービスもあるみたいです。)また、驚くことに通販を利用して自宅で簡単に検査できるようなキットを販売しているSneak Peekという会社もありました 3) 。こちらはなんと$79です。

そんなに早く性別が分かる必要があるのか

「性別なんて気になるけどそんなに早く知らなくてもいいんじゃない?」という人がほとんどかと思います。実際ほとんどのご家族にとって性別は興味があることではあるものの、それ自体が何かの決断を左右することはまずありません。しかし、ほんの少数のご家族にとってはできるだけ早く性別を確認することは医学的に重要な意味を持つことがあります。

赤ちゃんの先天性疾患の中には遺伝子は引き継がれるけど実際に病気が発症するのは男の子だけということがあります。具体的には血友病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、無ガンマグロブリン血症などです。また、先天性副腎過形成という病気の場合は胎児が女の子だと性器が男性化することがあります。この病気では妊娠成立後早期に妊婦さんへステロイド治療を開始することで赤ちゃんの症状が軽快する可能性があり、前述の先天性疾患も含めてこれらの場合にはできるだけ早く性別が分かることには様々な意思決定のためにも意味があると言えるのかもしれません。

まとめ

赤ちゃんの性別を知ることはほとんどの家族にとってとても楽しみなことです。赤ちゃんの身の回りの品を買いそろえたり、名前を考えたりするのはワクワクしますが、その一方で医学的に気にしている人たちもいらっしゃるんですね。ちなみに我々産婦人科医は毎回にこやかにエコーをしていますが実は結構真剣におちんちんの有無を確認しています。それでも見えないこともごく稀にありますが、もし万が一赤ちゃんの実際の性別がエコー結果と違ってもどうか笑顔で許してやってください。幸いまだそういった経験は1回も無いけど。

1) Schaffer PG, et al. Obstet Gynecol 2010; 115(1): 117-26

2) https://www.prenatalgeneticscenter.com/prenatal-baby-gender-test.html

3) https://sneakpeektest.com

妊娠週数と分娩予定日はどのように決めるのか

・最終月経初日から280日目を分娩予定日とします。ただしこれは月経周期が不規則な人には当てはめることはできません。

予定日の簡便な計算方法として『Nagale(ネーゲル)の分娩予定概算法』が有名で、

最終月経日の月数+9

最終月経初日+7

で予定月日がわかります。例えば本日11月16日を最終月経初日とすると、

11(月)+9=20、ちなみにこの場合、1年は12ヶ月なので20−12とし8、

16(日)+7=23

よって8月23日がおおよその予定日となります。

・特定できる排卵日や胚移植日がわかる場合にはそれらの日から起算した予定日を用います。

少しデリケートな話ですが、妊娠が判明した時にパートナーがその前後で変わった場合、役所から推定排卵日の証明を求められる場合があります。離婚後すぐに別パートナーと妊娠した場合は、弁護士にアドバイスを求めることを勧めます。

・妊娠12週未満において、超音波検査での赤ちゃんの頭殿長(CRL〔Crown-Rump Length〕、いわゆる頭からおしりまでの長さ)値から週数および予定日にずれがないか確認します。値に対し、予定日と7日以上のずれがある場合は、CRL値からの予定日を採用します。

・妊娠12週以降と推定される場合は児頭大横径(BPD〔Bi-Parietal Diameter〕、いわゆる頭の横幅の大きさ)で予定日を判定します。妊娠に気づかず、もしくはためらいがあり、通常より遅く産婦人科を受診した場合は、推定体重が計測できる大きさであればBPDと推定体重を計測し、週数に妥当性があるかを判断します。妊娠継続の有無を考える際に大事な要素となるからです。

(院長記載)

参考書;

コンパス産婦人科

産婦人科診療ガイドライン 産科編2020

妊娠中の授乳

こんにちは、副院長の石田です。

まだ上のお子さんが小さいうちに次の妊娠をされる方がいらっしゃいますが、その方々にとって授乳をどうするかは大きな問題です。赤ちゃんの栄養としてだけでなく愛着形成などの精神的なメリットもある授乳をできれば止めたくないけど、お腹の子に何か影響があっても困りますよね。と言うわけで本日は妊娠中の授乳について書こうと思います。

授乳が妊娠に与える影響

授乳が妊娠に与える良くない影響として考えられるのは2つで、1つ目は栄養面での問題です。通常妊娠するとお母さんの基礎代謝率は最大で25%程度上昇するとされています 1)。つまり妊娠すると栄養の必要量が増えるわけですが、これに加えて授乳はさらに栄養需要を増加させるため、これらの全てをしっかり補えないと栄養失調になってしまうリスクが懸念されます。そしてもう1つがホルモン的な問題です。授乳によって乳首と乳腺が刺激されると脳からオキシトシンが分泌されますが、このホルモンはおっぱいから母乳が射出されるのに必要なだけでなく、分娩後などに分泌されて子宮を収縮させる作用があります。そのため妊娠中に分泌されると流産の原因になる可能性があるのです。

実際の影響

妊娠中の授乳は妊娠の予後や赤ちゃんの出生体重には影響がないとする論文もありますが、2019年に発表された10,661人のアメリカ人の妊婦さんを細かく分析したデータによると、完全母乳での育児中の妊婦さんは授乳していない妊婦さんと比べると3.9倍流産しやすくなることが分かりました。その一方で離乳食がメインでおっぱいは少しくわえさせている程度の場合は流産率は上がらないことも同研究で確認されています 2)3)4)。ただ、このデータは飽くまでアメリカ人を対象としていることから日本人に当てはまるかは分かりませんし、具体的にどれだけの量の授乳をどのくらいの長さ行うといけないのかということも明らかにされていないので、今後授乳と妊娠に関してはさらなる研究が必要になるでしょう。

まとめ

授乳にはたくさんのメリットがあるのでできれば妊娠中でも続けていただきたいのですが、その一方で上記のようなリスクもあるため注意が必要です。目の前で上のお子さんがおっぱいを欲しがって悶えているとつい手を差し伸べたくなりますが、お腹の赤ちゃんとのバランスをとることが大切ですね。当院におかかりの方は卒乳、断乳などもご相談にのりますので是非お気軽にお声かけください。

1) CM Donangelo, et al. The Encyclopedia of Food and Health. 2016;4:484-490

2) G Lopez Fernandez, et al. Women Birth. 2017 Dec;30(6):e292-e300

3) Aylin Ayrim, et al. Breastfeed Med. 2014 Apr;9(3):157-60

4) Joseph M. Perspective Sex Reprod Health. 2019 Sep;51(3):153-163