妊娠糖尿病とは「妊娠中はじめて発見された糖代謝異常」1)のことをいいます。妊娠におけるホルモンのバランス変化などにより2)、妊娠中は血糖値が上がりやすいのです。採血の値で妊娠糖尿病を診断します。
先日の外来で、妊娠糖尿病になると何がマズイのかとの質問がありましたので、以下『マズイ』事を書かせてもらいます。
そもそも妊娠を終えた後、将来ご自身の糖尿病やメタボリックシンドロームのリスクが他の方よりあることをご承知ください。
実際の妊娠と出産に関して、血糖および体重管理がなされていない場合は、難産のリスクが高まります。例えば陣痛・分娩時間が長引いたりすることです。児(赤ちゃん)が大きくなりすぎて産道に対し児の頭が大き過ぎたり、児が姿勢を変えながら出口に到達する(回旋)のに位置異常を起こしたり、ご本人の腟および会陰の一部を含む軟産道3)が相対的に狭く、ひいては傷をおおくつくることもあります。
私院長が国境なき医師団の医師としてナイジェリアへ派遣された時、妊娠糖尿病の管理がなされていないための産道通過障害と、おそらく妊娠糖尿病に伴うものであろう赤ちゃんの奇形が多いのに驚きました。これらは母児の命に関わることがあるのです。
無痛分娩・硬膜外麻酔を希望されている方も、体格がご立派なら麻酔が入りづらくなる可能性もありますね。
切迫早産薬として使われている塩酸リトドリン(商品名ウテメリン)も、糖尿病合併の場合は原則禁忌4)なので、早産のリスクも高まります。
赤ちゃんに関しても先程述べたように、お母さんの血糖コントロールができていない場合は奇形率が上がると言われています。
思い浮かぶだけでどんどん懸念点が出てくる妊娠糖尿病、まずはご自身の食生活から見直されてみる事をおすすめします。ただ何事も『バランス』が大事ですので、お困りの際はにしじまクリニック医療スタッフへお声かけください。
1)妊娠の糖代謝異常 診療・管理マニュアル(メジカルビュー社)
2)妊娠・分娩・産褥の生理(メディカ出版)
3)西島重光 コンパス産婦人科(メック)
4)今日の治療薬(南江堂)