過期妊娠予防の誘発分娩について

こんにちは、副院長の石田です。

妊婦さんは初期に分娩予定日を決定します。これは最終月経や赤ちゃんの大きさ、不妊治療を行なった方であればそのスケジュールから決まるのが一般的ですが、もちろんこの日に産まれますよということではなく、この辺りで産まれますよという何となくの目安になります。なので予定日を過ぎてからご出産になる方もたくさんいらっしゃるのですが、時としてなかなか産気づかない場合には積極的な医療介入を勧められることもあります。というわけで本日はこちらについてお話しさせていただこうと思います。

過期妊娠とは

過期妊娠とは妊娠42週を過ぎても妊娠したままの状態にあることを指します。昔は予定日超過という言葉を使用していたこともあったのですが、それだと音感的に予定日を少しでも超えたら全部当てはまってしまいそうなので現在は過期妊娠と呼ぶことに決められています。一般的に予定日を過ぎてしばらくしても陣痛や破水が起こらない場合には42週を超えないように誘発分娩を検討することになりますが、これは別にしびれを切らしてというわけではなく、過期妊娠にしたくない理由があるからに他なりません。では過期妊娠では具体的に何が起こるのでしょうか?

過期妊娠による赤ちゃんへの影響

42週を超えて妊娠が継続すると赤ちゃんが育ち過ぎてしまったり、胎盤が古くなることで機能が低下してしまうリスクが知られています 1)2)。赤ちゃんが大きく育ち過ぎてしまった場合には分娩が順調に進まずに難産や帝王切開になったり、赤ちゃんが出てくるときに産道に挟まったりして鎖骨骨折などの外傷が起こることがありますが、その一方で胎盤機能が低下した状態で妊娠が継続すると低栄養から赤ちゃんが痩せていったり羊水が少なくなったりします。また、胎便吸引症候群や胎児仮死など赤ちゃんの健康に深刻な被害が出てしまうリスクも高まるとされています 2)3)。

41週前後での誘発分娩をご提案しています

大体の周産期施設がそのようにしていると思いますが、上述のリスクを回避するために当院でも妊娠41週が見えてくると誘発分娩で積極的にお産にもっていくことをご相談するようにしています。実際に2020年に発表されたデータによるとその時期での誘発分娩は周産期死亡率を約70%、帝王切開になるのを約10%、新生児の集中治療室入院を約12%低下させるということでした 4)。誘発分娩は入院のうえで進めていくことになりますが、入院日はその時期の曜日や休日、また患者さんご本人やご家族の都合などを考慮してご相談の中で決まります。

まとめ

本日は過期妊娠について解説いたしました。できるだけ自然の陣痛を待ちたいというお母さんが多いと思いますし、我々としてもその方がスムーズにお産が進むことが多いのでできれば自然に陣痛が来る方がありがたいなと思っています。ただ、その一方で「赤ちゃんとお母さんが元気にお産を終えられること」が最優先課題ですので、患者さんご本人やそのご家族と我々医療者とでしっかりと話し合いながら一番良い方法を一緒に決めていきましょう。

1) Spellacy WN, et al. Obstet Gynecol. 1985;66(2):158

2) Vorherr H. Am J Obstet Gynecol. 1975;123(1):67

3) A M De Los Santos-Garate, et al. K Perinatol. 2011;31(12):789.

4) Middleton P, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2020;7:CD004945.