頭痛の種類

こんにちは、副院長の石田です。

突然ですが、皆さんは頭痛持ちですか?私はもう20年近く頭痛に悩んでおり、ここ数年は毎日ロキソニンを飲んでいます。さて、よく外来で患者さんから「片頭痛持ちなのでお薬をください」と言われることが多いですが、実際にお話を伺うと医学的な意味での片頭痛ではなさそうなことがほとんどです。そこで本日は頭痛に関して専門外ではありますが少し解説してみたいと思います。

筋緊張性頭痛

頭痛を起こす疾患はたくさんありますが、私を含めて恐らく最も多くの人が悩んでいるのがこの筋緊張性頭痛です。頭から首、肩の筋肉を包む筋膜からの刺激に対して何らかの理由で脳が過敏になって頭痛を感じるのではないかと考えられていますが、本当のメカニズムは実はまだ分かっていないそうです 1)。おでこからこめかみのあたりをバンドで締め上げられているような痛みが特徴的で、短いと30分くらいで治りますが長いと1週間以上続くこともあります。また、このタイプの頭痛では頭から首、肩にかけての筋肉が押すと痛んだりすることも知られていますが、いわゆる「肩こり、目の疲れ」などと関係しているということなのかもしれません。通常は痛み止めを使用したり運動や鍼灸で筋肉をほぐして対処しますが、症状が重い場合には抗うつ薬や抗痙攣薬などを使用することもあります。

群発性頭痛

群発性頭痛も有名な頭痛の一つです。こちらもそのメカニズムははっきりしていませんが、三叉神経から視床下部への伝達経路の問題や静脈の閉塞などが原因として考えられているようです 2)3)。頭の片側に限局した、目の裏側から湧き上がってくるような鋭くて強い痛みが特徴的で、「まるでアイスピックを目に突き刺されたような」と表現されます。一度の頭痛発作は15分〜3時間程度で治りますが、場合によってはこれが毎日、あるいは1日に何度も襲ってくることがあり、そのせいなのかは分かりませんが群発性頭痛の患者さんはそうでない人と比べてうつ病発症のリスクが3倍高くなるという報告もあります 4)。

片頭痛

片頭痛は医学的には神経障害に端を発した頭痛や、光と音への過敏反応などの諸症状を言います。昔は頭の血管が広がることによって発作が引き起こされると考えられていましたが、現在その考えは否定されつつあります 5)6)。拍動するような頭痛が4〜72時間継続するのが特徴で、25%程度の患者さんで「前兆」と呼ばれる神経症状を伴います。神経症状は具体的には明るい線が見える、耳鳴りや音が聞こえる、体が勝手に動くという陽性症状が有名ですが、逆に目が見えにくくなったり音が聞こえなくなるといった陰性症状のこともあります。ちなみに片頭痛というと片側だけに出そうですが、実際には両側性のこともしばしばです。

まとめ

頭痛を起こす疾患は上記以外にも星の数ほどあるわけですが、頭痛という症状が主体の病気で最も有名なのはこの3種類です。「なんで産婦人科のブログで頭痛のことを取り上げたの?」と思う方も多いかもしれませんが、実は片頭痛をお持ちの女性(特に「前兆」を伴う場合)にピルを使用すると脳卒中のリスクが高まるという理由で禁忌とされているため、安易に自己判断で「片頭痛があります」と申告されてしまうと避妊や生理痛コントロールなどに使いにくくなってしまうという事情があるからなんです 7)。実際には丁寧にお話を伺って本当に片頭痛かを確認した上でピルの処方可否を判断するのですが、施設によっては患者さんから「片頭痛」と言われてしまうとそれだけでピルが治療の選択肢から外れてしまう恐れもあり、そういった機会損失を避けるためにもご自身の頭痛に対して正しい認識を持つことは大切だと考えて記事にしてみました。逆に違うと思っていたら本当の片頭痛だったということもあるかもしれませんので、もしここまで読んで思い当たる症状があるようでしたら最寄りの頭痛外来を受診してみてください。

1) Bendtsen L. Curr Pain Headache Rep. 2003;7(6):460
2) May A, et al. Nat Rev Dis Primers. 2018;4:18006
3) Hardebo JE. Headache. 1991;31(5):314
4) Louter MA, et al. Neurology. 2016;87(18):1899
5) Peter J. Goadsby. Ann Indian Acad Neurol. 2012 Aug; 15(Suppl 1):S15-S22
6) Amin FM, et al. Lancet Neurol. 2013 May;12(5):454-61.
7) 日本産科婦人科学会/日本女性医学学会. OC・LEPガイドライン 2020年度版:CQ607