ビショップスコア

「37週に入ったらすぐ計画出産(経腟分娩)にしてください」

ご事情をふまえ、お気持ちは察するのですが、にしじまクリニックの方針としては『診察・内診に応じて入院日をご相談』する形をとらせてもらっています。

37週以降の妊婦健診でBishop(ビショップ)スコアの表がリーフレットに添付しています。ビショップスコアの点数が上がれば、お産が近い事を示唆しています。

医師または助産師が診察(内診)においてビショップスコアの偏り(差)がないよう当院は心がけています。

ビショップスコア. 産婦人科ファーストタッチから

子宮口開大は子宮口

子宮の出口部である子宮口は、腟側が「外子宮口」、

胎児側が「子宮口」です。ビショップスコアにおける子宮口開大については「子宮口」で評価します。

※ただし、未陣痛時の外来においては下記に説明する『展退度』はまださほど進んでいませんから、外子宮口も子宮口も差があまりない事が多いです(入院・陣痛発来後はしっかり評価しなければなりません)。

ESSENTIAL OBSTETRIC AND NEWBORN CAREから.`internal OS’は内子宮口

展退度は子宮頸管長が目安

お産が近づくと、子宮口の開大より先に子宮頸管の展退が進みます。「展退」とは「子宮頸管の熟化」を表します。子宮頸管が柔らかくなれば児頭は降りやすくなり、かつ子宮口が広がりやすくなるのです。

診察者による展退度のバラツキ(偏り)がないようにするには、子宮頸管長と照らし合わせると整合性が高くなります。例えば「展退度40〜50%」は「子宮頸管長2〜4cm」に相当します。

分娩進行時、児頭下降の評価Progression angleを測定するとなお良い

内診で児頭がどの位降りているか、『児頭が陥入している状態はStation 0』という定義等から診察者は評価をしています。

さらには超音波を用いてProgression angleを確認する事で、内診による児頭下降評価との再現性が高まります。例えば「児頭の位置(Station)が−1〜0」は「Progression angle 130度」に相当します。

以上から、計画出産日のご相談は早産の既往や前回37週で分娩となった方以外の方では、少なくとも37週のビッショップスコアと、

38週のビショップスコアの変化を確認してからが望ましいです。

執筆 院長

妊娠と耳がつまる感覚について

こんにちは、副院長の石田です。

妊娠中の女性からよく聞かれる訴えのひとつに「耳がつまったように感じる」というものがあります。飛行機に乗ったときのような音がこもる感覚や聞こえにくさを伴うことも多く、不安に感じる方が少なくありません。妊娠するとこのような状態になりやすくなることが知られていますが、下腹部で起こる妊娠と頭についている耳にどんな関係があるのでしょうか?そこで本日はこの件について解説してみようと思います。

耳管の構造と機能

先に言ってしまうと、これは耳管開放症という状態です。耳管とは耳と鼻をつなぐ細いトンネルのような管で、長さはおよそ3〜4センチです。片方は中耳(鼓膜の奥)につながり、もう片方は鼻の奥(上咽頭)に開いています。耳管は喉から耳の奥にばい菌などが入らないように普段はぴったり閉じていますが、気圧の変化があっても鼓膜が適切に動くように耳の中の空気を入れ替えたり(高層ビルのエレベーターに乗っている最中に耳がこもるけど、あくびすると治るアレ)、耳の中で出た分泌物や水分を鼻のほうへ排出するときには開く仕組みになっています。

耳管開放症とは

耳管開放症とは、この耳管が開きっぱなしになってしまう状態のことです。妊娠するとエストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンが増加しますが、それにより血管透過性の向上や平滑筋の弛緩、組織の浮腫などが引き起こされ、それらの結果として耳管の開閉機能に異常をきたすと考えられています 1)2)。報告によってまちまちですが、妊婦さんの30%前後にこの症状が出るらしいです。通常は耳に届いた音が鼓膜を振るわせて内耳、神経と伝わっていくのですが、耳管が開いていると内耳での音響が変化したり、喉の奥からの音が直接内耳に届いたりするため、音の感じ方が変わって非常に不愉快です。

まとめ

妊娠中の耳管開放症はある意味生理現象であり、正直あまり有効な治療はありませんが、妊娠が原因のため出産後には自然に治ることがほとんどです。一方でずっと症状が続いたり、聞こえづらさ以外の症状が併発するような時は突発性難聴や中耳炎などほかの疾患との鑑別が必要になることもあるため最寄の耳鼻科にご相談いただくのがよいかもしれません。人によっては漢方が効くこともありますので、ご希望の方はかかりつけの産婦人科でご相談ください。

参考文献
1) Santosh Kumar Swain, et al. J Otol. 2019 Nov 22;15(3):103-106
2) Alicja Grajczyk, et al. J Clin Med. 2024 May 2;13(9):2671