朝練、NCPR編

皆さま、朝はお強い方でしょうか。

最近、家内はウォーキングに励んでおり、長男は持久走が近くなってきたので家の周囲をグルグル走っています。

私は、陣痛の待機者や外来時間外対応がなければ朝の診察前にオンライン英会話をします。

にしじまクリニックでは、救急医療に長けた副院長主催のもと、救急対応を朝活朝練として外来開始前にスタッフと行ってもらっています。体を動かすことで脳に刺激を与える、ということもありますが、何より救急対応を日常、毎日行うことで、体に叩き込む目的があります。

体に叩き込んでおきたい救急対応の一つとして新生児蘇生があります。お産後、赤ちゃんがぐったりしている場合や早産の時は決められた手順に従ってケアおよび蘇生を行います。これはNCPR(Neonatal Cadiopulmonary Resuscitation)と呼ばれ、国際蘇生連絡委員会(ILCOR)で提起された手技手順です。

NCPRは専門コース(Aコース)と一次コース(Bコース)があり、にしじまクリニックでは看護師および助産師、医師は全てこのNCPR Aコースを取得しています。さらに私院長はNCPRのインストラクターを保持しており、当院でNCPRを取得するためのコースを年に数回主催しています。

当院の価値観(企業理念に近いものです)として、『エビデンスに基づいた、親身ある産婦人科医療とサービスを提供する』を掲げています。手技に関しては、誰が行っても技術と統一がはかられ、かつクリニックならではの親近感ある医療およびサービスをこの朝活からでもアップデートしていきます。

Patient Safety Day

こんにちは。本日はWHOが定めるPatient Safety Day、日本語では『患者安全の日』になります。

日本では『医療安全』という言葉がよく用いられますが、世界では『患者安全』の方がしっくりくるようです。

にしじまクリニックでの『患者安全』の対策として、”チームSTEPPS”1)というプログラムを導入し始めています。

チームSTEPPSは、患者安全とチームパフォーマンスの向上をはかるため、アメリカで国と医療業界が開発したプログラムです。

医療安全・患者安全の取り組みは、なかなか把握しにくいものですが、チームSTEPPSは、エビデンスに基づいたプログラム、というのがポイントで、2011年のWHO患者安全カリキュラムガイドにも引用されています。

チーム医療の中に患者さんも含まれ、患者さんもスタッフも、心配事があれば汲み取る、メンタルモデルの共有が軸となっています。

当院ではまず、CTG(ノンストレステスト)での評価、産後出血時の対応、産後健診での記載欄で用いられています。

患者さんの安全がより高まるよう、当院ではこの取り組みを積極的に行ってまいります。

院長記載

1)チームSTEPPS 2.0

にしじまクリニックでの貧血対策

先日、石田先生が貧血についての投稿がありました。

WHO(世界保健機関)は妊娠期間中、30〜60mg/日の鉄および400μgの葉酸の摂取を推奨しています。1)

なお、私が以前活動していた国境なき医師団では、65mg含有の鉄と400μgの葉酸を含有したタブレットを貧血対策として使用していました。2)

当院の貧血対策として、まず定期採血でHb(ヘモグロビン)を確認します。

Hbが11g/dL未満の場合、(妊娠性)貧血と判断します。

次に、MCV(平均赤血球容積)という項目で、大球性貧血の鑑別を行います。

大球性貧血と判断した場合、葉酸や血清ビタミンB12の不足が考えられます。当院では『エレビット』という葉酸マルチビタミンサプリをご用意しております。

大球性貧血を否定し、さらにHb 9g/dL未満の場合、鉄剤の注射の対応としています。鉄剤注射を行う場合、やみくもに静注してしまうと、肝臓などに鉄が付いた病態のヘモクロマトーシスが問題になります。どの位鉄剤を静注してよいかの指標に、フェリチンをいう、鉄貯蔵量を反映する値を確認しています。

Hbが9以上11g/dL未満の場合は鉄剤内服を処方します。錠剤の内服が難しい場合はシロップ剤を院外処方することが可能です。なおこのシロップ剤は小児科でも処方されるものです。

少しややこしいかもしれませんが、皆さまへ適切な処方を行うために取り組んでいることをご理解いただけたら、と思います。下に当院マニュアルのフローチャートを載せておきます。3)

院長記載

1) e-Library of Evidence for Nutrition Actions

2)ESSENTIAL OBSTETRIC AND NEWBORN CARE 2015 edition

3)日本医師会雑誌2018年7月、適切な貧血診療のポイント