ブースター効果

最近何かとワクチンの話題が多いので、本日は『ブースター効果』について説明します。

ブースター効果(Booster effect)とは

体内で一度作られた免疫機能が再度抗原に接触することにより、さらに免疫機能が高まることを期待する追加免疫効果のことをいいます。

ワクチンを接種するにあたり、基礎免疫を作るため種類によってはブースター効果を狙って追加接種が必要なのです。

ブースター効果を利用するワクチンの種類として、例えば

・子供に打つインフルエンザワクチン[不活化ワクチン]

・MR(麻疹・風疹)ワクチン[生ワクチン]

があげられます。またHPVワクチン[不活化ワクチン]についても3回目の接種はブースター効果が目的といってよいでしょう。

ワクチンの接種または感染症にかかると体には抗体が産生されますが、再感染がなければ抗体は時間とともに感染阻止レベル以下に低下してしまいます。妊娠初期検査で風疹抗体価が設定されているのはそのためです。にしじまクリニックでは厚生労働省や日本産婦人科医会らが行っている『”風疹ゼロ”プロジェクト』に賛同し、風疹抗体価が少ない妊婦さんは産後に風疹ワクチンの接種を勧めています。

日本ではほとんど想定されていないのですが、海外では幼少期に破傷風ワクチン接種していない妊婦さんは、分娩前に最低2回は破傷風ワクチン(TT:破傷風トキソイド単独)を接種することが求められています。

〔ESSENTIAL OBSTETRIC AND NEWBORN CAREから1)〕

上記の表では、分娩予定日2週前には破傷風ワクチン2回接種をおえることとし、最終的にはブースター効果を狙って5回接種することが求められていますね。

破傷風ワクチンは『トキソイド』という、病原体となる菌が作る毒素を無くして作られたワクチンです。

日本では現在4種混合ワクチン(DPT-IPV:ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)は定期予防接種で生後3ヶ月から計4回打つことになります。

ちなみにDT 2種混合ワクチンを接種した方(定期接種として11〜12歳に1回接種)は、約10年間は有効な免疫抗体を持つことになりますが、以後は少なくなってきますので追加の予防接種が望ましいです2)。

海外(と海外同様先進的な取り組みを行っている日本の一部施設)では出産後乳児の百日咳の予防として抗体移行を期待して成人用3種混合ワクチン(Tdap、今のところ日本では未承認)を妊娠中に接種する方もいます3)。

参考文献

1) ESSENTIAL OBSTETRIC AND NEWBORN CARE

2) 品川イーストクリニックホームページ(https://izavel.com)

3) 今日の治療薬

ワクチンの開発はとても大変だし時間もかかる

こんにちは、副院長の石田です。

年初以来ずっと話題の中心に居座っているコロナウイルスに対して世界中が一刻も早いワクチンの開発を心待ちにしていますが、その期待に応えようと9月10日時点で38のワクチン候補が人間での臨床試験(いわゆる治験)に入っているほか、少なくとも93のワクチン候補が動物実験されているそうです 1)。そんな中、アストラゼネカが開発しているワクチンの臨床試験中、被験者に深刻な副作用が発生したとして世界中で治験が中断されました 2)。被験者の方の健康状態が心配されるとともに、ワクチンまでの道のりが一筋縄ではいかないことを改めて感じたニュースでした。というわけで本日はワクチンの開発ってそもそもどんな感じなのかをお話ししようと思います。

ワクチン開発の流れ

ワクチンには大きく分けて安全性、免疫原性(免疫を作る力)、そして実際に作った免疫が人間を守れるという3つの性能が要求されますが、そういった有効なワクチンを作成するには以下のようなプロセスを経る必要があります 3)。

1. 探索段階(Exploratory stage)
ワクチン候補となる物質を決める段階です。通常は弱らせた病原菌そのものやウイルスの断片、細菌が放出する毒素などが原料になります。
2. 臨床前段階(Pre-Clinical stage)
培養した細胞や動物を使った実験を行います。この結果を用いて人間での実験の際の投与量などが暫定的に決まります。
3. 臨床試験(Clinical development)
実際に人間に投与してみる段階です。その目的と規模により第1相〜第3相までに分けられます。
4. 承認(Regulatory review and approval)
これまでの実験結果を然るべき機関で審議し、世の中に出して良いかどうかを決定します。
5. 製造(Manufacturing)
承認を受けた製品を製薬会社が製造します。
6. 品質管理(Quality control)
発売後も投与された患者さんのデータは収集され続け、もし有害事象があったり、副作用が無くても効果も無いなど問題があれば適宜承認を見直されたりします。

上記の通り、実際に人間での投与が始まるのは臨床試験からになりますが、このパートは次のように、さらに3段階に分けられています 4)。

第1相:通常100人に満たないくらいの小さな規模の試験で、健康な志願者に投与されます。ここでの主目的は効果の評価というよりも安全性の確認です。重篤な副作用が出ないか、安全な投与量はどの程度かが確認されます。
第2相:続いて数百人規模の試験が行われます。この相でも引き続き安全性が確認されるとともに人体の免疫機能が投与後にどのように反応するかが確認されます。
第3相:ここまで来ると数千人以上の大規模臨床試験となり、ワクチンの安全性はもちろんのこと、接種した人としていない人を偽薬を使用しながら比較してワクチンが本当に有効なのかを確かめます。

ワクチン開発にかかる時間

さて、上記のように様々な課題をクリアしてやっと実用化されるのがワクチンなのですが、これら一連の作業にはどのくらいの期間が必要だと思いますか?実は最初の探索期間だけでも通常数年はかかると言われています。加えてその後の基礎研究、臨床試験を経て慎重な審議を重ねた上で製品化されるので、結局開発期間に何十年とかかることはザラにあるんですね。実際病気が発見されてからワクチンができるまでの期間で言うと、麻疹こそ10年程度ですが子宮頸がんワクチン(パピローマウイルス)は25年、髄膜炎菌やチフスなんかだと100年近くを要しています。HIV(1983年〜)やマラリア(1880年〜)のワクチンは世界中で研究されているにも関わらず未だに存在していませんし、COVID-19と同じコロナウイルスが起こすSARSに至っては開発自体が断念されました 5)。実は治療用の薬品も上記と同様のプロセスで製品化されていくのですが、ワクチンの承認がより厳しいのは「病気の人に使うのか、健康な人に使うのか」という違いが大きいです。治療薬なら1万人に1人重篤な副作用が出るとしても残りの難病の人が治るのであれば認可されるかもしれませんが、ワクチンだとそうはいきませんよね。もともと健康な人が病気にならないために投与するのでその分安全基準が厳しいわけです。現在報道されているような「1年半で新型コロナのワクチンを開発する!」というのは実現したら素晴らしいことだけど、それを真に受けて期待し過ぎていると大きく裏切られることになる可能性があります。

そんなだからこそワクチン接種をお勧めしたい。

別に皆さんをがっかりさせたいわけではありませんが、ワクチン開発は各種報道で出ているほど簡単な話ではないんですね。では、先の見えないワクチン開発が進む中で我々が今やっておくべきことは何でしょうか?これは色々とご意見があると思うんですけど、私としては是非皆さんに現存している安全性の確立したワクチンを接種していただきたいと考えています。と言うのも、実はコロナに限らず世の中にはこれまでも怖い感染症はたくさんありました。9月12日現在で新型コロナウイルスによる死亡者数は1423人ですが、年間10000人が診断されて3000人が亡くなっている子宮頸がんや、毎年高齢者を中心に約10万人もの命を奪っている肺炎の一番の原因である肺炎球菌はワクチンで予防が可能です。新型コロナは基本再生産数(R0)=1〜2で連日報道されていましたが、麻疹(はしか)はR0=12~18だし子供を含めて結構命に関わります 6)。大人になって風疹抗体が低下してしまった人たちがもっと積極的にワクチンを接種してくれれば風疹の周期的な流行は起こらずに赤ちゃんの眼や耳、心臓の障害の発生を防げるかもしれません。その他にもインフルエンザや帯状疱疹など大人になっても受けるべきワクチンはたくさんあります。感染症の脅威を世界が認識した今だからこそ、我々が現在持っているワクチンという盾の価値を再認識し、打てるワクチンを積極的に接種する良い機会ではないでしょうか?それに、社会全体でのワクチン接種率が上がれば接種した本人の防御になるだけで無く、抗体が付きにくい人たちのことを守ることもできるんです。

まとめ

当院では子宮頸がんワクチンはもちろん、抗体が低い女性やそのパートナーの方への麻疹・風疹ワクチン、かかりつけ妊婦さんのインフルエンザワクチン(季節限定)などをご用意しています。自分と周りの大切な人を守るために、是非接種をご検討ください。

1) The New York Times. Coronavirus Vaccine Tracker: https://www.nytimes.com/interactive/2020/science/coronavirus-vaccine-tracker.html

2) NHK: https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200909/k10012608481000.html

3) CDC. Vaccines & Immunizations: https://www.cdc.gov/vaccines/basics/test-approve.html

4) K Singh, et al. J Postgrad Med. 2016 Jan-Mar;62(1):4-11

5) Our World in Data: https://ourworldindata.org/vaccination

6) Fiona MG et al. Lancet Infect Dis. 2017 Dec;17(12):e420-e428

HPV 9価ワクチン(シルガード9®︎)について

こんにちは、副院長の石田です。

皆さん本日7月6日はワクチンの日というのをご存知でしょうか?1885年7月6日、フランスの細菌学者であるルイ・パスツールが開発した狂犬病ワクチンが、狂犬病の犬に噛まれた9歳の少年に世界で初めて接種されました。狂犬病は今も発症すればほぼ100%死に至る病気ですが、この少年はワクチンのおかげで発症することなく無事に治癒したのです。というわけで本日はワクチンに関するお話です。

HPV 9価ワクチンの承認が了承されました。

先日厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会が9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの承認を了承しました。このワクチンは2015年7月に承認申請が出されたので、実に5年越しの部会通過となります 1)。間も無く正式承認される見通しということで、このワクチンについてちょっと解説していきたいと思います。

どんなワクチン?

これまでの子宮頸がんワクチンと同じでHPVの感染を予防することによって子宮頸がんになりにくくなるというものです。HPV自体は100種類を超える型に数字で分類されており、そのうちメインになる16と18を含む14種類が子宮頸がんの原因になると考えられていますが、現行のサーバリクス®︎やガーダシル®︎がそれぞれ2種類(2価)、4種類(4価)にしか効かないのに対して、シルガード9®︎は6、11、16、18、31、33、45、52、58の9種類のウイルスに効果があります 。これまでのワクチンでカバーされていた16型と18型は子宮頸がん全体の70%程度の原因とされてきましたが、今回さらに31、33、45、52、58型をカバーすることで90%の子宮頸がんを予防することが可能と考えられています 2)。その他にも外陰がん(陰茎を含む)、肛門がん、咽頭がん、そして性病の尖圭コンジローマ(主に6、11型)などもHPV感染により起こるため、これらに対してもまとめて予防効果が期待されています。

接種対象と方法

ガーダシルと同様で初回、2ヶ月後、6ヶ月後というスケジュールで1回0.5mLを合計3回筋肉注射します。対象は9歳以上の女性で、通常は11〜12歳で投与しますが、45歳までであれば適応となります。意外と知られていないのは、「子宮頸がんワクチンは男性が接種しても良い」ということです。子宮も無いのに不思議な感じがするかもしれませんが、上記の通り陰茎がん、肛門がん、一部の咽頭がんや尖圭コンジローマなんかも予防できるので理に適っていますね。性病の尖圭コンジローマは別にしても、子宮頸がんと比べるとこれらの悪性腫瘍はそもそも発生頻度が格段に低いため男性は接種による利益を感じにくくはあるのですが、特に女性のワクチン接種率が低い国や地域では女性から男性という感染も成立しやすいため費用対効果が高いと考えられます 3)。でも何より大事なのは男性が接種することで男性→女性という感染の機会が減るため結果的に女性を子宮頸がんから守れるということです。子宮頸がんというのは女性だけが関心を払う問題ではないということを改めて意識するべきでしょう。

効果

では実際にみんなが子宮頸がんワクチンを接種するとどれほどの効果が期待されるのでしょうか?こちらは日本産科婦人科学会のウェブサイトからお借りして来たスライドです。

なんと2030年までにワクチンと子宮頸がん検診がしっかり普及した場合、今世紀中に子宮頸がんをほとんど撲滅することが可能であることが分かっています。これってすごくないですか?事実、世界に先駆けて子宮頸がん対策を行ってきたオーストラリアでは2028年頃に国内から子宮頸がん患者がいなくなる可能性があるそうです 4)。

副反応

最も多いとされている副反応は注射した場所の発赤、腫脹、疼痛で、その他めまいなんかも見られます 5)。重い副作用では失神なんかも頻度が高いため特に子供たちに投与する時は倒れないように座らせるか寝かせることが勧められています。また日本では2013年にワクチン接種後の知覚障害や全身疼痛、記憶障害などの重度な副反応が報告されたことは皆様もご存知かと思います。今も苦しんでいる方々がいらっしゃるためそれを軽んじることはできませんが、その一方でこれらの症状は臨床研究を通じてワクチンとの因果関係は証明されませんでした 6)7)。これに対して研究自体の問題点を指摘するもっともな意見もありますが、逆にこれらの重度な副反応とワクチン接種の因果関係を証明できた研究はありません。

まとめ

皆さんは「悪魔の証明」という言葉をご存知でしょうか?現実世界での悪魔の存在を情況証拠的に否定することはできるけど、断定的に存在しないとは言い切れない(「私は悪魔を見た」という人が一人でもいればその経験を反証するのはほぼ不可能)ことから、無いものを無いと証明することは極めて難しいことを指します。ワクチンの副反応もきっと同じで、いくら科学的に無い可能性が高いと言ってみても、現に何らかの症状で苦しんでいる方がいる以上は「無い」と断定するのは、恐らく今後も不可能でしょう。そういうある意味曖昧な部分が残るせいでワクチン接種に踏み切るのが難しい部分もあるかと思いますが、その一方で毎年多くの女性が子宮頸がんで子宮を失ったり亡くなったりしているのは事実です 4)。これらのデータを踏まえて我々産婦人科医のほとんどは、ワクチン接種を行うことで期待できる成果が大きいと考えています。当院ではご希望の方に子宮頸がんワクチンの接種を承っておりますし、今後9価ワクチンが正式に承認されれば院内採用する予定です。ご希望の方、ご興味のある方は是非当院までご連絡ください。

1) https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=69303

2) Zhigang Zhang, et al. Hum Vaccin Immunother. 2017 Sep;13(1):2280-2291

3) Bogaards JA, et al. BMJ. 2015;350:h2016. Epub 2015 May 12

4) 日本産科婦人科学会:http://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4

5) Slade BA, et al. JAMA 2009;302(7):750

6) 第23回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成28年度第9回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 資料4

7) Sadao S, et al. Papillomavirus Res. 2018;5:96-103

子宮頸がんワクチンは接種した方がよいのか?

こんにちは、副院長の石田です。

とくに何かきっかけがあったわけではないんですが、今日は子宮頸がんワクチンについて書きたいと思います。

子宮頸がんとは

ご存知の方も多いと思いますが、子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因として知られています。身近なところではイボの原因としても知られるウイルスですが、30タイプあるHPVの中でも15タイプが子宮ガンと関係していると言われており、その中でも1番多いとされているのが16型、2番目が18型です。

主な感染経路は性交渉であり、がん?性病?と身構えてしまいますが性交渉の経験がある女性であれば50~80%が生涯で一度は感染すると言われているくらいありふれたウイルスです。通常は感染しても勝手にいなくなってしまうことが多いのですが、一部の女性は持続的な感染状態となり、数年かけて段階的にがんへと進行していくことがあります。

子宮頸がんワクチンとは

子宮頸がん検診ががんになりかけからなってしまった病変を早期に発見することを目的としているのに対して、ワクチンはそもそもこのウイルスの感染自体を予防してがんにならなくするためのもので、現在国内で使用できるものには16型と18型に有効な2価ワクチンであるサーバリクス®︎と、尖圭コンジローマという性病にも併せて有効なガーダシル®︎という4価ワクチンがあります。いずれにしてもこれらのワクチンを接種することで60~70%の子宮頸がんを予防できると考えられています1)2)3)。

実際どのくらい自分に関係があるのか

「がん」というと中高年の病気なイメージが一般的ですが、子宮頸がんは20〜40代に急激に増えている病気で、中には妊娠、出産を経験しないまま子宮を摘出しなければいけなくなる方もおられます。年間で約1万人が診断され2900人が死亡しており4)、全体から見るとそれほど大きい割合では無いように思われるかもしれませんが、部位別、年代別でみると子宮頸がんが占める割合は若年者ほど大きくなることが明らかになっています。万が一診断されてしまった時のライフプランに対するインパクトが大きいことを考えると軽視できる病気ではないでしょう。

結局接種した方がよいのか

子宮頸がんワクチンの接種は性行為を経験する前の10代前半がメインターゲットとなります。そんな若い女の子にとっては「がん」など遠い話なので、実際に接種を判断するのはご両親になることも多いと思いますが、そんな皆さんにとって一番の懸念は副反応でしょう。発生機序は不明であるものの、ワクチン接種後に体の激しい痛みやしびれ、脱力などを起こす患者さんがいらっしゃったことから全国的に話題となりました。その後 の研究でワクチンと副反応の因果関係が否定されたこと、ワクチンが実際に子宮頸がんの発生率を下げていることなどを踏まえてWHOからも接種を推奨する声明が出されていますが、未だに患者さん達の不安は根強いように感じます。

いくら科学的に立証されないとは言え、実際に症状が出て苦しんでいる方がいらっしゃるのは事実ですし、WHOや日本産科婦人科学会が「副反応は存在しない」と断定できていない中でお子様の将来を思って悩まれるのは当然です。そのため最終的な判断はそれぞれのご家庭に委ねられることとなりますが、一般的な産婦人科医の多くは接種するべきだと考えています。それは我々が、妊娠を一度も経験することなく子宮を失った患者さん、妊娠初期から中期にかけて子宮頸がんが見つかり赤ちゃんごと子宮を摘出しなければならない患者さん、そして治療を延期して無事ご出産を終えた後にがんが進行して命を失った患者さんなど、その他にも多くの悲しみと直面してきた経験が強く残っているからだと思います。

予防接種に関するご相談は厚生労働省が相談窓口を開設しており5)、電話でのご相談が可能ですが、当院の外来でもご希望であれば直接対面でご相談いただくことが可能です。(※)もしご希望があればお気軽にお問い合わせください。

1) Miura S, et al. Int J Cancer 2006; 119: 2713-2715

2) Konno R, et al. Vaccine 2008; 26: M30-M42

3) Matsumoto K, et al. J Obstet Gynaecol Res 2013; 39: 7-17

4) http://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4

5) https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/inful_consult.html

(※)診察料が発生いたします。

はしか(麻疹)の流行にも注意

先日、2週間健診の褥婦さんに麻疹と風疹の混合ワクチンを摂取しました。風疹のみならず、麻疹にも気にかけていて、教養の高い方なんだなと思いました。

麻疹(はしか)とは、ウイルス感染症で、ヒトからヒトへ感染します。妊娠中に麻疹にかかると症状が重症化しやすく、さらに流産や早産、低出生体重児を引き起こす危険性があります。

世界保健機関(WHO)と厚生労働省のページから麻疹の症状を要約すると、

・ウイルスにさらされてから約10日後に発熱や感冒症状が出現

・口腔内に小発疹が出現後、皮膚に発疹が3日ほどで拡がる

というのが特徴です。

また幼少期にかかりやすい感染症でもあるので、よってワクチンの接種をしましょうね、ということになります。

麻疹含有ワクチン(主に接種されているのは風疹との混合ワクチン)を接種することによって、95%程度の人が麻疹ウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。また2回の接種を受けることで1回の接種では免疫が付かなかった方の多くに免疫を付けることができます。

麻疹も風疹も、抗体価が少ない方は、妊娠前もしくは産後にワクチン摂取を勧めしたいのです。胎児の先天性感染症の予防効果や、出産後の赤ちゃんへの感染の予防、また他人へ移すことへの予防。このような先手の好循環を増やすことが重要と考えます。

WHOは昨年8月、昨年1月から7月の世界の麻疹感染者数が一昨年同時期に比べ3倍近く増加したと発表しています。WHOの基準で、地域内で麻疹の伝搬が12ヶ月以上確認されれば、その国は「麻疹排除」の認定を受けます。しかし英国、ギリシャ、チェコ、アルバニアの4カ国は麻疹の感染者数が増加しており、これらの国はもはや「麻疹排除国とはいえない」と警告しています。

先日、職員検診での採にて私院長の麻疹抗体価は8倍で多くはありませんでした。私院長はワクチンを接種します

東京オリンピック・パラリンピックイヤーの今年、様々な方々が日本へ訪れます。最近話題になっている新型肺炎のみならず、様々な感染症が伝搬するリスクがあります。ワクチンで自分の身を守る、ひいては他人へ移すリスクを抑える、そんな意識が大切だと感じます。

参考)

NICUマニュアル第4版

厚生労働省 麻しんについて https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html

WHO Measles https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/measles

NHS Measles in pregnancy https://www.nhs.uk/conditions/measles/complications/

Forbes はしかが繰り返し流行する日本 https://forbesjapan.com/articles/detail/25800/1/1/1

ユニセフはしか世界で流行 https://www.unicef.or.jp/news/2019/0175.html