赤ちゃんの性別と迷信

こんにちは、副院長の石田です。

これまでもこのブログで何回か話題にしてきましたが、赤ちゃんの性別は妊婦さんとそのご家族が最も気にしていることの一つです。もちろんほとんどのご家族が男女どちらでも喜んでくださるのは別として、どっちの性別なのかを考えるのは純粋に楽しいですよね。
さて、現代では超音波検査で妊娠中から簡単に性別が分かりますが、そうなったのは人類の歴史で考えるとつい最近のことで、昔は本当に生まれてくるまで分かりませんでした。そんな中で赤ちゃんの性別を推測するべく様々な迷信が誕生したわけですが、今でもその一部は妊娠初期に性別を推測するために使われることがあります。そこで本日は世界各地に伝わる様々な迷信をご紹介したいと思います。

母親の変化から予測する方法

欧米を中心として「胎児の性別は母親の体質に影響する」という考え方があるようです。例えば妊娠後の好みの変化で言うと、しょっぱい・酸っぱい食べ物を好きになる場合は男の子、甘いものを好むようになる場合は女の子だと推測されます。また、赤ちゃんが女の子の場合は母親の美しさを盗むため、妊婦の肌がニキビなどで荒れるとも言われます。その他、妊婦の下半身が冷えるようになったら男の子だけど温かくなるなら女の子、妊婦の体がお腹を中心に大きくなる場合は男の子だけど、顔やお尻まで大きくなる場合は女の子などの言い伝えもあります。

暦で推測する方法

有名なのは700年前の中国で作られたものです。非常にシンプルな表で、妊婦の年齢と妊娠した月(旧暦)の組み合わせからどちらの性別を妊娠したかが一目で分かります 1)。同様に女性の年齢と妊娠した月をマヤ文明でも性別の推測に使用していたようですが、こちらはもっと簡単です。妊娠した時の年齢と妊娠した月(例えば5月なら“5”)をみて、両方とも奇数もしくは偶数なら女の子、片方が奇数でもう片方が偶数なら男の子が生まれてくると考えられていました。

自分でできる性別占い

指輪に紐を通して横になった妊婦のお腹の上で吊るし、静止させます。しばらく待つと吊るされた指輪が勝手に動き始めますが、その揺れが直線的なら男の子、円を描くように回るなら女の子というダウジングのような判定法は世界中で試されており、YouTubeでも”ring test”としてたくさん動画が出ています。そのほか、妊婦がニンニクを食べた後に体がニンニク臭くなったら男の子、においがつかなければ女の子というガーリックテストや、2脚の椅子の下にそれぞれフォークとスプーンを妊婦に見られないように隠し、妊婦が座った椅子がフォークなら男の子、スプーンなら女の子という占いもあります。また、紫キャベツを茹でて色がついた茹で汁に妊婦の尿を混ぜて、ピンクか赤色に変色すれば男の子、紫色のままなら女の子という「科学的な雰囲気出してるけど、それって胎児の性別というよりは尿のpHを見てるだけなんじゃないっすか?」とツッコみたくなる紫キャベツテストなんてのもあります。

まとめ

本日は超音波に頼らない胎児の性別判定についてご案内しました。ちなみにこれらの方法には当然科学的根拠が無いため、やるとしてもあまり期待せず、飽くまで楽しむ程度にしていただけると幸いです。ちなみに私が以前ミャンマーで働いていた時に、現地の人から「男性の睾丸が右の方が大きければ男の子、左の方が大きければ女の子が最初の子の性別です」と言われたことがありましたが、半信半疑でそこにいた子持ち男性4人に確認したところ、精度100%で合ってました。ご参考までに。

参考文献
1) https://www.benri.jp/calendar/umiwake

アリナミンVは妊婦さんも飲用可

つわりは妊娠初期の悪心・嘔吐症状があり、半数以上の妊婦さんにみられます。

ある程度飲食が可能なら、点滴までいかずとも栄養ドリンクに頼ってみるのも一手かもしれません。例えば、『アリナミンV』は妊婦さんも飲用可能です。実はアリナミンは商品名で点滴に添加する注射用製剤もあり、医療スタッフもよく見聞きするものです。

アリナミン®︎の一般名は『プロスルチアミン』で、適応として『ビタミンB1欠乏症の予防』があります。体重減少、脱水などを呈する妊娠悪阻において、また電解質異常を伴っていればアリナミンを妊娠初期に補充するのは理にかなっています。

当院ではつわり・悪阻に対する点滴にメタボリン®︎を添加しています。これはチアミン塩化物でビタミンB1製剤となり、プロスルチアミンと同様のビタミンB1・B1誘導体です。

コンビニエンスストアやドラッグストアで売っているこのような栄養ドリンクを選ぶポイントとしては、成分表とともに[効能・効果]を確認してください。「妊婦授乳期または産前産後等の栄養補給」と表記されていれば選んで飲用可能です。一方、商品名が似ていてもカフェインが高濃度に含まれている物は妊婦さんにとって好ましくない物もあるので注意してください。

アリナミンVの他、妊娠中に飲用可能な栄養ドリンク

執筆 院長

男性にも更年期障害があるってご存知ですか?

こんにちは、副院長の石田です。

当院では普段から更年期障害を心配している女性が多く受診されます。女性の更年期というと、ホットフラッシュや発汗といった血管運動障害だったりイライラ、ウツウツなどの精神症状が一般的によく知られていますが、実は似たようなことが男性にも起こるのをご存知でしょうか?実際、少子高齢化が加速度的に進む日本では一つの社会課題としても認識されており、昨年6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針 2025(骨太方針2025)にも小さく明記されています 1)。そこで本日は、当院の患者さんたちに直接関係はないんだけど、男性の更年期について少し解説してみたいと思います。

男性更年期障害とは

医学的には「加齢男性性腺機能障害」や、英語の”late-onset hypogonadism”の頭文字をとって「LOH症候群」と呼ばれたりします。男性ホルモンはそのほとんどが精巣で作られ、認知機能や性欲、筋肉量、排尿機能などを増加させます。思春期から20歳頃までに急激に分泌量が増加し、その後加齢とともにゆるやかに減少していくのですが、それとともに代謝や活動性、性欲などが減少して、いわゆる「男性更年期」と呼ばれる状態になるのです。実際の症状としてはほてりや倦怠感、イライラ、ウツウツ、性欲低下などが代表的です。診断は症状があることを前提ですが、血液検査では総テストステロンが250ng/dL未満、遊離テストステロンが7.5pg/ml未満が基準となります 2)。ただし注意点として、一般的にテストステロンは日内リズムがあるとされていて朝にピークとなるため、午前7〜10時頃の採血が推奨されます 3)。(ただし、高齢男性では日内変動が鈍化していることから、あまり気にしなくてもよいのではないかという議論もあります 4)5)。)

男性更年期の治療

必要に応じて女性と同様、ホルモン補充療法が選択されることがあります。男性ホルモンの注射やクリームを自分で塗ったりしますが、心不全や前立腺がんなどがある場合は使うことができません。また、日本では漢方を使うこともありますが、使われる薬は女性医学の三大漢方と呼ばれる当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸をはじめとして、いわゆる女性の更年期障害で使用されるものと興味深いことにかなり共通します。そのほか薬に頼らない方法としては、これまた女性と同様で質の良い睡眠、適度な運動、バランスの良い食事といった“丁寧な暮らし“が勧められています。

まとめ

本日は男性更年期障害について簡単に解説してみました。このブログを読んでくださっている女性の皆様におかれましては、「私、いよいよ更年期かしら…。」と思ったら少し周りを見渡してみましょう。意外と男性も同様に苦しんでいるかもしれませんよ。でもさすがに婦人科で男性更年期障害の診療をするのはちょっと違うかもなので、お悩みの男性はお近くの泌尿器科か内科にご相談ください。

参考文献
1) 経済財政運営と改革の基本方針 2025について
2) 日本泌尿器科学会/日本メンズヘルス医学会. LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き
3) Ezgi Caliskan Guzelce, et al. Best Pract Res Clin Endoclinol Metab. 2022 Jul;36(4):101683.
4) N Long, et al. J Fam Pract. 2015 Jul;64(7):418–419.
5) E David Crawford, et al. Curr Med Res Opin. 2015;31(10):1911-4.

無痛カクテル

当院の無痛分娩体制において、昨年(2025年)冬から大きなアップデートがありました。

無痛分娩で使う痛みどめは局所麻酔薬です。局所麻酔薬は使えば使う程中毒を起こす可能性があるので、時間あたりどの位まで使用する、と量を定めています。鎮痛効果は痛みどめの量が要因として大きいのですが、安心安全なお産が当然ながら第一なので、無痛分娩は「痛みを取りつつ副作用を減らす」工夫が必要となります。

当院では母体安全の提言やJ-MELSの硬膜外鎮痛急変対応コースをふまえ、局所麻酔薬に少量の麻薬を添加する『無痛カクテル』を導入しました。

無痛カクテルとは医療麻薬、「フェンタニル」を添加した麻酔レシピのことです。現在最も一般的と考えられるレシピは

『局所麻酔薬の0.1%アナペインに医療麻薬のフェンタニル2μg/mLを追加したもの』になります。

医療麻薬を添加することで、局所麻酔薬単体より濃度を10分の1まで薄めることができます。局所麻酔薬の濃度を薄めることができると中毒発症の可能性を減らせたり、足の動きの制限が減るので血栓塞栓症や転倒のリスクも減らす事ができます。

また医療麻薬の添加により、お産間際の体性痛(児下降による主に骨の痛み)の鎮痛をより期待できるほか、無痛カクテルの導入例では局所麻酔薬単体例に比べ、当院では児の回旋異常率が圧倒的に減りました。また麻酔の片効ぎも減り、無痛分娩の質が上がっていると感じています。

医療麻薬に関して在庫の確保が昨年まで難しかったのですが、現在は安定確保が可能となりました。以前当院で無痛分娩を経験された方は、アップデートされた無痛分娩体制により、鎮痛効果をさらに感じることができるかもしれません。

執筆 院長

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)について

こんにちは、副院長の石田です。

妊婦健診では母子の健康を守るために様々な検査を行いますが、中には普段見慣れないものもいくつか含まれていると思います。HTLV-1なんかはまさにその代表的なものですが、一体この項目はどういった理由で計測されているのでしょうか?そこで本日はHTLV-1について少し解説してみたいと思います。

HTLV-1とは

“HTLV-1“は頭文字なので、これを正式に記述するとHuman T-cell Lymphotropic Virus type 1というウイルスです。日本語だとヒトT細胞白血病ウイルスI型という名前ですが、これはこのウイルスの名前の中にある“L”に“lymphotropic“ではなく白血病を意味する“leukemia“を使うことが日本では多いため、そのせいかと思います。感染者は世界中で1000〜2000万人と推計されていますが、九州・沖縄を中心とした日本の南西部地域はエンデミックが起きている地域として世界的にも有名です 1)2)。文字通り白血病やリンパ腫をはじめ、脊髄症やぶどう膜炎(眼病)の原因となることが知られている一方で、90%以上の感染者は死ぬまでこのウイルスによる病気を発症しません。また、これらの病気になるとしても、感染してから発症まで20〜30年程度の時間がかかると考えられています 3)。血液や体液を介して感染するため、感染経路は性交渉や注射針を中心とした針刺しに加え、授乳なども挙げられます。

HTLV-1への感染が分かったら

当院では母子手帳を使用する初めての妊婦健診で他の項目と一緒に血液検査をします。これで陰性となる場合は問題ないのですが、陽性と出た場合はさらに確認検査を行い、再度陽性となったら感染が確定します。残念ながらこのウイルスには妊娠の有無に関わらず確立した治療法はないため、赤ちゃんにうつさないことが唯一の対策となります。前述の通り母乳育児は感染経路の一つですが、授乳期間が長いほど感染率が高くなるとされており、長期で授乳した場合は15〜20%程度となる一方で、短期で授乳した場合や授乳をせず粉ミルクで育児した場合は5%を切るくらいというデータがあります 4)5)6)。そのため産後90日以内に卒乳するか、あるいはより確実に感染リスクを下げるという観点から初めから母乳を与えないという方法を取ることもガイドライン上は勧められています 7)。ただ、それでも5%前後の赤ちゃんでは感染してしまうため、その場合には小児科との連携のもとで慎重に対応することが求められます。

まとめ

本日は聞き馴染みのないHTLV-1というウイルスについて解説してみました。ウイルス自体は世界中に分布していると考えられてはいるものの、妊婦さん限定とはいえスクリーニング検査を実施しているのが日本だけということもあり、実際の感染規模や状況は未知の部分が多いとされています。また、前述の通り日本の南西部で感染率が高い一方で、現在はそれ以外の地域でも感染者が増加しているとされていることにも注意が必要です。ただ、感染していても生涯それによる病気に発展しないことの方が多いので、感染が判明した方におかれましては慌てずに主治医へ相談してみましょう。

参考文献
1) Greta Forlani, et al. Int J Mol Sci. 2021 Jul 27;22(15):8001.
2) E Eusebio-Ponce, et al. Rev Esp Quimioter. 2019 Dec;32(6):485-496. Epub 2019 Oct 25.
3) Denise Utsch Goncalves, et al. Clin Microbiol Rev. 2010 Jul;23(3):577–589.
4) K Takahashi, et al. Int J Cancer. 1991 Nov 11;49(5):673-7.
5) Kazuo Itabashi, et al. Pediatr Int. 2021 Mar;63(3):284-289.
6) Tokuo Miyazawa, et al. Viruses. 2021 May 1;13(5):819.
7) 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン 産科編. 2023:CQ612