ミレーナについて

最近、テレビによる効果かミレーナ®についてのご質問が多く、ブログに載せることにしました。

ミレーナ®はレボノルゲストレル放出子宮内システム、いわば黄体ホルモンを放出する子宮内デバイス(器具)です。

ちなみに、『レボノゲストレル』は緊急避妊薬としても使われる黄体ホルモンです。なお先日ピルについてのブログ投稿でも書かせていただきましたので、是非とももう一度いただければと思います。

ピルについて

現在日本ではミニピル、いわゆる黄体ホルモン単独のピルが、緊急避妊薬以外には用いることができないため、血栓のリスクを理論上さげるためには、このミレーナが有効と考えます。

治療の適応は過多月経月経困難症となります。

自費診療として避妊目的にも使用可能です。

参照サイトhttps://whc.bayer.jp/mirena/mirena/index.html

にしじまクリニックではご来院後にまず問診、その後外来診療でエコーによる子宮の評価、性感染症がないかどうか等をチェックさせていただきます。可能なら子宮がん検診もお勧めします。それらの結果で異常ないことを確認した後、子宮内へミレーナ®を挿入します。

挿入装着時期は月経開始後1週間以内を目安にしてください。

ミレーナ®の使用を開始してから数ヵ月間3ヶ月が目安)は月経時期以外の出血がみられことがあります。 しかし、通常は時間の経過とともに減少します。

装着後は定期的な診察・受診をお願いしています。装着留置期間は5年間です。

装着希望の方の注意点として、『子宮は筋肉による蠕動運動がある』ことがキーポイントになります。せっかく良い位置に挿入しても後にミレーナ®︎の位置が下降てしまうことがあるのです。よって、分娩後6週未満の方は装着を控えていただきます。子宮復古のため、オキシトシンという体内ホルモンによる子宮収縮が起こり、装着後のずれや子宮穿孔のリスクがあるからです。

気になる点ございましたら、私院長もしくは副院長石田にご相談ください。

今後ますます、経験のみならず正しい知識とエビデンスを活用し、できるだけ皆様の気持ちに寄り添える診療をしていく所存です。一緒にお悩みを解決していきましょう。

参考文献;

バイエル薬品株式会社 Web conference(2019年11月21日)

Essential obstetric and newborn care, 2015 edition

小さい子供のおりもの異常について

こんにちは、副院長の石田です。

たまに私生活や外来のついでなどでお子さんのおりものに違和感を感じるというお母さんたちから相談を受けることがありますが、実は女児の婦人科的な訴えとしては最も多い症状と言われています 1) 。実際には小さい子供の異常なので受診するとしても小児科が多いと思うのですが、小さくても女性のお悩みということで本日は産婦人科医がお話ししてみようと思います。

小さな子におりものの異常が発生する要因

多くの場合は感染性腟炎といってばい菌が腟で繁殖した結果炎症が起こっているようです。そうなりやすい要因としては、大人の女性との性器の形態的な違いやトイレ後の清潔、また女性ホルモンの量などの影響が考えられています。具体的には子供は腟と肛門の距離が近く汚染されやすい、うんちした後にお尻を拭いた結果技術的に未熟なためうんちが腟に付着してしまう、あるいはトイレットペーパーの切れ端が腟内に入ってばい菌が繁殖する温床になってしまう、女性ホルモンが少ないため腟内を雑菌から守るための乳酸菌が未熟などです 2) 。その他の例外として性病がありますが、これはほとんどの場合性的虐待によるものです。外性器に傷があっておりものも変な時は性病を疑って検査したり、状況次第では医療施設から児童相談所などに通報することもあります。

実際の治療

まずは生活における指導などが中心となります。具体的にはお風呂の時にしっかりとシャワーで流すこと、入浴剤などは避けること、キツすぎる下着などは避けるなどがあります。抗生剤に関しては小児に使用することの不利益も多く報告されているため安易に使用することはありませんが、はっきりと病原菌として言い切れる原因菌が特定できた場合には使用がお勧めされているということでした 3) 。

まとめ

おりものの異常と言うと小さな女の子にはあんまり関係ないような印象もあるかもですが、上記のように意外にばい菌が入りやすかったりします。思春期以降の女性と違い腟内の細菌のバランスに関するデータが少ないため検査をしても結果の判断が難しかったりしますが、もし変かな?と思うことがあれば試しにお近くの小児科や産婦人科へご相談ください。男の子と違って清潔を保つのが難しい部位ではありますが、何にしても予防が一番ということで、普段からご両親が気を配ってあげるのがとても大切なようです。

1) A Jaquiery, et al. Arch Dis Child 1999; 81: 64-67

2) Neyazi SM. J Nat Sci Med 2019; 2(1): 14-22

3) Manohara Joishy, et al. BMJ 2005; 330: 186-188

ピルについて

月経(生理)のある動物はそう多くはありません。ご存知でしたか?

ヒト、女性は通常月1回生理が起き、痛みや症状が伴うストレスは男性と比べ計り知れません。昔と比べ、現代の女性は出産回数が少ないです。ということは月経の回数も多いことになります。

そこでピルのお話、となってきます。初めてピルが使われたのは1960年代となります。21日内服し7日間休薬するタイプで、これは内服コンプライアンスの関係から、要するにカレンダーで合わせた飲み方ということになります。月1回の出血があれば安心するという方々がいらっしゃるのも事実です。しかしながら、ある研究結果から、月1回の生理は医学的に健康と関係なく、No health benefitであるということがわかっています。

それであれば、できるだけ生理の回数が少ない方が良いとの考えで、最近は120日間連続内服するピルも使われてはじめています。実際、にしじまクリニックでも処方することが多いです。

ピルはLEPやOCと呼ばれます。

LEPとはLow dose Estrogen Progestin、いわゆる月経困難症や子宮内膜症などの疾病に対して使うピルを指します。よって保険適応となります。避妊目的には使用しませんが、結局のところ服用中は基本的に妊娠はしません。

避妊目的に用いるピルがOCでOral Contraceptiveと呼ばれます。

ちなみに妊孕性(妊娠)については、LEPおよびOCを中止すれば可能です。

日本ではLEPもOCも『エストロゲン+黄体ホルモン』のコンバイン製剤なので、あとはエストロゲンの濃度や黄体ホルモンの種類に製剤の違いがあります。

今回は保険適応となるLEP製剤を説明します。以下3種類を私院長と副院長は処方します。

・ルナベルULD:エチニルエストラジオール(以下EE)+ノルエチステロン(第1世代)

・ジェミーナ:EE+レボノルゲストレル(第2世代)

・ヤーズフレックス:EE+ドロスピレノン(第4世代)

現在はエストロゲン系、いわゆるエチニルエストラジオール(EE)の濃度を少なくし、血栓症や乳がんのリスクを減らそうとする製剤が選択されます。ちなみに、EEは卵巣から直接分泌されるエストラジオールとは異なり、採血で反映されない外因性のものです。EEはエストラジオールの4〜8倍活性があり、よって50歳以上の方はエストロゲンの活性ありすぎて血栓症のリスクが高く、原則使用禁止がうたわれています。

また、黄体ホルモン中に含まれるアンドロゲンを減らすことで脂質プロファイル悪化、体重増加、多毛、ニキビを減らすことができます。世代が上がる程アンドロゲンが少ないのです。また、ドロスピレノンは月経前症候群(PMS)の効果が期待できるとされています。

黄体ホルモンの中で『レボノルゲストレル』は緊急避妊薬や子宮内デバイスのミレーナ®に使用されることを知っておいてもよいかもしれません。

他国ではミニピルと呼ばれる、黄体ホルモン単独のOCがあり、ドロスピレノン単独のOCは血栓症のリスクをさらに減らすことができます。残念ながら日本では内服薬に関してはそれがないので、血栓症のリスクを減らすためには

・ピルを中断する回数を少なくする

・OC単独の血栓症リスクに比べ、喫煙者がOC内服によりは約2.5倍以上増加することを理解してもらう(だから喫煙者は処方控えさせていただきます)

・前兆を伴う片頭痛もちの方は禁止

などの条件を確認しつつ私たちは処方しています。

あと、都市伝説(?)的なものとして、太りやすい、浮腫みやすいのでは、とのご質問をいただきますが、LEPおよびOCは代謝を上げるため太りませんし、浮腫みません。これは信頼できるエビデンスを提供するコクランレビューにも明記されています。

OC服用者は将来の子宮体癌、卵巣癌、大腸癌リスクを減らします。

子宮頸癌の予防ははワクチンで、適応年齢が過ぎているならがん検診を欠かさずお願いします。

ピルは欧米ではLife design drugsとも呼ばれます。月経に伴う症状が辛くて学業に支障が出たら困りますよね?またピルは女性アスリートにも用いられる薬なのです。

月経でお困りの場合はご来院いただき、私院長もしくは副院長へご相談ください。

参考)

OC・LEPガイドライン

第8回埼玉県女性医療フォーラム

今日の治療薬

Essential obstetric and newborn care, MSF book 2015 edition

二日酔い

こんにちは、副院長の石田です。

皆さんはお酒は好きでしょうか?楽しい気分になるとついつい飲みすぎて次の日にしんどい思いをしてしまう人も多いかと思いますが、そもそも二日酔いってなんで起こるんでしょう?というわけで今日はそんなお話です。

二日酔いとは

二日酔いとは大量の飲酒の翌日に起こる精神的、肉体的な症状のことで、血中アルコール濃度が0に近づくときに起こるとされています 1)。二日酔いは間違いなくお酒が原因で起こるわけですが、実はその実態はまだ解明されていません。アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドが原因物質として有名ですが 、実際にはそれだけでは説明できないメカニズムが疑われています。二日酔いになりやすい人となりにくい人がいることが知られていますが、ある研究ではアルコールに弱い人は強い人と比べて免疫力も弱い可能性が示唆されています 2)。

二日酔いの体に対する影響

二日酔いは精神、運動両面に影響が出るというデータがあります。具体的には発電所での複雑な機械作業を行う作業員や車の運転手を対象にした研究でエラーが出やすくなるという結果が発表されています 3)4)。また、ラグビー選手を対象とした有酸素運動能力の評価やスキー中の事故の発生率などでも悪影響が見られたということでした 5)6)。そのほか倦怠感、精神的不安定さなどの気分変調も報告されていますが、これらに対して対症療法的に治療を行うというのが現在の治療戦略として一般的なのだそうです 7)。

二日酔いの治療法

「治療戦略として一般的」とか上で言っておきながら気まずいんですが、確立した治療法は現在のところありません。吐き気や頭痛にはお薬でいくぶん対応できるものの、実際にはひたすら嵐が過ぎるのを耐えて待つというのが根本的な治療になります 8)。ただ、予防法で言うならお酒を飲んでいる最中にたくさんお水を飲むことが大切とされています。これはエタノールが抗利尿ホルモンの働きを阻害するため飲酒による排尿とともに脱水状態になるのでそれを予防するのと、お酒の間にお水を挟むことで総飲酒量が減ることが期待できるからです。

まとめ

アメリカの疾病予防管理センター(CDC)の試算では、二日酔いは年間に1790億ドルもの社会的損失を生み出しているそうです 9)。時には二日酔いも楽しいパーティーの後の醍醐味かもしれませんが、是非適度な水分を摂りながら楽しむようにしてください。ちなみに映画:ハングオーバー!はコメディ好きならお勧めです。

1) Van Schrojenstein Lantman M, et al. Current Drug Abuse Reviews, Volume 9, Number 2, 2016, pp. 148-154

2) Aurora J.A.E. Van de Loo, et al. Int J Environ Res Public Health 2018 Jun: 15(6): 1286

3) Rohsenoe D.J. , et al. Journal of Studies on Alcohol, 67(3), 406-415

4) Vester J.C., et al Psychopharmacology, 231(15), 2999-3008

5) O’Brien C.P. Sports Medicine, 15(2), 71-77

6) Cherpitel C.J., Journal of Studies on Alcohol, 59(2), 216-221

7) Marith van Schrojenstein Lantman, et al. Hum Psychopharmacol. 2017 Sep; 32(5): e2623

8) Vester J.C., et al. Curr Drug Abuse Rev. 2010 Jun; 3(2): 103-9

9) Marilou Markus Curr Drug Abuse Rev. 2017; 9(2): 106-112

若い世代のライフデザイン構築支援事業

先日、埼玉県少子化対策事業(https://www.pref.saitama.lg.jp/a0607/r1_lifedesign.html)の一環として、学生さん方がにしじまクリニックへ見学にいらっしゃいました。

施設見学はもちろん、産後の様子を身近に感じてもらうため沐浴を間近で見てもらったり、私院長からは妊娠に関わる基礎知識を、両親学級の一部から説明させてもらいました。

学生さん方は、そもそも産婦人科にかかったことがなかったため、赤ちゃんを見るだけでも刺激があったようです。

このような事業があるのは大変素晴らしいことだ思います。埼玉県としてもまだ始まったばかりの取り組みなようです。若い世代が自身のライフプランを描きやすい環境を構築するため、行政のみならず私たち産婦人科医療従事者もバックアップできればと思います。まずは女性に関わるお悩みを気軽に相談しにいける場が必要なのでしょう。クリニックの規模だからできることがありそうです。このブログもその一助になれば良いですね。