あけましておめでとうございます、副院長の石田です。今年もよろしくお願いします。
年末年始で食べすぎてしまった方もいる反面、今回は『つわり』について投稿しようと思います。
妊娠初期の方の共通した悩みはつわりですね。食欲低下、嘔気、嘔吐はイメージにあると思いますが、その他頭痛や唾液量の増加、眠気など人によって様々な症状が出ます。何でせっかく妊娠したのにこんな苦行を強いられるのかと元気な旦那さんを横目に理不尽さを感じている世の女性も多いかと思います。
つわりとは何なのか
人によって程度の差はありますが、何らかのつわりの症状を呈する妊婦さんは全体の50〜80%くらいと見積もられています。特に3%くらいの妊婦さんでは健康に支障を来すような体重減少や脱水症状になる妊娠悪阻という状態まで発展することがあります。個人差も去ることながらマクロで見るとアジア人と中東人で特に多いと言われていて、中国の統計では10%の方が妊娠悪阻に罹るというデータもありますが、実際のところつわりと妊娠悪阻の境界線は曖昧で、国際的に統一された診断基準があるわけではないため実態は不明です。ただ、共通した認識として若年、初産婦、有色人種などがリスクファクターになると言われています 1)。その他うつ病の人は重症化しやすいとか、ホルモンが関係しているとか、ピロリ菌や遺伝子的な関連も示唆されていますが決定的なことはほとんど分かっていないようです 1)2)3)。
つわりの治療
嘔気に対して吐き気止めのお薬を出すこともありますが(欧米では対抗癌剤用の強いやつを使うこともあります)、妊娠が根本原因なので結局治療は対症療法のみです。中には分娩までずっと気持ち悪さが残る人もいますが普通は妊娠中期頃には良くなってくるのでじっとそれを待つことになります。最も気をつけなければいけないのは脱水で、生命維持に必要な水分やミネラル、ビタミンなんかが足りなくなってしまう時は点滴をして補います。また、ビタミンB6が症状を和らげるというデータもあるためご相談の上で処方することもあります。個人でできることとしてはショウガが吐き気を減らすのに効果があると言われているので試してみるといいかもしれません(食べられればだけど。)4)5)。
まとめ
というわけで分からないことだらけのつわりのお話でした。周りの人からは「つわりなんて皆乗り切ってるんだから頑張って!」とか言われるかもしれませんが、本人からしたら「そんなの分かってるけど他人とか関係なく私は今しんどいんだよ!」というのが本音でしょう。私たちから言わせるとつわりの症状の重さやそれぞれの妊婦さんの耐性は様々であり、人と比べてどうとかいう話ではありません。当院では患者さんの症状とご希望に応じて外来での処方、点滴から入院まで柔軟に対応できますので、特にかかりつけの方はお気軽にご相談いただければと思います。
最後に
私の奥さんは妊娠中に出産まで吐き気が抜けず辛そうにしていました。初期に唐揚げは食べられたのでずっとそればかり口にしていたのですが、生まれた子供が3歳くらいになった時に初めて唐揚げを食べさせたところ、「ぼく、この味知ってる!」と言い出してびっくりしたことがあります。知り合いのところもリンゴで同じ現象が起きたと言っていました。本当に関係があるのかは分かりませんが、今つわりで苦しんでいる皆さんにも近い将来にそういうこともあるかもしれませんので苦しい中でもそれを楽しみにして食べられるものを探してみてはいかがでしょうか?
1) London V, et al. Pharmacology. 2017; 100(3-4): 161-171
2) Grooten IJ, et al. Am J Obstet Gynecol 2017; 216: 512. e1-e9
3) Li L, et al. Gastroenterol Res Pract 2015; 2015: 278905
4) Viljoen E, et al. Nutrition J 2014; 13: 20, 2891-13-20.
5) ACOG Practice Bulletin. Number 189, January 2018