帝王切開術後に麻酔の影響で頭痛を訴える方がいます。これは
硬膜穿刺後頭痛(PDPH: PostDural Puncture Headache)
といい、帝王切開の麻酔である脊髄くも膜下麻酔において
麻酔針が硬膜を穿刺通過するため、その穿刺口から脊髄液が流出することから起こります。
従来のクインケ・ランセット針は穿刺痕が鋭い切り口となります。そのため穿刺のしやすさから多くの施設でこの針を採用されている一方、PDPHが少ないですがある程度一定の割合で発生してしまうのがデメリットでした1)。
そこで、にしじまクリニックでは新たに『ペンシルポイント針』を採用することにしました。
ペンシルポイント針は外相的な切り口となります。
PDPHの発生率は
・クインケ23Gで4.6%
・クインケ25Gで3.6%
なのに対し、
・ペンシルポイント25Gで0.79%
・ペンシルポイント27Gで0.09%
(G:ゲージ。Gの数が大きいほど針は小さい。注射針も同様です)
と圧倒的に頭痛発生率を抑えられます。
既に手技としても従来と問題ないことを確認し、当院では選択帝王切開術で用いています。
先ほど「クインケ針は鋭針で穿刺しやすい」と述べましたが、
ペンシルポイント針は逆に穿刺時前後の負荷の差が大きい分、硬膜を穿刺する感覚がわかりやすく、「ブラインド」手技である麻酔穿刺において解剖学的特徴が得られ良い事だと感じています。
(超緊急帝王切開の場合等は従来のクインケ針で行う場合があります)
にしじまクリニックでは年々手技のアップデートに努めています。ご質問があれば外来でお気軽にお声かけください。
(院長執筆)
参考文献
1) Post dural puncture headache. UpToDate.