性交痛(セックスの痛み)について

こんにちは、副院長の石田です。

産婦人科ではよくセックスの痛みについてご相談を受けますが、プライバシーに踏み込んだ内容なので周りにも相談しにくいでしょうし、もしかしたら「相談する」という選択肢が無い方も多いかもしれません。しかし性交痛は統計に出るだけでも1%以上の女性に発症しており、潜在的な患者さんも含めるとかなり多くの方のお悩みになっている可能性があります 1)。そこで本日は性交痛とその診察について解説いたします。

性交痛の原因

性交痛と一口に言っても原因疾患は多岐にわたります。その中でも臨床現場で遭遇する頻度が高いものでは感染症や子宮内膜症が挙げられます。感染症で多いのはカンジダというカビ菌の繁殖によるものですが、こちらでは主に陰茎が腟に挿入された時に痛みを感じやすいのと、それとは別に強力な痒みやカスのようなおりものを伴うのが特徴的です。一方で淋病やクラミジアなどの性感染症が原因になる場合もありますが、どちらかというとその場合は深いところで炎症が起こるため腟の奥で摩擦された時に痛みが出ることが多いとされています。また、月経痛の原因としてもよく知られている子宮内膜症では子宮や卵巣の周りに癒着という炎症性の“ひきつれ“が起こるため性交時にそれが強い痛みが出る原因となります。他には抗アレルギー薬による粘液の減少や、乱暴な性交渉での外傷、パートナーとの関係不良や性暴力被害の経験が原因での心理的影響なども比較的よく見かけます。

対処方法

もちろん婦人科を受診するのがベターですが、もし自分で対処してみたいと思うのであれば薬局などで販売している潤滑ローションを使用してみると良いかもしれません。特にお勧めのブランドとかはありませんが、お二人の肌に合うものを選んでみましょう。また、巷で言われるスローセックスを試してみるのもありです。これに関してはネットとかで検索しても色々出てくると思いますが、端的に言うとあまり動きすぎずに挿入後もゆったりと時間を使うイメージです。経験的にもこの二つを患者さんにお勧めすると改善を認めることが多いので、試してみる価値はあると思います。

まとめ

と言うわけで、超簡単にではありましたが性交痛についてお話ししました。実際の診察ではより細かく状況を伺ったり、いくつかの検査を組み合わせてより広範囲の疾患群から診断を探っていく作業になります。ただ、性交痛に関してはそもそも原因が特定できないことも多く、できたとしても治療に時間がかかることもしばしばです。そのため必ずしも婦人科を受診することで全部うまくいくようなスッキリとした話ではありませんが、お悩みの方は試しに相談してみていただければと思います。

1) Hayes RD, et al. J Sex Med. 2008 Apr;5(4):777-87