高血圧の対処法

こんにちは、副院長の石田です。

当院は町の一次医療施設ということで中高齢の女性も多くいらっしゃいますが、そんな中で患者さんたちの既往症としてよく見られるのが高血圧症です。血圧が高いと体中の血管や臓器に負担がかかるため良くありませんが、皆さんは健康的な血圧の維持のためにどのようなことに注意するべきかご存知でしょうか?運動、食事など何となく頭に浮かんでくるとは思いますが、その一方で具体的な方法論に関してご存知の方は結構少ないので、本日はデータを見ながら解説したいと思います。
※ちなみに本日は妊娠中の高血圧症ではなく、一般的な生活習慣病としての高血圧症のお話です。

そもそも高血圧症とは

病院で計測した血圧が140/90 mmHgを超える場合は高血圧症と診断されます。高血圧の病態は様々ですが、最も多いのは本態性高血圧といって腎臓病や腫瘍などの明らかな原因がなく発症した高血圧で、高血圧症全体の約95%を占めるとも言われています 1)。みなさんご存知の通り、高血圧が続くと心不全や脳卒中、心臓発作や腎不全などの原因となるため診断がついた場合は適切な管理が必要です。ちなみに令和元年の国民健康・栄養調査(厚生労働省)によると日本では20歳以上で収縮期血圧が140 mmHgを超えている人の割合は男性で29.9%、女性で24.9%とされており、多くの方が健康上のリスクを抱えていることが分かります 2)。

血圧改善のために気をつけるべき生活習慣

生活習慣の見直しは血圧の改善効果があることが知られていますが、実際に心がけることとしては肥満解消、健康的な食生活、運動、ストレスの緩和などが挙げられます 3)4)。
順番に触れると、まず減量に関してはBMIで18.5〜24.9を維持するように気をつけましょう。食生活はDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension:高血圧を防ぐ食事方法)という果物・野菜・食物繊維を豊富に含む一方で脂肪と塩分を抑えた食事や、飲酒量の制限が推奨されています。運動に関しては筋トレよりも有酸素運動が効果的と考えられていますが、運動量としては週3日以上、1回50分以上ということで結構大変そうですね。また、ストレス解消には1日2回、1回20分の瞑想が有効ということですが、どうでしょうか…?ちなみにこれらの中で最も効果的なのは2011年の報告によると減量で、10kgの減量ごとに最大20 mmHgの降圧効果が見込まれるということでした 5)。

まとめ

というわけで本日は高血圧症に対する生活習慣の改善に関してのお話でした。ある程度の年齢になってくると血圧が高い人が周りに増えてくるのでついつい自分も高くても油断してしまいがちですが、高血圧は万病のもとです。少子高齢化社会にあって日本の社会福祉制度の在り方についても見直しの必要性が叫ばれる中、いかに健康寿命を伸ばしていくかが今後はさらに大切だと考えられます。もう高血圧になってしまった方も、まだ自分は大丈夫と言う方も、ずっと元気でいられるように是非ご自身の生活習慣を見直してみましょう。
そして、繰り返しになりますが上記は生活習慣病としての高血圧症のことであり、妊娠高血圧症は違うアプローチが必要です。なので妊婦さんは安易に上記のような対策にはしらずに、主治医の話をしっかりと聞くようにしてください。

1) Oscar A, et al. Circulation. 2000;101:329-335
2)厚生労働省. 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf
3) Jinming Fu, et al. J Am Heart Assoc. 2020 Oct 20;9(19):e016804
4) Estefania Oliveros, et al. Clin Cardiol. 2020 Feb;43(2):99-107
5) S Susan Hedayati, et al. Kidney Int. 2011 May;79(10):1061-70