臨月に入ってからの過ごし方

こんにちは、副院長の石田です。

妊婦さんは初期のつわりに始まり様々なイベントを乗り越えて週数を重ねていきますが、36週に入るとついに「臨月」と言われる期間に入ってきます。医学的に正期産と言われるのは37週からで36週の間に生まれてしまうと早産児になってしまうのには注意が必要ですが、ともあれやっと最終段階に入ってきたかと感無量の人も多いのではないでしょうか?ここからはいつ陣痛や破水が始まるかとドキドキしながら過ごす時期なわけですが、よく外来で聞かれるのは「どうやって過ごしたらよいですか?」というご質問です。そこで本日はこのことについてお話ししてみたいと思います。

陣痛が早く始まるためにはどうしたらよいですか?​

これ、本当によく聞かれます。インターネットで調べると一番出てくるのは「どんどん体を動かしましょう」みたいなご提案だと思いますが、実際にかかりつけの産婦人科でこのように言われることも多いですよね。でも実際は運動と陣痛発来の関係性はあるともないともどっちの意見もあってよく分かっていません 1)2)。また、鍼やマッサージに行く方も少なくありませんが、こちらの効果は否定的とされています 3)。運動は分娩や産後のコンディションによい影響が知られていますし、鍼やマッサージもご本人がリラックスや気分転換ができるのであればむしろ素晴らしいことですが、陣痛が早くくるようにという目的であればあまり期待しすぎない方がよいかもしれません。

ではどう過ごしたらよいのか

私はこのご質問に対して決まって「ご本人が楽しく過ごせてればよいと思いますよ」とお伝えしています。予定日が近づいてくると周りからも「いつなの?」とかプレッシャーがかかるかもしれませんが、陣痛がいつくるかは誰にも分からないし、焦ってもどうにもなりません。であればお産の時にかけたい曲のプレイリストを作ったり、赤ちゃんが生まれたら一緒に行きたい公園を調べたりしてのんびり過ごすのがご家族にとってリラックスできてよいと思うわけです。出産後はしばらく行けなくなるからその前に外食を楽しんだり、上のお子さんがいれば今のうちに「赤ちゃんが生まれたら時間が取れなくなるかもしれないけど、それでもあなたのことが大好きだよ」って伝え続けてあげるのももしかしたらよい過ごし方かもしれません。なんで私がこんなエモいご提案をするかというと、出産に対する恐怖が強いと陣痛をより強く感じるというデータがあるからです 4)5)。なのでこの時期にお産に対してより前向きになれるような環境を整えることは、陣痛に神経を尖らせるよりもずっと大事だと思うんですね。

まとめ

というわけで本日は臨月の過ごし方に対するご提案でした。別に正解がある話ではないので皆さんの思うように過ごしていただくのが最良ではあるのですが、もしこのブログ記事が気を張り過ぎてしまっているお母さんの緊張を少しでも取れたなら幸いです。もちろん予定日を過ぎすぎてしまうと誘発分娩となることもありますが、ルートはどうあれ陣痛は必ず迎えることになります。いずれにしてもお産は長時間の高負荷運動ですので、是非しっかり体と心を整えて来たるべき日に備えていただければと思います。

1) N Fox, et al. The Internet Journal of Gynecology and Obstetrics. 2006;8(1)
2) Isabel Barros Pereira, et al. J Matern Fetal Med. 2022 Feb;35(4):775-779
3) Caroline A Smith, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Oct 17;10(10):CD002962
4) Carolin Junge, et al. Birth. 2018 Dec;45(4):469-477
5) Y Deng, et al. Int J Nurs Sci. 2021 Oct 10;8(4):380-387