こんにちは、副院長の石田です。
よく妊婦さんに聞かれる質問の一つが「歯医者さんを受診していいですか?」というものです。これに関しては妊婦さんたちが心配に思うのはもちろんですが、妊婦さんの治療に慣れていない歯科の先生が少なくないことも混乱の原因になっているのかもしれません。そこで本日は妊娠中の歯科治療について簡単に解説します。
妊娠中と口腔環境
妊娠するとホルモンバランスの変化により歯周病原細菌が増殖しやすくなること、唾液の分泌が減少すること、つわりのせいで歯磨きがしにくくなることなどから一般的に妊婦さんは虫歯や歯周病になりやすいと言われていますが、妊娠中のお口の病気は早産や胎児発育不全が関係している可能性が示唆されています 1)2)3)。そのため妊婦さんは歯磨きなどのセルフケアだけでなく、歯科で検診を受けたり必要に応じて治療することが勧められています。
妊娠中の歯科治療
具体的な処置の詳細や安全性については歯科の先生にご相談いただければと思いますが、一般的に抜歯や虫歯の治療などの歯科治療は妊娠全期間において安全に行えるとされています 1)3)。歯科で広く使われている局所麻酔薬についても口腔内で使用される程度の量であれば問題になることはまずありません。また、歯や顎を撮影するレントゲンについても使用される放射線量は極めて微量であり、加えて遮蔽用のエプロンを装着していれば赤ちゃんへの影響を心配する必要もありません。「本格的な歯科治療は安定期に入ってからにしましょう」と提案されているネット記事もありますが、それ自体に医学的根拠はないので妊娠初期でも安心して検査や治療を受けていただいて大丈夫です。あえて言うと治療で使用する抗菌薬や痛み止めに関しては注意が必要ですが、処方された薬がご心配であればかかりつけの産科にご相談いただければと思います。
まとめ
本日は妊娠中の歯科受診について簡単に解説いたしました。上記の通りお口の健康は口腔内だけでなく全身の健康を保つのにとても重要な要素です。お産後には母親の歯周病が赤ちゃんの虫歯にも関係するかもという話もありますので、妊娠中も是非歯医者さんを受診していただければと思います 2)。
1) 産婦人科診療ガイドライン 産科編2020 CQ505
2) Kim A Boggess, et al. Matern Child Health J. 2006 Sep;10(5 Suppl):S169-74
3) National Maternal and Child Oral Health Center. Oral Health Care During Pregnancy: A National Consensus Statement: https://www.mchoralhealth.org/PDFs/OralHealthPregnancyConsensus.pdf