こんにちは、副院長の石田です。
普段外来をやっていても思うのですが、ご年齢や妊娠の有無に関係なく尿もれに悩む女性は多いです。人種や社会環境によってばらつきは大きいものの、実際に20〜40%程度の女性が尿もれを経験しているというデータもあり、どの女性にとっても他人事ではないのかもしれません 1)2)。そこで本日は女性の尿もれについて少しお話ししてみようと思います。
尿もれの種類
尿もれは医学的にいくつかの型に分類されますが、女性によくみられるのは腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁です。腹圧性尿失禁とは咳、くしゃみ、笑う、重いものを持ち上げるなどでお腹に力が入った時に尿が漏れてしまう状態で、原因としては膀胱の出口の開け閉めを行なっている括約筋の機能低下だったり、尿道を支える力が弱まってしまう尿道過可動などがあります。一方で切迫性尿失禁は突然強い尿意が出現し我慢できずに出てしまうというもので、膀胱炎や脊髄損傷などの原因により排尿筋が過剰に収縮する過活動膀胱が有名です。他には腹圧性と切迫性が混ざった混合性尿失禁というのもあり、女性においてはこれらの3種類が主な病態となります。
尿もれの治療
上記の通り尿もれの型によって原因が違いますが、いずれにしてもまずは生活習慣を見直すことである程度の症状改善が期待できます。肥満、喫煙はリスクとして知られているため適度な運動と減量、そして禁煙は尿失禁の症状改善に効果があると考えられています 3)4)5)。特にKegel体操という骨盤底筋群の強化に使われる運動はお勧めされますが、効果が出るまで2ヶ月前後かかるともされているため根気よく取り組む必要があります。また、アルコールやカフェインは症状を悪化させる可能性が指摘されているため心当たりがある方は試しに控えてみるのもいいかもしれません 3)。これらに加えて膀胱訓練などの行動療法や各患者さんの病態に合うと思われる薬剤を選んで併用することでできるだけ患者さんが快適に暮らせるように治療を進めていきます。
まとめ
本日は女性の尿失禁について解説してみました。尿失禁は加齢による肉体変化に伴って起こることも多く根治が難しいことも少なくありませんが、その一方で治療による改善は十分に見込めます。羞恥心を持ちやすい症状のためずっと一人で悩んでしまう方も多いですが、気軽に最寄りの専門医にご相談いただけると良いと思います。
1) Dragana Živković et al. Acta Clin Croat. 2022 Mar;61(1):115-123
2) I Milsom, et al. Climacteric. 2019 Jun;22(3):217-222
3) Mari Imamura, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Dec 2;2015(12):CD003505
4) Leslee L Sudak, et al. N Engl J Med. 2009 Jan 29;360(5):481-90
5) Riikka M Tähtinen, et al. Obstetric Gynecol. 2011 Sep;118(3):643-648