プライマリーサーベイ(Primary Survey)とは
外傷の救急初期診療では患者の生命を守るために、生理学的徴候の異常を迅速に評価し、直ちに蘇生を開始するアプローチを定めており、これをプライマリーサーベイ(Primary Survey)といいます。
現在、妊産婦における周産期救急初期治療においてもPSに基づいた対応が重視されています。
周産期救急におけるプライマリーサーベイの実際
患者に生命の危険性がある・重症である状態を覚知した場合(この時を「第一印象」と呼びます)、他のスタッフの応援を呼び、ABCDEFアプローチに沿って、患者のどこに問題があるのかを評価し対応していきます。
ここではABCDEFアプローチのうち、A(Airway), B(Breathing), C(Circulation)の重症と判断する状態とその処置・治療をご紹介します。
・Airway:気道の評価
気道が閉塞(声が出せない状態など)→気道確保
・Breathing:呼吸の評価
呼吸数、呼吸様式、酸素飽和度、聴診に異常あり。酸素投与でも改善しない→補助換気など
・Circulation:循環の評価
ショック状態→循環動態の補正:出血性ショックの状態なら輸血投与、
産後異常出血に応じた子宮収縮剤の投与や止血など
プライマリーサーベイの原則
・バイタルサインが表示される前に、患者のどこが重症なのかを系統立てて評価する。
例えばC(Circulation)では、血圧・脈拍を測る前に四肢末梢の冷感や湿潤がある、橈骨動脈を触知し脈が弱く早ければ「C」が重症と判断し、それを対処していきます。
・患者が急変した場合はA(Airway)から戻って対応する
・妊婦の心肺停止の場合、ABCDEFアプローチと並行して心肺蘇生、
(死戦期)帝王切開。通常の帝王切開と異なり、産婦(と新生児の)救命目的の死戦期帝王切開は一次施設等では完結できないため、その場合は質の高い蘇生(プライマリーサーベイと心肺停止時の対処を理解・共有し、妊婦の胸骨圧迫や人工呼吸が行える多くのスタッフの協力を得て)を行いながら高次施設へ紹介する。
ブログを読んでいただいている妊産婦さんやご家族は難しい内容かと思いますが、にしじまクリニックでは妊産婦さんや新生児の救命処置においては、やみくもに処置を施すのではなく、皆様の生命を守るためこのような系統立てた蘇生を全スタッフと共有しながら行なっている、とご理解いただければ幸いです。
執筆 院長