こんにちは、副院長の石田です。
年に何回か、産後健診でご両親から「うちの子、男の子なのにおっぱいがあるんですけど…。」とご相談をいただくことがあります。触ってみると少しコリコリしてて、ひょっとして何かの病気じゃないかとご心配になる方も少なくないでしょう。そこで本日はこの件について解説したいと思います。
女性化乳房とは
皆さんは女性化乳房という言葉をご存知でしょうか?乳汁を分泌するための乳腺組織は女性ほどではないにしても、実は男性の胸にも存在しています。この男性の乳腺組織が乳首を中心に増殖し、ゴムのような硬い塊として触れるようになるのが女性化乳房です。新生児から高齢者まであらゆる男性に発症するとされていますが、新生児に関して言うと統計的には65〜90%に女性化乳房が見られるとも言われており、比較的よくあることのようです 1)。
新生児の女性化乳房
新生児が女性化乳房になる理由は、主に子宮内環境が原因と言われています。ちょっと難しい話をすると、胎児の副腎から分泌されたデハイドロエピアンドロステロンという物質が胎盤を経由してエストロゲンという女性ホルモンに変換されて大量に生成されます。このエストロゲンが胎児に影響を及ぼすため、男の子であっても女性のようにおっぱいが大きくなってしまうんですね。しかも、5%くらいの子では実際に乳汁が出ることもあるようです 2)。ただ、新生児の女性化乳房は通常、生後数週間〜1年程度で退縮すると言われており、ずっと戻らなかったり、後遺症が残ったりということはほとんど無いと言われています。
まとめ
本日は男の子のおっぱいについてお話ししました。そんなわけで赤ちゃんのおっぱいが腫れていてもあまり気にする必要はありませんが、それでも心配になってしまう場合にはかかりつけの産婦人科や小児科に気軽にご相談ください。
参考文献
1) GA Kanakis, et al. Andrology. 2019Nov;7(6):778-793.
2) Madlon-Kay DJ. Am J Dis Child. 1986;140(3):252.