後期流産

今回は「後期流産」についてお話します。まずは定義をお示しします。

流産:(日本では)妊娠22週未満に児を娩出すること

人工流産:人工操作によって妊娠22週未満の妊娠を中絶すること

人工妊娠中絶:人工流産と人工早産に分けられる。通常は母体保護法の観点から人工流産とほぼ同義

以上をふまえ、妊娠12週以降の22週未満の流産(死産を含む)は「後期流産」といいます。

人工妊娠中絶の処置として児の娩出を行う場合は、母体保護法第14条に基づき(原則)夫婦の同意書が必要となります。

後期流産・妊娠12週以降の人工妊娠中絶処置

■子宮頸管拡張:妊娠12週以降の後期流産を安全に行うために最も重要な処置です。頸管拡張は徐々に行うため、時間・日数を要します。

■子宮収縮薬(ゲメプロスト)投与:頸管拡張がしっかり行われた後、ゲメプロストを3時間ごとに後腟円蓋に投与します。1日最大5個までの投与となります。子宮頸管拡張がしっかり行われている場合は1日の最大用量内に児を娩出することがほとんどです。

ゲメプロスト投与の禁忌例:(全・部分)前置胎盤、骨盤内感染

■児と胎盤の娩出

□後期流産・人工妊娠中絶後に母体は乳汁漏出をきたすことがあり、カベルゴリンの内服をしてもらうことがあります。

流産処置に関する注意点

・Rh(D)陰性の母体は産後の抗D人免疫グロブリンの注射を勧めます。

・後期流産では胎盤遺残が生じやすく、その後の出血や感染に注意を要します。

・にしじまクリニックでは、流産処置の前後に抗菌薬を内服・点滴・腟内のいずれかの投与を行いますが、産後の骨盤内感染を全て防げるわけではありません。産後に感染症を起こす多くの場合は処置前から母体がクラミジアや嫌気性菌などを有するとされ、これらは比較的特殊な抗菌薬の選択が必要とされるためです。

(院長執筆)