子宮の支持靱帯

子宮は靱帯でつられている臓器であることをご存知でしょうか?

子宮は下腹部の真ん中に位置し、子宮の前方にある膀胱、後方にある直腸は骨盤の底で主に靱帯で支持固定され、それぞれの機能を保ちます。

子宮が腟内へ落ちないように支える組織が子宮頸部の周囲に存在しており、これを子宮傍結合織(parametrium)と呼びます。 子宮傍結合織は

前方にある膀胱子宮靭帯、

側方の基靭帯、

後方の仙骨子宮靭帯と直腸腟靭帯

の4つを指します。 最も長いのが基靭帯で、子宮頸部の左右両側から伸びて骨盤の壁につながっています。

腹腔内の左前方から見た子宮と子宮傍結合織(靱帯)

子宮傍結合織が伸びきってしまうと子宮下垂や子宮脱の原因となります。多産婦さんだと子宮のサイズは大きくなったり小さくなったりを繰り返すことで靱帯の伸縮機構が機能しなくなり、またご高齢となれば靱帯は筋肉とともに衰えていく傾向になり、これらが子宮下垂や子宮脱、ほかには膀胱瘤や直腸瘤(全体で「骨盤臓器脱(Pelvic Organ Prolapse[POP]」と呼ばれます)などを引き起こすのです。

子宮下垂や子宮脱の診断において、特に違和感を感じご心配で産婦人科へおかかりになる方もいらっしゃるかと思います。診察では一般的に

・子宮頸部が処女膜輪を超えているかどうか

・経腟超音波による子宮長の測定(約7cm)

を目安として状態を確認させてもらっています。また骨盤臓器脱患者の約40%に潜在的な腹圧性尿失禁を認めるとも言われているので、既往を含めた問診も大切です。

執筆 院長

参考書;

産婦人科手術のための解剖学. MEDICAL VIEW社

日本産婦人科医会研修ノートNo.114