妊娠中の献立をご提案

こんにちは、副院長の石田です。

実は私は15年くらい前に、妻の妊娠をきっかけに料理を始めました。最初は手探りでしたがやってみると意外に楽しく、今では趣味の一つになっています。さて、料理をするようになって思ったのは、最も大変なのは料理自体ではなく献立選びだということです。理想的な栄養バランスでありながら現実的に作れて、しかも最近食べたものと被らないメニューを考えるのは、決して簡単ではありません。ましてや妊婦さんが食べるものとなれば尚更です。そこで今回は産科医+夫としての視点から、妊婦さんに必要な栄養条件を満たしつつ、比較的簡単に作れる1日の献立を提案したいと思います。特にこれまで料理をやってこなかったという男性におかれましては、是非この機会に自炊に挑戦してみてください。

朝食:ハムエッグトーストフルーツグラノーラのヨーグルトがけ

フライパンでハムエッグを焼きつつ、トースターで食パンも焼きます。同時進行でできるので時短にもなりますし、ハムエッグをトーストの上にのせれば小さい平皿一枚で済むため洗い物も楽です。それとは別に小盛りのプレーンヨーグルトにフルグラをかければ、簡単にアメリカンブレックファストができます。このメニューのポイントはハム、卵、ヨーグルトでタンパク質を摂れることに加え、市販のフルグラにはビタミンや鉄分、葉酸などが添加されていることが多いので、朝から妊婦さんに必要な栄養を効率よく補えることです。

昼食:白米+焼き+豚汁+ひじき煮

もし全てを一から作るのがめんどくさければ、焼き魚とひじき煮はコンビニやスーパーで美味しいのが買えるので、みなさんは豚汁に集中すればOKです。豚汁は根菜が多いので食材を切るのが大変ですが、それ以外に難しい工程はありません。何を入れても美味しくなりますが、個人的にゴボウとこんにゃくは具として必須です。あと、みりんを入れるとコクとまろやかな甘さが出るのでおすすめです。焼き魚(鮭やサバを想定)はタンパク質と必須脂肪酸を、豚汁はタンパク質、鉄分、食物繊維、ビタミンを、そしてひじきで鉄分と食物繊維をバランスよく補います。

夕食:白米+チキンステーキ+ブロッコリー+ミネストローネ

特に我々料理初心者男性にとっては、お肉の中でもチキンが最もヘルシーかつ失敗しにくいのでおすすめです。皮目から弱中火で焼いていきますが、コツは皮がカリカリになるまで我慢して触らず、時間をかけて火を通すことです。付け合わせのブロッコリーは手間と栄養を考えて、茹でずにレンチンしましょう。ミネストローネは豚汁同様に栄養が豊富ですが、ミックスビーンズを加えるとさらに鉄分と食物繊維を強化することができます。

まとめ

ということで、本日は妊婦さんの体に良さそうな料理のご提案でした。もしかしたらスープは塩分が多いかもなので、具をメインにして汁を残すとか、おやつやデザートにカリウム豊富なバナナやキウイを食べることで塩分の排出を促すのもありです。とは言え料理の素人が考えた献立なので栄養士の方が見たらツッコミどころがあるかもしれませんが、その時はごめんなさいということで…。また、アレルギー体質や妊娠糖尿病などの特別な配慮が必要な方は、より体に合った形に献立を組み立ててみてください。

ハンタウイルス

ハンタウイルスとは

ハンタウイルス(Hantavirus)はネズミなどのげっ歯類の一部が持っているウイルスです。流行地域でウイルスを持っているげっ歯類にかまれたり、排泄物に触れたり、排泄物を含んだほこりを吸い込んだりすることによって感染します。腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群という2つの疾患を起こします。

“Hantavirus”の語源は、朝鮮半島の「漢灘江(ハンタンガン)」に由来します。英語では Hantan River と呼ばれる川です。

1950年代の朝鮮戦争の際、この地域で活動していた兵士たちの間で原因不明の高熱と腎障害を伴う病気が多発しました。後に1970年代、韓国の研究者がこの病原ウイルスを野ネズミから分離した事で、発見地にちなんで「Hantaan virus(ハンターンウイルス)」と命名しました。

その後同系統のウイルス群全体を指して

“Hantavirus”という名称が使われるようになりました。

どうやってうつるのか

ウイルスを持ったげっ歯類の糞や尿が粘膜や傷口に直接触れたり、排泄物の含まれたほこりを吸いこんだり、直接げっ歯類に咬まれたりすることで感染します。ヒトからヒトへの感染例は今まで報告されていなかったのですが、最近のニュースのとおり、クルーズ船内での集団感染が問題となっています。

今後日本でのリスクについて

ハンタウイルスは現在でも韓国では毎年400~500例のハンタウイルス感染症が報告されています。これとは対称的に、日本ではまだハンタウイルス感染症の報告事例はありません。

ヒトからヒトへの感染が容易に起こす新型コロナウイルスとは異なり、

ハンタウイルスは基本的には「ネズミなどげっ歯類からヒトへ」感染するウイルスで、ヒトからヒトへの感染は非常にまれです。

よって仮に感染した方が日本に入国した場合でも、適切な管理により伝播は抑制できると考えられ、国内でのハンタウイルスが感染拡大する可能性は低いとされています。

今後この様な情報を得るには, BBCのような、フェイクニュースを排除し正確な情報に努めているニュースサイトから適宜情報を得る事をお勧めします。

https://www.bbc.com/japanese/articles/cn5px21xkrno

参考;

厚生労働省プレスリリース https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001697960.pdf

執筆 院長

産後に自力でおしっこが出せなくなった時の話

こんにちは、副院長の石田です。

お産は新しい命を迎える大切な出来事である一方で、骨盤や周囲の組織にとっては非常に大きな負担がかかるイベントでもあります。その影響の一つとして、分娩後に自力でおしっこが出せなくなってしまう「尿閉」を起こす患者さんが一定数いらっしゃいます。尿閉になると、膀胱に尿がたまっているにもかかわらず自力で排尿できない状態となり、「導尿」と呼ばれる方法でカテーテルという細いチューブを用いて尿を出す必要が出てきます。突然このような状況になると、不安や戸惑いを感じる方も少なくありません。そこで今回は分娩後の尿閉について、その原因や経過、対応方法などを解説したいと思います。

分娩後尿閉とは

分娩後尿閉は、お産のあと6時間以内に排尿がみられない場合(帝王切開の場合は、手術時に挿入した尿道カテーテルを抜去してから6時間以内に排尿がない場合)に診断されます。一見シンプルな基準ですが、実際には「少しは出ているものの膀胱に尿が残っている」ケースもあり、こうした150mL以上の残尿がある潜在性尿閉まで含めたり、そのほか前提条件を変えたりするとその発生率は研究によって大きく異なります。具体的な数字で言うと0.18〜47%と幅広い報告がありますが、私としては0.45%としているこちらの研究結果が実際の肌感覚に合うような気がしています 1)2)。
原因については、現時点で一つに特定されているわけではありません。ただし、お産というプロセスの中で、膀胱が赤ちゃんの通過によって過剰に引き延ばされることや、会陰部の裂傷や浮腫、さらに骨盤内の神経への影響、そして分娩後のホルモンバランスの変化など、複数の要因が重なって起こると考えられています。分娩後尿閉のリスク因子としては、初産婦であること、会陰切開、器械分娩(吸引・鉗子分娩)、局所麻酔薬の使用、無痛分娩などが挙げられています。いずれも臨床の現場では比較的よく遭遇する状況であり、これらに当てはまる方では注意深く経過をみていく必要があります 2)3)。ただし重要なのは、「これらの医療行為を行ったから尿閉になった」と単純に因果関係で捉えるべきではないという点です。むしろ、これらの介入が必要となるようなお産、つまり分娩に時間がかかったり、組織や神経に対する負担が大きかった状況そのものが、尿閉のリスクを高めていると考える方が自然かもしれません。そのため、リスク因子に該当するかどうかだけで過度に不安になる必要はありませんが、「やや起こりやすい状況ではある」という理解のもとで、適切に観察と対応を行っていくことが大切です。
なお、尿閉と診断されると驚かれる方も多いのですが、経過は良好なことがほとんどです。多くの場合、72時間以内に膀胱の機能は回復し、自力で排尿できるようになるとされているため、適切に経過をみながらサポートしていくことが大切になります 4)。具体的には膀胱が尿でパンパンにならないように、4〜6時間おきにカテーテルを使って導尿しながら自然回復を待ちます。

まとめ

本日は分娩後尿閉について解説しました。自力でおしっこが出せないととても不安になりますが、ほとんどの場合は退院前に、長くても1ヶ月健診までには完全回復します。運悪く当事者になってしまっても、医師や助産師、看護師とコミュニケーションを取りながら、落ち着いて対処していただければと思います。

参考文献
1) Stefan Mohr, et al. Int Urogynecol J. 2022 Feb 7;33(6):1601-1608.
2) Michael E Carley, et al. Am J Obstet Gynecol. 2002 Aug;187(2):430-3.
3) F E M Mulder, et al. Int Urogynecol J. 2014 Dec;25(12):1605-12.
4) Groutz A, et al. Neurourol Urodyn. 2011 Jan;30(1):83-6.

What is Rubella?

Rubella is a viral infectious disease that spreads from person to person through respiratory droplets produced by coughing or sneezing. After an incubation period of about two to three weeks, symptoms such as fever, a red rash, and swelling of the lymph nodes behind the ears and in the neck may appear. In some cases, symptoms can be mild, but the infection itself is not considered weak in terms of transmissibility.

Rubella can spread easily among people who do not have immunity, with one infected person potentially transmitting the virus to several others. Wearing a mask can provide some level of protection; however, it cannot completely prevent infection. Therefore, basic preventive measures such as hand hygiene and avoiding crowded places are also important.

Particular caution is needed during pregnancy. If a woman becomes infected with rubella, especially within the first 20 weeks of pregnancy, it may affect the developing baby. This condition is known as congenital rubella syndrome. It can lead to complications such as heart defects, hearing impairment, and eye disorders, with the risk being higher in the earlier stages of pregnancy.

Vaccination is the most effective way to prevent rubella. However, the rubella vaccine is a live vaccine and cannot be administered during pregnancy. For this reason, it is important for those planning a pregnancy to receive the vaccine in advance. Immunity can be confirmed through a blood test.

If immunity is insufficient, pregnant women should take extra precautions, such as avoiding crowded places. It is also important for partners and family members to check their immunity status and consider vaccination if needed.

Rubella prevention is not only about protecting yourself but also about preventing transmission to others. This is especially important for those planning a pregnancy and their families, who should be aware of the risks and take appropriate preventive measures.

Written by Nishijima Clinic Director

産後のシッツバス

こんにちは、副院長の石田です。

経腟分娩の際には90%前後の女性で会陰裂傷ができることが知られています。もちろん傷の大きさや深さは人それぞれですが、いずれにしても産後はその痛みと付き合わなくてはなりません。痛みは時間とともにどんどん良くなっていくのが一般的ですが、当院では少しでも早く回復できるように産後の入院中にシッツバスをご提供しています。そこで本日はこのシッツバスについてご紹介させていただこうと思います。

シッツバスとは

シッツバスは暖かいお湯を溜めた浅いタブにお尻から腰を浸からせる入浴のような療法です。筋肉の緊張を取り、血行を改善することで会陰部の創傷治癒を促進し、痛みを改善する効果があるとされています。19世紀に欧米で始まったとされるこの治療は、現在でも分娩後の会陰裂傷以外だと、痔などに対して用いられることがあります。シッツバスは必ずしも有効性を示すエビデンスが豊富にあるわけではありませんが、会陰のむくみを取ることで創部の緊張が軽減されて、楽に過ごせるようになる人が多い印象です。

当院のシッツバス

当院ではシッツバス専用のタブを使用して、15分間のメニューとして産後にご提供しています。お湯は40℃を基本としていますが、それぞれの女性が気持ち良いと感じる温度に適宜調整可能です。(ちなみにお湯よりも水の方が痛みの改善効果があったという、少し古い文献もありました 1)。)シッツバスだけでも上記の効果が期待できますが、当院では筋肉の緊張をほぐし、消毒・殺菌作用があり、傷の治癒を促進する効果があるとされるラベンダーとサイプレスのエッセンシャルオイルもお湯に加えています。ちなみににしじまクリニックで使用しているエッセンシャルオイルは、少しでも皆さんの体に良いものをとの想いから、世界で最も権威のあるECOCERTのオーガニック認証を取得したフランスのvie arome社のものを取り寄せています。なお、一度使用した機材は次亜塩素酸を含む複数の洗剤で全て入念に洗浄した後、5分間の強換気を行うことで、皆さんに安全に使っていただけるよう配慮しています。

まとめ

本日は当院で産後にご提供しているシッツバスについて解説しました。日本では一般的に「入浴解禁は1ヶ月健診が終わってから」という風潮があるためご心配になる方もいらっしゃるかもですが、当院の患者さんたちがシッツバスにより子宮内感染を起こしたことは一度もありませんし、最近になって成育医療センターのチームから「産後の入浴って制限しなくてもよくない?」という内容のデータも発表されているため安心して楽しんでいただきたいと思っています 2)。にしじまクリニックでは他にも、お産で消耗した体の回復を促進するための様々なアロマテラピーを取り揃えておりますので、もっと詳しく知りたいという方は是非スタッフにお声掛けください。

参考文献
1) D Ramler, et al. J Obstet Gynecol Neonatal Nurs. 1986 Nov-Dec;15(6):471-4.
2) Rinko Ibi, et al. Int J Gynaecol Obstet. 2026 Feb 24.