染色体を形作るDNAの糸が途中で切れて、元と違う形で染色体が再構成される事を「構造異常」と言います。そのうち
・ゲノム量が変わるものを「不均衡型」
・ゲノム量に変化がないものを「均衡型」に分けれらます。
ロバートソン転座とは
今回お話する『ロバートソン転座』は染色体構造異常の一つで、
『13, 14, 15, 21, 22番染色体の長腕(q)どうしがつながった状態』をいいます。
13, 14, 15, 21, 22番染色体の短腕(p)は非常に小さく有効な遺伝子がないため、このような事が起きる可能性があるのです。
*染色体短腕の”p”はフランス語の”petit”に由来します。長腕の”q”はpの次の文字として採用されているようです。
ロバートソン転座が起きると、典型として、染色体数が45本(通常より1本少ない)となります。
ロバートソン転座があると何が問題なのか
ロバートソン転座保因者は染色体数が45本となり、通常(46本)と異なりますが、上記のとおり失われた短腕(p)部分には有効な遺伝子がない(よってロバートソン転座は均衡型の一型としてもとらえられる)ため、表現型は正常(保因者自身には問題は起きない)です。
問題になるのはどちらかがロバートソン転座をもつカップルが妊娠した時、流産の確率が増える事と
21トリソミーが発生する可能性(21番染色体の転座を認めれば)がある事です。
Down症候群は女性の高年妊娠によって確率が上がる事はよく知られています。このロバートソン転座によるDown症候群(転座型21トリソミー)は年齢とは関係ありません。
またロバートソン転座は50%が新生(de novo)とされている(親がロバートソン転座保因者でないこともある)ため、流産絨毛組織染色体分析(POC)や羊水検査で見つかったり、カップルの染色体検査で判明する事象も考えられます。
転座型21トリソミーは染色体数は46本ですが、そのうち21番の長腕(q)が1本多く、生まれてくる場合はDown症候群となります。
父がロバートソン転座保因者の場合、お子さんがDown症候群となる確率は1%未満、母が保因者の場合は10〜15%といわれています。
執筆 院長