ワクチンQダイアリーの入力方法

先日、10歳の長女がHPVワクチン『シルガード9』を接種しました。

(『シルガード9』は9歳以上の女性が対象です)

シルガード9を接種する前に、インターネット上でサポートシステム『ワクチンQダイアリー』の入力が必要となります。本日はその入力方法をお伝えします。

①ワクチンQダイアリーへアクセスします。

https://vaccine-q-diary.com/user/#/C0201_Login

②新規登録を行います。

新規登録後、ログインした後のTOPページは以下画面となります。

ワクチンQダイアリーTOPページ

③【重要】接種医コード入力を行います。

接種医登録画面

私院長と副院長石田のコードを以下載せておきます。

接種医(西島翔太)コード
接種医(石田健太郎)コード

接種医コードの入力と接種医による閲覧への同意が完了することで、以後接種担当医が接種者のスケジュールや接種日の登録をすることができます。

シルガード9を接種される方は全例、ワクチンQダイアリーの登録が必要です。万が一健康被害が発生した場合の『医薬品副作用被害救済制度』を受けられる重要な登録・情報管理ですので、ご協力をよろしくお願いします。

④接種日時の『日程確認』を行います。

なお、この画面での日時は予定接種日です。接種予定日の1週間前にログインで使用したE mailアドレスへ連絡メールが届く仕組みとなっています。

実際の予約日時については、当院で予約した時間にご来院ください。

なお接種日を変更したい場合は当院へご連絡ください。

⑤接種日当日、予診表となる『接種前確認事項』を入力します。

接種前確認事項(予診表)

入力が完了すると、接種担当医へ記載の情報が共有されます。

担当医がその情報と当日の最終問診表を確認後、シルガード9の接種となります。

接種後、担当医が接種した登録と次回接種予定日(2ヶ月後)の仮登録を行います。

2回目接種と3回目接種は手順④と⑤のみです。

*現在は、ワクチンQダイアリーの運用は終了しました。事前にご連絡いただければ、シルガード®︎9の接種が可能です。

コロナワクチン接種が不安な方へ(6月7日時点)

私達医療従事者のみならず、いよいよ一般の方々も新型コロナワクチン接種の機会が迫ってきています。そこで本日以下の内容を記載することにしました。

にしじまクリニックに来院される方で、コロナワクチンの接種に対して質問があるのは

・妊婦さん

・ピル内服中

の方々が大半を占めます。

まず妊婦さんのコロナワクチン接種についてです。厚生労働省のホームページでは、「感染リスクの高い妊婦は積極的に接種を推奨する」と明記されています。

・感染者が多い地域に在住

・医療従事者、保健介護従事者

・重症化リスク(肥満、糖尿病など)がある

方々が適応とされています。

また私院長は、感染リスクという観点から上記のみならずエッセンシャルワーカーや里帰り分娩予定の方々も接種が望ましいと考えています。

以下、厚生労働省のホームページをリンクさせておきます(よくまとまっていると思います)。

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0027.html

ただし、器官形成期である妊娠12週までは念のためコロナワクチンの接種時期をずらした方がよろしいかと思います。

続いて、低容量ピルを内服している方で血栓症が心配、という訴えも多く聞かれます。

今一度お考えいただければ思いますが、低容量ピル内服中の血栓症のリスクより、妊娠に契機とした血栓症のリスクがずっと高いのです。

先ほど申し上げたとおり厚生労働省、日本産科婦人科学会、日本感染症学会らが「妊婦のワクチン接種は可能」としている時点で、婦人科におけるピル内服中の方らも現時点ではワクチン接種は問題ないと考えます。

静脈血栓塞栓症(VTE: Venous ThromboEmbolism)の発症頻度はACOG(American College of Obstetricians and Gynecologists)によれば

妊婦は5〜20/10000婦人/年間

であります。一方低容量ピル使用者の静脈血栓塞栓症の発症頻度は3〜9/10000婦人/年間程度なのです1)。

また私の雑感ですが、ピル大国の欧米で、ピル内服中の方らがわざわざ内服を中止して新型コロナワクチンを接種しているとは考えにくいです。

ただし、コロナワクチン接種の際には問診表にピルの内服をしていることを記載し、問診でも必ず申告するようお願いします。

以上となりますが、それでもコロナワクチン接種を打ってもよいのか心配、というお問い合わせが今後予想されます。申し訳ありませんが、当院では電話でのご相談は安全上の観点からお断りします。当院ではHPVワクチンも含め、ご相談を対面で行っております。お手数ですが外来を予約していただくか、またはオンライン診療を予約していただき、個別対応させていただきます。

参考文献

1) CQ501. OC・LEPガイドライン

今年も子宮頸がん検診が始まります。

こんにちは、副院長の石田です。

今年も当院では6月から市の助成事業による子宮頸がん検診が始まります。毎年たくさんの方に受けていただいておりますが、その一方で検診のメリットがいまいちよく分からない上に、日常の忙しさや病院に行く手間などからついつい行かないままになってしまっている方もたくさんいらっしゃると思います。そこで本日は子宮頸がん検診についてのお話をしたいと思います。

どんな検査なのか

子宮がんは発生する部位によって頸がんと体がんに分けられます。体がんが子宮内を裏打ちする膜から発生するのに対して、頸がんは子宮の出口付近にある細胞が主にウイルス感染を原因として癌化することによって発生します。子宮頸がん検診は腟に器械を入れて子宮の出口を確認し、そこをブラシなどで擦って取ってきた細胞の形を見ることで悪性腫瘍を早期発見する検査です。腟からの操作が必要な点が女性にとっては懸念となるかもしれませんがそれ自体は1~2分で終わるので針を刺す採血や器械を飲み込む胃カメラなどと比べても負担がとても少ないです。

実は早期発見による利益が期待できるがんは多くない

「がんは早期発見、早期治療が鍵です」というのが正しい一方で、それ自体は言うほど簡単なことではありません。悪性腫瘍は細かく分類していくと数え切れないほどの種類がありますが、実は定期的な検査による早期発見が健康上の利益に繋がるがんは少ないんです。言い換えると、「効率的に早期発見することが難しい」「早期発見してもあまり意味がない」といったがんが多いということです。これにはいくつか理由があるのですが、代表的なものとしては以下が挙げられます。
1)検査の問題:病気を早期発見するには高感度の検査が必須になりますが、多くのがんにおいては効果的な検査が存在しません。また、仮に高精度の検査があったとしてもそれ自体による患者さんへの負担が大き過ぎて定期的に実施することが不可能な場合もあります。(例えば内臓のがんを探すために定期的に全身麻酔下にお腹を切開して直視で確認したり、侵襲が少なくても1回100万円する検査を毎年行うのは不可能です。)
2)がんの悪性度の問題:せっかく早期発見しても悪性度が高すぎてステージに関わらず治療が困難だったり、逆にがんではあるけど進行が遅いので診断に時間がかかっても十分治療できるなど、早期発見が患者さんの寿命を左右しない場合もあります。

そんな中で大腸癌、乳がん、子宮頸がん(+条件つきで肺がんと前立腺がんも。胃がんは意見が分かれているそうです。)は実施可能な形での定期検診で早期発見が可能で、かつそれにより治癒や延命が期待できる珍しい種類なのです 1)2)。

子宮頸がん検診を受けることのメリット

検診が広く国民に普及することで子宮頸がんによる死亡率などを下げられることが多数の研究で証明されています 3)4)5)6)。子宮頸がんはその性質上、正常な細胞が癌化するまでの間に時間をかけていくつものステップを踏むことが知られており、その間に検診で見つけることによって進行を防げるんですね。子宮頸がんが進行すると子宮や卵巣に加えて周りの靭帯なども手術で大きく取ってこないといけなくなりますが、前段階で捕まえられれば子宮の出口を軽く切り取ってくるだけで治療が終了することもあります。30〜40代に増えているがんなので妊娠のことを考えても子宮を取らずに済むのがいかに大切かはお分かりいただけると思います。

まとめ

以前からこのブログでもお伝えしていますが、日本は子宮頸がんの患者さんが増加傾向にあり、加えて子宮頸がんワクチンの接種率が著しく低いことが知られています。そのため子宮頸がん検診によって実際のメリットを得られる患者さんは他の先進諸国と比較しても多いと思われます。これは私の個人的な想いになりますが、子宮頸がんが進行して見つかった時の患者さんたちのショックはいつでも本当に大きいです。もちろん他のがんも大変なんですけど、子宮頸がんはワクチンで予防できたり検診で早期発見が可能であることが広く知られているため患者さんの後悔と自責の念がとても強いんだと思います。お忙しい中で産婦人科を受診するのはめんどくさいかも知れません。ましてやお股の診察は抵抗感もあるでしょう。でも、ちょっとだけあなた自身や周りを見渡してみてください。これからも元気にやり続けたいことや、まだまだずっと一緒にいたい人たちがいませんか?是非それらの大切なものと、検診の手間を秤にかけてみていただければと思います。

今年の当院での検診対象は富士見市、ふじみ野市、三芳町に住民票がある20歳以上で偶数月生まれの女性ですので、当てはまる方は是非受診をご検討ください。(当てはまらない方でも当院での検診をご希望の方は一般診療としてお受けいたしますのでご連絡ください。)

1) American Cancer Society. Cancer Prevention & Early Detection Facts & Figures 2021-2022. Atlanta: American Cancer Society; 2021

2) Leung Wk, et al. Lancet Oncology. 2008;9(3):279

3) Nygard JF, et al. J Med Screen. 2002;9(2):86

4) Aklimunnessa K, et al. Jpn J Clin Oncol. 2006;36(8):511

5) Taylor R, et al. Cancer Causes Control. 2006;17(3):299

6) Peirson L, et al. Syst Rev. 2013;2:35.

妊娠と腰痛

こんにちは、副院長の石田です。

さて、腰痛は妊娠女性のお悩みとして最もよく聞かれるものの一つです。程度は人によって様々ですが、重いと極端に生活の質(QOL)を損なうことがあるためありふれた訴えだからと言って無視できません。というわけで本日は妊娠中の腰痛についてお話ししようと思います。

腰痛で困っている妊婦さんたち

こちらは報告によってばらつきがあり、かつ人種によっても違いがありそうなので一概には言えませんが、妊婦さんの実に60〜80%近くが妊娠中に腰痛を感じているとされています 1)2)。リスクとしては、妊娠前から腰痛に悩まされている、前の妊娠でも腰痛があった、多胎妊娠(双子とか)、肥満などが挙げられますが、外来で日々診察していると必ずしもこれらのリスクが無くても腰痛を訴えられる人はよくいらっしゃる印象です 3)。ちなみに妊娠が終了すると腰痛は改善する傾向があるみたいです 2)。

妊娠中に腰痛が起こりやすくなる原因

腰痛自体は様々な要因が重なり合って引き起こされますが、妊娠に限って考えると以下のような体の変化が影響しています 4)5)。
①大きくなった子宮とそれによる重心の変化に対応するために背骨の弯曲が強くなる。
②お腹が大きくなり、腹筋が引き伸ばされて弱くなることで背中を支える筋肉に過度な負担がかかるようになる 。
③妊娠によるホルモンの影響で背骨の関節が緩み、それを支えるために周りの筋肉に過度な負担がかかるようになる。
これ以外にも無意識にお腹を庇うような歩き方になって腰に負担がかかっているとか、妊娠して運動量が落ちるため筋肉量も低下して腰痛が悪くなるとか色々と理由は考えられると思いますが、いずれにしても妊娠は体に様々な形で負担を強いているということが分かりますね。

妊娠中の腰痛対策 6)

では、妊娠中に腰痛を患ってしまうのはしょうがないとして、実際にそうなってしまった時にはどうした良いのでしょうか?
まず、ヒールの高い靴は避けるようにしましょう。ヒールが高いと体が前に傾くため、姿勢を保つのに背中の筋肉に大きな負担がかかるようになります。座るときはしっかりと背中を支えてくれる背もたれがある椅子を選ぶのが良いとされますが、しっくり来ない時は小さな枕を腰のところに挟んでみると良いかもしれません。何かを持ち上げる時はしっかりと膝を曲げて屈み、背中を真っ直ぐにしたまま下半身で上げるようにしましょう。寝る際にはベッドのマットレスが柔らかすぎると腰痛を悪化させる傾向があります。また、膝を曲げて寝ると腰の負担が軽減するので抱き枕などを脚で挟んで寝るのが効果的です。運動は妊娠で歪みがちな姿勢を矯正し、各所の関節を支える筋肉を強く保つため腰痛を軽減する効果があるので推奨されています。その他「トコちゃんベルト」のような骨盤を支持するグッズも販売されており、人によってはかなり効くようなので試してみるのも良いと思います。ただ、実は巻き方が結構難しかったりするのでもし効果が実感できない場合には妊婦健診の際にかかりつけの施設で助産師さんに相談してみてください。

まとめ

というわけでいかがだったでしょうか?妊娠中の腰痛にお悩みの皆さんにとって少しでも参考になれば幸いです。ちなみに腰痛が夜間に悪化する、足の痺れや動かしにくさがある、発熱や体重減少など他の症状がある、排尿・排便などがスッキリしなくなってきたなどが見られる場合には、何か妊娠とは別の深刻な腰痛の原因が見つかることもありますので速やかに主治医に相談してみてください。

1) Wang SM, et al. Obstet Gynecol. 2004;104(1):65

2) Thorell E, et al. BMC Pregnancy Childbirth. 2012;12:30. Epub 2012 Apr 17

3) Biddal M, et al. Arthritis Rheumatol. 2016;68(5):1156

4) Katonis P, et al. Hippocratia 2011;15(3):205-210

5) Marnach ML, et al. Obstet Gynecol. 2003;101(2):331

6) American College of Obstetricians and Gynecologists. Frequently asked questions: Back pain during pregnancy

にきびについて

こんにちは、副院長の石田です。

若い女性の日常のお悩みで多いものの1つににきびがあります。医学用語で「尋常性痤瘡」といい、思春期の80%以上がかかる病気なので若者のイメージがあるかと思いますが、実は20代の半分くらい、30代の4人に1人、40代でも10人に1人が患っているというデータもあり、全世代で他人事ではないことが知られています 1)。日本では「時間が経つと勝手に良くなる」みたいな風潮があって軽視されがちですが、その一方で重症のにきびは子供たちの間でいじめの原因になったり、患者さん本人の見た目へのコンプレックスが労働生産性の低下に繋がるというデータもあることから必ずしも侮れない病気です 2)。本日はそんなにきびについてです。

にきびの種類

にきびは大きく分けて3段階あります。詰まった毛穴に皮脂が溜まった面(めんぽう)、赤く炎症を起こした丘疹(きゅうしん)、さらに大きく(>5mm)水っぽく腫れた膿疱(のうほう)ですが、とくに膿疱までいくと治った後も痕が残りやすくなってしまいます。治療にあたっては早期の介入により瘢痕化が防げることが知られており、侮らずに対処することが肝要だとされています。

にきびの治療

の段階ではレチノイドというビタミンA製剤の塗り薬が使われます。日本だとアダパレンという薬が主流のようです。これはビタミンA製剤がケラチン細胞の増殖を抑えて毛穴の詰まりを改善したり、新しい面の発生を抑えてくれるためだと言われています 3)。その他抗炎症作用もあるためとても重宝されているんですね。ビタミンAは実はにきびの全ステージで使用されますが、面からさらに進行して感染を起こした状態(赤く炎症した状態)の丘疹や膿疱には、ベンゾイルという殺菌薬と、さらにはその重症度に応じて抗生剤を塗り薬→飲み薬と使用していくことになります。

避妊ピルも治療の選択肢

産婦人科的にはピルも治療薬としておススメです。特に思春期に増加する男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌が皮脂の産生を増やすことがにきびの原因の1つと言われていますが、避妊ピルはアンドロゲンを抑制するためにきびの改善効果が期待できるんですね。日本ではにきびに対する保険適応は通っていませんが、世界的には既に多くのデータがピルのにきびに対する効果を証明しており 4)、実際に海外では適応が認められている国も多くあるそうです。もちろんピルは望まれない妊娠もコンドーム以上に阻止してくれること、卵巣癌や大腸癌のリスクを抑えてくれるなど多岐にわたる効用が期待できるため、適切に使用されれば非常にメリットの大きい選択肢となることが分かっていただけると思います。

生活習慣

生活習慣を見直すことでにきびの改善が期待できることもあります。例えば洗顔ですが、1日2回、ぬるま湯を使って擦り過ぎないように洗うのが良いようです。にきび用の洗顔フォームは色々と販売されていますが中性石鹸を使うようにしましょう。スクラブがいいかどうかは結論が出ていないということですが中には無い方が良いというデータもあるみたいです。また、乾燥や日焼けは良くないみたいですので保湿剤と日焼け止めを使いましょう。水溶性の化粧品やクリームがより適しているという意見もあるようです。ちなみに、特に避けるべき食材とかは無いらしいのと、にきびを潰すと痕になりやすいっていうのは本当みたいです 5)6)。

まとめ

男性もそうですが特に女性にとってはにきびで見た目が変わってしまうのはとても辛いことです。にきびごときと高を括ったり、逆に1人で悩み続けるのではなく悪くなる前に医療機関を受診するのはとても大切なことです。まずはお近くの皮膚科に相談しましょう。でも、流石に皮膚科でピルは処方してくれないと思うからご希望の方は産婦人科まで気軽にお問い合わせください。

1) Perkins AC, et al. J Womens Health (Larchmt). 2012 Feb; 21(2): 223-30

2) Pena S, et al. J Am Acad Dermatol. 2016 Jun; 74(6): 1252-4

3) Czernielewski J, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2001: 15(Suppl 3): 5-12

4) Arowojolu A0, et al. Cochrane Database Systolic Rev. 2012; 7: CD004425

5) Goodman G. Am J Clin Dermatol. 2009: 10 Suppl 1: 1-6

6) 日本皮膚科学会ガイドライン 尋常性痤瘡治療ガイドライン 2016