男性にも更年期障害があるってご存知ですか?

こんにちは、副院長の石田です。

当院では普段から更年期障害を心配している女性が多く受診されます。女性の更年期というと、ホットフラッシュや発汗といった血管運動障害だったりイライラ、ウツウツなどの精神症状が一般的によく知られていますが、実は似たようなことが男性にも起こるのをご存知でしょうか?実際、少子高齢化が加速度的に進む日本では一つの社会課題としても認識されており、昨年6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針 2025(骨太方針2025)にも小さく明記されています 1)。そこで本日は、当院の患者さんたちに直接関係はないんだけど、男性の更年期について少し解説してみたいと思います。

男性更年期障害とは

医学的には「加齢男性性腺機能障害」や、英語の”late-onset hypogonadism”の頭文字をとって「LOH症候群」と呼ばれたりします。男性ホルモンはそのほとんどが精巣で作られ、認知機能や性欲、筋肉量、排尿機能などを増加させます。思春期から20歳頃までに急激に分泌量が増加し、その後加齢とともにゆるやかに減少していくのですが、それとともに代謝や活動性、性欲などが減少して、いわゆる「男性更年期」と呼ばれる状態になるのです。実際の症状としてはほてりや倦怠感、イライラ、ウツウツ、性欲低下などが代表的です。診断は症状があることを前提ですが、血液検査では総テストステロンが250ng/dL未満、遊離テストステロンが7.5pg/ml未満が基準となります 2)。ただし注意点として、一般的にテストステロンは日内リズムがあるとされていて朝にピークとなるため、午前7〜10時頃の採血が推奨されます 3)。(ただし、高齢男性では日内変動が鈍化していることから、あまり気にしなくてもよいのではないかという議論もあります 4)5)。)

男性更年期の治療

必要に応じて女性と同様、ホルモン補充療法が選択されることがあります。男性ホルモンの注射やクリームを自分で塗ったりしますが、心不全や前立腺がんなどがある場合は使うことができません。また、日本では漢方を使うこともありますが、使われる薬は女性医学の三大漢方と呼ばれる当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸をはじめとして、いわゆる女性の更年期障害で使用されるものと興味深いことにかなり共通します。そのほか薬に頼らない方法としては、これまた女性と同様で質の良い睡眠、適度な運動、バランスの良い食事といった“丁寧な暮らし“が勧められています。

まとめ

本日は男性更年期障害について簡単に解説してみました。このブログを読んでくださっている女性の皆様におかれましては、「私、いよいよ更年期かしら…。」と思ったら少し周りを見渡してみましょう。意外と男性も同様に苦しんでいるかもしれませんよ。でもさすがに婦人科で男性更年期障害の診療をするのはちょっと違うかもなので、お悩みの男性はお近くの泌尿器科か内科にご相談ください。

参考文献
1) 経済財政運営と改革の基本方針 2025について
2) 日本泌尿器科学会/日本メンズヘルス医学会. LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き
3) Ezgi Caliskan Guzelce, et al. Best Pract Res Clin Endoclinol Metab. 2022 Jul;36(4):101683.
4) N Long, et al. J Fam Pract. 2015 Jul;64(7):418–419.
5) E David Crawford, et al. Curr Med Res Opin. 2015;31(10):1911-4.

出生後の赤ちゃんとビタミンD

こんにちは、副院長の石田です。

出産したことがあるお母さんたちはご存知だと思いますが、生まれたばかりの赤ちゃんはしばらくの間ビタミンKのシロップを週一で投与します。これは赤ちゃんの脳出血を予防するための処置ですが、最近はこれに加えてビタミンDも投与しようという流れがあります。実はこれ、海外だと結構前からやられてたりするんですが、一体どういうことなのでしょうか?ということで本日は生まれたばかりの赤ちゃんとビタミンDについて解説したいと思います。

ビタミンDとは

骨の健康を支える栄養素として重要なのがビタミンDです。ビタミンDは腸でのカルシウム吸収を促進し、血中カルシウム濃度を一定に保つ働きを通じて骨の形成や維持に重要な役割を果たしています。カルシウムそのものを十分に摂取していても、ビタミンDが不足していると骨の健康は保たれにくくなるんですね。ビタミンDの大きな特徴は、他の多くのビタミンとは異なり、紫外線を浴びることで皮膚で合成される点にあります。つまり、ビタミンDは「食べ物から摂る栄養素」であると同時に「日光によって体内で作られる栄養素」でもあるのです。食事からもビタミンDを補うことは可能ですが、実は効率的に摂取できる食材は一部の魚やきのこ類などごく限られているため、日常的な食事だけで十分量を確保することは簡単ではありません。このような背景から、ビタミンDの主要な供給源は日光であると言えます。適度に日光を浴びる生活習慣は、骨の健康を守るうえで栄養バランスと同じくらい大切な要素なのです。

最近の日本人はビタミンDが不足がち問題

近年、乳児におけるビタミンD欠乏が新たな健康課題として注目されています。その背景として、外で遊ぶ機会の減少や、日焼けを過度に避ける不適切なUV対策などの生活習慣の変化により、日光を浴びる時間が著しく減っていることが考えられています。乳児に必要なビタミンD摂取量の目安は、適度な日照を受けていることを前提に1日あたり5μgとされています。一方で、母乳栄養は乳児にとって最良の栄養方法とされるものの、母乳に含まれるビタミンD量は決して多くありません。母乳中のビタミンD含有量は、およそ0.3μg/100mLと少ないことが知られています。さらに重要なのは、母乳中のビタミンD量が母親の体内のビタミンD量に影響される点です。近年、成人女性においても日照不足や生活習慣の変化により、ビタミンDが不足しがちな人が増えています。このような状況では、母乳に含まれるビタミンD量が想定されている目安よりもさらに少なくなる可能性が示唆されています。

ビタミンDのシロップについて

そんな現代っ子たちの問題を解消すべく、国際的なガイドラインでは1歳までの乳児に対して1日10μgのビタミンDサプリメント摂取が推奨されています。それを踏まえて昨年には、日本小児科学会からも「日本の子供達にもビタミンD投与した方がいいんじゃない?」という提言が出されました 1)。日本でも子供達のビタミンD不足や、それに伴うくる病という骨が柔らかくなったり曲がったりする病気が増えているとされており、これらのことから今後ビタミンDサプリの使用が海外のように普及していくことが予想されます。

まとめ

本日は子供達のビタミンD欠乏についてお話ししました。そのほか世界保健機関(WHO)によると、北緯(南緯)37度以上に居住している場合も秋から春にかけての日照時間の関係でビタミンDが不足するリスクがあるそうです 2)。日本で言うと北関東以北が該当しますね。
さて、今後ビタミンDシロップの使用が広まったとしても、やはり大切なのは適度に日光を浴びることです。真夏の昼間の直射日光に我が子を曝す必要はないかもですが、一方で極端に日焼けを恐れるのはかえって体に良くないです。是非かかりつけの小児科の先生とも相談しながら、お日様との良いお付き合いを心がけてみてください。

参考文献
1) 日本小児科学会. 日本小児学会雑誌. 129巻3号:494〜496(2025)
2) World Health Organization. Vitamin D Supplementation for Infants.

丙午(ひのえうま)についての雑感

あけましておめでとうございます、副院長の石田です。

私の妻が小児科医なんですが、先日「2026年って丙午なんだよね?」と言われました。なんでも小児科界隈ではベテランの先生方を中心に、これがきっかけで少子化がさらに加速してしまったらどうしようと心配する雰囲気があるらしいです。確かにネットニュースやYouTubeでも丙午について議論するようなものをチラチラ見かけます。そこで本日はこの件について少しお話ししてみたいと思います。

そもそも干支とは

一般的に干支(えと)と言うと子(ネズミ)から亥(イノシシ)までの生まれ年ごとに割り振られた12種類の動物がイメージされると思います。これを十二支と言いますが、正式にはこれらの動物に加えて甲(きのえ)から癸(みずのと)で構成される十干(じっかん)という暦法を組み合わせた60種類で干支は表されることになっています。例えば1982年生まれの私の場合、十二支は戌(いぬ)で、干支は壬戌(みずのえいぬ)と表されるわけです。余談ですが、60歳を還暦と呼ぶのは干支が1周して元の自分の“暦“に“還“るからです。

では丙午とは

すごく簡単に言うと、八百屋お七という情熱的な女性がある男の人のことを好きすぎて放火事件を起こした末に死刑になったという、井原西鶴の作ったハードボイルドなフィクションが流行った結果、転じて「丙午生まれの女性は気性が荒く、男を不幸にする」という迷信が広がって、丙午の年の出生数がダダ下がったという話です。実際前回の丙午である1966年の出生数は25%程度減少しており、江戸前期に作られたストーリーが約300年の時を越えて赤ちゃんの数に影響したことを考えるとなんだか壮大な感じがしますよね。いずれにしても今年は60年ぶりの丙午ということで、ちょっとした話題になっているのです。

雑感

日本全体で妊婦さんがどうお考えかは分からないのですが、私のイメージでは丙午を気にしている妊婦さんはほとんどいません。妊娠、出産の性質上、今年が予定日になる患者さんは昨年の5月ごろから妊婦健診を開始していますが、普段の妊婦健診でその心配を口にされる方はほぼ皆無でしたし、エコーを見ながら「女の子ですよ」と伝えても、みなさんとても喜んでくれます。客観的な数字の話で言うと、妊婦健診で来られる患者さんの数も全く減っていませんし、少なくとも当院の周辺地域のご家族はあまり気にしていなさそうです。

まとめ

本日は話題の丙午についてお話ししてみました。干支占い的に言われる性格の傾向では、丙午生まれは「明るく行動が大胆で、無理だと言われることでも実現させられる強さがある」人だそうです。今年生まれた子どもたちは、将来世界をより良い場所に変えてくれるような世代になるかもしれませんね。

本年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

「お産の時に会陰切開してほしくないな」と思っているみなさんへ

こんにちは、副院長の石田です。

お産が近づいてくると気になることの一つに会陰切開があります。会陰切開が分娩時に行われることがある、ということ自体は初産婦の方でも多くが知っているものの、実際に「切る」と想像すると不安や恐怖を感じてしまう人もいるでしょう。そこで本日は、会陰切開をどう考え、どのように向き合っていけばよいのかについて一緒に考えていきたいと思います。

会陰切開とはなんなのか

会陰切開とは、赤ちゃんが産道を通りやすくするために会陰部(腟と肛門の間)をハサミで切開する医療手技のことを指します。経腟分娩を経験する女性のうち、会陰切開の有無にかかわらず実際にはおよそ90%前後の方に何らかの会陰裂傷が生じるといわれていますが、切れ方によっては複雑に広がり治りにくくなるケースもあるため、自然に裂けてしまうよりも重症化しにくい方向へ誘導したり、後で縫合しやすいきれいな傷を作る目的であらかじめ会陰切開を行うことがあります 1)。また、母体や赤ちゃんの状態が悪化し分娩を急ぐ必要がある場合、あるいは吸引分娩・鉗子分娩など補助的な器具を使用する場面でも、安全性を高めるために会陰切開が必要となることがあります。切開を入れるタイミングは、赤ちゃんの頭が降りてきて出そうになる直前で行われるのが一般的です。

会陰切開の実際

いや、会陰切開が医療的に大切な処置なのは知っているんだと。それは分かるんだけどハサミでお股を切るなんて想像するだけで怖いから、できればそんなことしないで欲しいんだよってみなさん思っていることでしょう。そんなお母さんたちにここからは私の超主観的なアンサーになるんですけど、自分はお産前から会陰切開のことなんてあまり気にしなくてよいと考えています。というのも、前提として赤ちゃんが生まれる直前は陣痛もさることながら、腟と会陰も赤ちゃんの頭にゴリゴリ押し広げられてとても痛いんですよ。そんな中で「会陰切開すれば赤ちゃんがすぐ出てくる」「これでお産にしましょう」って伝えて「やらないで!」って断られたことは1回も無いです。というか、なんなら喰い気味に「いいから早く切って!!」って怒られたことは数えきれないほどあります。そのぐらいお産の瞬間って大変なんですよね。もちろん無痛分娩なら切開やその後の縫合も痛くないので気にする必要はないでしょう。会陰切開のリアルな現場はそんな感じなので、お産前からそれを気にし過ぎるよりはもっと分娩中の過ごし方とか楽しいことを考えた方が建設的なのかなというのが私の意見でした。

まとめ

ということで本日は会陰切開について少しお話ししました。たまに会陰切開を入れなければ縫わなくて済むと誤解されている妊婦さんもいらっしゃるのですが、お股を3kg近い赤ちゃんが通過するわけですから、上記の通り会陰切開の有無に関わらずほとんどのお産で大なり小なり切れます。そしてそもそも我々産婦人科医としても、切らなくて済むなら切りたくないんですよ。切らずに裂傷なしでお産になればそれで仕事が終わる上に、患者さんからは(何もやってないのに)名医的な雰囲気ですごく感謝されることが多いからです。それでも時にはお母さんの会陰を深刻なダメージから、そして赤ちゃんの健康を重大なリスクから守るためには躊躇なく行わなければなりません。もちろんその時の声掛けなどを打ち合わせるために当院のバースプランにも会陰切開の項目がありますが、とは言え妊婦さんたちはあまりそこに固執することなく、楽しく分娩に臨んでいただければと思います。

参考文献
1) Nicola Adanna Okeahialam, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 Mar;230(3S):S991-S1004.

ヒト受精胚と胎児の位置づけ

みなさんは

出産する前の胎児

受精卵が着床した受精胚

に対して位置づけや権利を考えたことがあるでしょうか。

ヒトの受精胚の位置づけと扱い

現行の日本の法律では、ヒト受精胚は「人」として扱っていません。ただし受精胚が「人」そのものではなくとも尊重されるべき存在であり、単に「物」扱いとして研究材料として扱ってはなりません(自然な考え方だと思います)。

*参照:厚生労働省 総合科学技術会議「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方

胎児の定義(産科婦人科用語集・用語解説集から)

ヒトの場合は妊娠10週から娩出するまでの児を指します。

その前に見える体は「胎芽(たいが)」と呼ばれます。

生存可能な胎児は相続、損害賠償請求権、遺贈の権利認められる

民法では、原則出生してから人権を持つので、出生前の胎児は権利能力は認められませんが、

相続、不法行為に基づく損害賠償請求権、遺贈

の3つについては、例外的に認められます。ただし、死産した場合はこれらの権利は認めれません

また胎児に対する刑事責任は問う事ができません。刑法上は胎児はまだ「人」として扱われないからです。

*胎児の権利に関しては法律事務所や司法書士事務所のホームページから多く記載されています。気になる方は一度検索し閲覧してみてはいかがでしょうか。

執筆 院長