Safe abortionについて考える

女性の健康を守るための安全な人工妊娠中絶ケア「Safe abortion」をどこでも行えるよう、WHOは2003年にガイダンス初版を刊行しました。

https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/42586/9241590343-eng.pdf

ということは既に20年が経っているのです。それまで日本はどうだったでしょうか?

WHOガイドラインでは

妊娠9週までの中絶は薬剤(メフィーゴ®︎パック)による人工妊娠中絶(推奨の強さ:強)を、

妊娠12週頃(日本では妊娠12週未満)の外科的人工妊娠中絶では真空吸引法(推奨の強さ:強)を

推奨しています。

また規則、政策及び人権面の検討事項に関する推奨事項として

「安全な中絶ケアへのアクセスの妨げ・適時のサービス提供の妨げは撤廃されなければならない」

とも明記されています。

日本では真空吸引法は2018年から(やっと)保険適応収載となり、

薬剤による人工妊娠中絶は2023年に始まったばかりです。内服法としてメフィーゴ®︎パックを扱える登録施設はまだ少ない状況ではありますが、現在日本で行う経口妊娠中絶薬のスケジュール方法は、日本産婦人科医会らが安全な中絶ケアを実現するため、有識者が熟慮し作成したものだと私は感じています。

人工妊娠中絶の方法を選択可能な海外では内服法(薬剤)か手術法(外科的)かは半々の施行率となっています。

薬剤による人工妊娠中絶か外科的人工妊娠中絶かは医療施設が決めるのではなく、妊娠した女性が決める権利であってほしいと思います。

埼玉県内でメフィーゴ®︎パックを扱う産婦人科施設https://www.linepharma.co.jp/search_du.php?pre=埼玉県

文責 院長

にしじまクリニックの入院生活

こんにちは、副院長の石田です。

産後の入院生活は妊婦さんたちが施設を選ぶ際に重要視することの一つだと思います。「できるだけ豪華なところがいい」とか「美味しい食事も付随するサービスも要らないからとにかく安く済ませたい」など人によって様々なニーズがありますが、皆さんはいかがでしょうか?そこで本日は参考までに当院の入院生活の特徴とそこに込める想いについてご紹介させていただきます。

当院の産後ケアに対する考え方

妊娠、出産は言うまでもなく体力的にも精神的にも妊婦さんに大きな負担がかかるイベントです。さらには出産前は意外に意識されていないことも多いですが、それに続く子育てもまた大変な作業です。そして、その出産と育児を繋ぐのが産後の入院期間です。それを踏まえて当院では、せめて産後の入院中に産婦さんの肉体・精神両面での体力をできるだけ回復させた状態で家にお帰しできるよう、以下のような取り組みをしています。

全室個室

相部屋だと赤ちゃんの泣き声や物音、においなどが気になったり気を遣ったり遣われたりしてしまいますが、当院は全室個室のため他の患者さんに気兼ねすることなくご自身のペースで入院生活を送っていただくことができます。また、現在では少しずつですが面会も解禁しているので病院に会いに来られたご家族とも周りを気にすることなく過ごしていただけます。

アロマサービス

当院では高い技術を持ったセラピストによるアロママッサージのサービスを産前から分娩中、産後まで提供しています。当院のセラピストが厳選した高品質なアロマオイルにより疲労した妊婦さんの回復が少しでも後押しできるようにオプションサービスを含むアロママッサージやシッツバスなどをご用意しています。また、上記の通り全室個室のためお部屋に用意したディフューザーで好みの香りでリラックスできるのも特徴です。

夜間の赤ちゃん預かり

産科施設や医療者によって様々な考え方がありますが、当院では産婦さんのご希望がなければ無理に24時間同室をお願いしてはいません。できるだけ母児を分離しない方が良いという考えもありそれ自体に反対はしませんが、当院としては家に帰るまではできるだけ気力体力を回復してほしいという想いから夜間等はナースステーションでお預かりするようにしています。ちなみにお預かりしている間はスタッフによる粉ミルクでの授乳になります。

アメニティーサービス

そのほか、シャワー室のシャンプーやコンディショナー、ボディーソープにJohn Masters OrganicやAesopなど日常的に使うにはちょっと高級なものを揃えたり、ダイソンのドライヤーを置いたりしてお産で傷んだ髪のコンディションを整えてもらえるようにしています。また、授乳中は頻繁に小腹が空きますが、好きな時につまんでいただけるようにラウンジに軽食やお菓子、飲み物をご用意しています。

まとめ

本日は当院の入院環境の一部をご紹介させていただきました。他にもスタッフみんなで話し合って用意したサービスがありますので、是非ホームページもご覧いただければと思います。繰り返しになりますが、にしじまクリニックはエビデンスに基づいた医療提供をベースにしながらも、産後のお母さんたちに可能な限り妊娠出産によるダメージを回復して元気に育児を始めていただけるように入院環境を整備しています。妊娠を契機に当院を受診してくださった患者さんには院内見学もご案内していますので、皆さんにとって快適に過ごせそうな空間かどうかを是非ご自身の目で確認してみてください。

ずっと顔が見える状態なら難産かも

妊婦健診での4D画像、特に赤ちゃんのお顔を診察中に共有できることは、産婦さんご家族のみならず、私としても嬉しくなるものです。

しかしながら赤ちゃんは常に動きますし、また胎盤の位置によっては4Dが見えにくいことこともあります。例えば、

顔の目の前に手足があると見えにくい

右腕が前に出ている状態。かつ児頭が前屈しているのでこの後児の動きがないと3DのX, Y, Z軸を調整しても顔面は見えにくい

のです。要は

赤ちゃんの顔面が真上にあり、手足や胎盤が顔の前にない

、これが赤ちゃんのお顔を3D/4Dとしてとらえることができるポイントとなります。ただし、

顔面が真上でなくても、プローブの押し方や位置を少し変えれば斜め〜横顔は確認できる

顔面が真上ではないが、プローブを少し斜めにずらすことで左側面からの隙間から顔をとらえている

ことがあります。また4Dを利用して時間軸を巻き戻し、ベストショットをとらえることも心がけています。

しかしながら経腟分娩時、顔面が真上にある状態だとむしろ困ってしまうことがあります。頭位の場合、通常赤ちゃんは顔を下にして恥骨をくぐり抜けるようにして娩出されます。

経腟分娩時に顔面が真上の状態、いわゆる3D/4Dで顔が見える向きであれば

児頭が反屈した状態:前方前頭位(←1)

第2回旋が通常と反対:後方後頭位 (←2)

と回旋異常をきたしていることになります。またはいつまで経っても児頭が恥骨をくぐり抜けることなく下降が見られない場合は

児頭骨盤不均衡(←3)

の疑いがあるのです。

これら1, 2, 3の要素は難産の可能性があります。

35〜36週以降になると児頭が骨盤入口面に接することにより顔が見えなくなる(横向きになる)ことがありますが、実はそれは正常な回旋の始まりの準備であり、産婦さんと赤ちゃんにとっては良いことかもしれません。

文責 院長

子宮収縮薬(陣痛促進剤)のあれこれ

こんにちは、副院長の石田です。

予定日超過などの何らかの医学的な理由や無痛分娩を含む社会的な理由で分娩誘発を行う妊婦さんは少なくありません。そんな時に使用するのが子宮収縮薬と言われるお薬です。このお薬にはいくつか種類があって、医師は病歴や診察所見をもとにその患者さんに最も望ましいと思われるものを選択して使用します。医師によって選び方に個性がありますが、大雑把な使い方は共通しているため我々からすると個々の患者さんの使用薬剤を見るだけで現在の状況がざっくりと把握できます。しかし患者さんからするとどんな理由で昨日と今日の子宮収縮薬が違うのかが分かりにくくて不安になるかもしれないので、本日はこれについて少し解説したいと思います。

プロスタグランジンとオキシトシン

子宮収縮薬にはおおまかにプロスタグランジンとオキシトシンという2種類の薬剤があります。いずれも分娩の進行に重要な役割を担うホルモンで、本来は体内で自然に分泌されて陣痛発来に寄与しますが、人工的に陣痛を起こしたい場合にはお薬として妊婦さんに投与します。細かい使い分けは長くなるので割愛しますが、プロスタグランジンは現在点滴で使用する注射薬、口から飲む経口薬、腟の中に入れて使用する坐薬の3種類が日本で使用できます。


ところで、分娩の三要素という言葉をご存知でしょうか?娩出力(陣痛の強さ)、産道(赤ちゃんの通り道)、娩出物(赤ちゃん)という3つの要素が噛み合って初めて分娩は成功するということで、要は陣痛が弱い、産道が通りにくい、赤ちゃんの大きさや向きが良くないなどどれか一つでも状況が許さないと赤ちゃんは生まれてきてくれないわけですが、プロスタグランジンはこの中で産道の状態を改善する力が大きいとされています。そのため「子宮の出口が固く閉じてて陣痛を起こしても出てこられなさそう」という患者さんにまず使うことが多いです。この製剤は永らく点滴薬と経口薬のみでしたが、最近になって世界に遅れて日本でも経腟坐薬が発売され使われ始めました。坐薬に関しては国内では新しい薬なのでなかなか使い方に迷う施設が多いと聞く一方で、院長と私はそれぞれ海外で似たような薬を使い慣れていたためか、気がつけば意図せず当院が県内で最も使用実績のある施設となっているようです。


オキシトシンは点滴薬で、陣痛(娩出力)を強くする効果がとにかく強いです。また、プロスタグランジンよりも使用に関しての制限が少なく使いやすいのも特徴です。その一方で子宮の出口を開きやすくする効果はあまり期待できないため、「既にある程度出口が開いていて、あとは赤ちゃんを押し出してあげるだけ」という状況で使うことが多いです。

まとめ

というわけで本日は分娩誘発に用いられる薬剤について解説しました。まとめると、分娩誘発の基本戦略は様々な方法で産道を通りやすくしてから最後にオキシトシンで陣痛を誘発してお産にするというのが一般的です。子宮の出口である頸管はBishop scoreという国際的に用いられる指標で6点以上なら熟化しているとみなされますが、薬剤の種類や剤型の選択は子宮頸管の状態だけでなく妊婦さんの年齢、週数、経産数、体型、基礎疾患の有無、そして赤ちゃんのサイズ等様々な要因を考慮した上で医師の経験や好みも織り交ぜて決定されます。子宮収縮薬に関しては各種メディアで定期的に危険性が訴えられることで何か悪役のような扱いを受けることがありますが、使用基準や方法は膨大に積み上がったエビデンスに裏打ちされたガイドラインで厳格に定められており、適切に使用される分には極めて安全な薬剤です。それどころかこれらの薬がなければ多くの母子の命が失われていたことに疑いの余地はありません。分娩誘発と言われるとなんだか怖くなってしまう人もいるかもしれませんが、主治医によく話を聞いた上で安心して臨んでいただければと思います。

どの医師も「産婦人科ファーストタッチ」ができるように

昨年、株式会社じほう から私院長と副院長石田が執筆した「産婦人科ファーストタッチ」が発売されました。本書は研修医や総合診療医をターゲットした、いわゆるレジデントマニュアルです。

https://www.jiho.co.jp/shop/list/detail/tabid/272/pdid/54453/Default.aspx

私が国境なき医師団、石田がジャパンハートに所属していた経緯があり、クリニックの医師としてはめずらしく国際医療支援を行っていた医師二人がタッグを組み、にしじまクリニックは富士見市のみならず埼玉県の周産期医療および婦人科医療を提供しています。

日本でのガイドラインを遵守し診療を行うのはもちろんのこと、海外で学んできた経験から、先日当院でも導入したメフィーゴ®︎パックなど、一早く海外で主流の診療および治療を導入できるのことが当院の一つの強みです。

私は国境なき医師団の産婦人科医として、ナイジェリアに派遣され産科救急医療の携わりました。当時、上級医は「ここの産科医療は20年遅れている」と言っていました。医療機器でいえば分娩中の胎児監視としてCTG(胎児心拍数陣痛図)がない、オキシトシンの流量調節を行うための輸液ポンプがない、高価で壊れやすい経腟超音波がない、など、物資が限られているなか工夫した診療を行う必要がありました。

一方で、分娩誘発においてミソプロストールを用いるプロトコルがあったり、衛生環境などの点からMVA(真空吸引法)が採用されていたり、日本でも早く導入されると良いな、と思うことも多々ありました。

日本でまだ馴染みがない診療および治療を学ぶため、バイブルとして熟読したのが国境なき医師団の産科・新生児科ガイドラインでした。

https://medicalguidelines.msf.org/en

このガイドラインに日本のガイドラインを照らし合わせ、そして私と石田の経験を掛け合わせ作成された本、それが「産婦人科ファーストタッチ」なのです。

「産婦人科ファーストタッチ」は「監修のことば」どおり、まだ第1刷目であり成長途中です。今後産婦人科専門医でなくてもどの医師も本書を参照して産婦人科患者をファーストタッチできるよう、また研修医が産婦人科ひいては海外医療支援に志してもらえるよう、第2刷目以降も本書を発行できれば幸いです。そして私自身もevidenceとexperienceを積み重ね、産婦人科に関わる全ての方々に貢献できればとの思いで日々努力してまいります。

クリニックで働いていても本書のようなレジデントマニュアルを作れる、というもう一つの当院の強みを生んでくれた副院長石田先生、新潟市民病院 産科部長 倉林先生、株式会社じほう様、そして今まで私と関わり合いのある患者様および医療関係者様に感謝申し上げます。

にしじまクリニック院長 西島翔太

産婦人科ファーストタッチ訂正情報は以下リンクをご参照ください。

https://www.jiho.co.jp/Portals/0/data0/guide/teisei/54453teisei_2.pdf