チームビルディング

皆さまの中でも会社勤めの方がいらっしゃるかと思います。会社、または部署として各チームはうまく成り立っているかを考えたことはございますか。

以前、チームSTEPPSの取り組みについてお話しさせてもらいました。

https://nishijima-clinic.or.jp/blog/2019/09/17/patient-safety-day/)

私が解釈するチームSTEPPSとはチームに患者さんを含め、もしくは患者さんを取り囲むようにスタッフ・部署がチームを構成し、垣根のないチーム医療を行うことだと思っています。

私院長はこれがチームを整える(チームビルディング)ための基準とし、にしじまクリニックに浸透させたいと考えています。

当院は月1回、スタッフ全員を対象としたミーティングを行っています。先月は、チームビルディングの重要性と各スタッフ・部署の協調性の程度を感じてもらうため、レクチャーを行いました。

このレクチャーは、まずチームスタッフとして構成される各スタッフ・部署および業種を挙げてもらいます。その後患者さんを起点に、医療提供を行う際に誰に頼りたいか、必要なのかを紐付けていくのです。

例えば患者さん→医師→助産師→、、、といった具合に進んでいきます。

紐付けていく中で、部署および業種によっては重複する場合があり、これがポイントで、今回は

・助産師

・看護師

・看護助手

・医療事務

が紐付けにおいて重複した結果となりました。

重複したこの4つの業種は当院の各スタッフが、医療提供を行う際に必要としている、されている所であり、そしてこの紐付けの結果は、にしじまクリニックでチーム医療を行う際の『縮図』でもあります。

直接お産に関わることはない看護助手が重要視されていることを確認でき、私は大変嬉しく思いました。当院の看護助手は基準とマニュアルに沿って感染予防のための清掃や物品の整理、ひいては医療業務全般を支えてもらう職種で、私自身もチームビルディングにおいて看護助手はなくてはならない構成だと考えます。

どんなに個人一人が優秀でも、適切な医療を提供することは不可能です。お互い支えて合って医療を行っている事を決して忘れてはいけません。場合によっては、職種を超えて助け合えばよいのです。スタッフ間も患者さんもチーム内で何でも言い合える(隔たりなく主張ができる)アサーティブなコミュニケーション環境がチームビルディングにおいて一番重要な要素なのです。それは患者安全・医療安全につながります。

クリニックならではのチームの結束と強み、これを生かせる『にしじまクリニック』を作ってまいります。

先天性風疹症候群

こんにちは、副院長の石田です。

皆さんは風疹という病気をご存じかと思います。はしかに似た症状を呈しますがそれほど重症化せずに終わるため三日麻疹(みっかばしか)と言われることもある病気です。普通は熱も高くならず症状がいまいちはっきりしないまま終わることもある大したことない感染症ですが、妊婦さんが罹ると大変です。というわけで今日は先天性風疹症候群についてお話ししたいと思います。

先天性風疹症候群とその歴史

妊婦さんが特に妊娠早期に感染することにより、流早産をはじめ白内障、心奇形、難聴などの先天的な異常を赤ちゃんに引き起こす感染症です。オーストラリアの眼科医であるGregg先生が1941年に新生児の先天性白内障とお母さんの風疹感染に関連があることに気づいたのが始まりでしたが、その背景には1940年に風疹が流行ったということがありました。当時はまだワクチンも存在せず周期的な大流行が存在していて、特に1962〜1965年の世界的大流行ではアメリカだけでも12.5万人の風疹患者が出た結果、1万件以上もの流産と2千人以上の新生児死亡、そして2万人以上の先天性風疹症候群の新生児が出生しました。日本でもそれから少し遅れて大流行し、特に沖縄では多数の被害者が出て社会問題になったということです。その後風疹ワクチンが開発され予防戦略が確立したことから徐々に風疹患者は少なくなり、現在ではほとんど先天性風疹症候群を見なくなりました 1)。

風疹抗体とワクチン

日本ではほとんどの人が風疹ワクチンを接種していますが、実際には風疹抗体が低い人が結構います。これは本来2回接種が必要なのに1回しか受けられていない世代がいたりとか(こちらのサイトから世代を確認できます)、ワクチン摂取の普及に伴い風疹ウイルスに暴露されなくなったため免疫が強化されなくなったりといった原因が考えられています。そのためか日本ではたまに小規模な流行が起きることがあります。風疹ワクチンは生ワクチンと言われるタイプの製剤なので妊婦さんは打てません。なので妊娠中はとにかく伝染されないようにするしかないのですが、一旦お産が終わればいつでも接種できるので当院では希望の方には産後入院中に打てるようにしています。

埼玉県に在住の旦那さんへ

ご本人が気をつけるのはもちろんですが、ご家族にも家に風疹を持って帰らないように注意していただきたいです。お子さんに関しては基本的に予防接種を2回されていると思うので大丈夫のはずですが、問題はお父さんです。今のお父さん世代は1回接種の時代の人が多いため感染の危険が高いと考えられますが、埼玉県では妊娠を希望する女性だけでなくその配偶者、風疹抗体価が低い妊婦さんの配偶者の風疹抗体価測定を無料で提供しています 2)。検査に煩雑な手続きは必要なく、受診して所定用紙に記載したら採血して終了です。事前に用意するものもありませんので、例えば夫婦で妊婦検診にエコーを見に来ていただいたら、待ち時間に書類に記入して検査すればOKなんですね。もし抗体価が低ければ当院で予防接種を提供することもできます。

まとめ

赤ちゃんの病気はその多くが偶発的で予知することが難しいですが、その中にあって先天性風疹症候群は数少ない予防できる病気です。厚生労働省が打ち出した追加対策として1962/4/2〜1979/4/1までの生まれの男性が今年から3年間、ワクチン接種を無料で行えることとなりました 3)。この中にはもう家庭内の妊娠が縁遠くなるご年齢の方も含まれていることと思いますが、自分の家族だけでなく街中ですれ違う名前も知らない妊婦さんとそのお腹にいる赤ちゃんにまで想いを馳せて、社会全体で抗体検査や予防接種を推進していければと思います。

1) Centers for Disease Control and Prevention: https://www.cdc.gov/vaccines/pubs/surv-manual/chpt15-crs.html

2) http://www.pref.saitama.lg.jp/a0701/fuusinn-kanzyazouka.html

3) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index_00001.html

朝練、NCPR編

皆さま、朝はお強い方でしょうか。

最近、家内はウォーキングに励んでおり、長男は持久走が近くなってきたので家の周囲をグルグル走っています。

私は、陣痛の待機者や外来時間外対応がなければ朝の診察前にオンライン英会話をします。

にしじまクリニックでは、救急医療に長けた副院長主催のもと、救急対応を朝活朝練として外来開始前にスタッフと行ってもらっています。体を動かすことで脳に刺激を与える、ということもありますが、何より救急対応を日常、毎日行うことで、体に叩き込む目的があります。

体に叩き込んでおきたい救急対応の一つとして新生児蘇生があります。お産後、赤ちゃんがぐったりしている場合や早産の時は決められた手順に従ってケアおよび蘇生を行います。これはNCPR(Neonatal Cadiopulmonary Resuscitation)と呼ばれ、国際蘇生連絡委員会(ILCOR)で提起された手技手順です。

NCPRは専門コース(Aコース)と一次コース(Bコース)があり、にしじまクリニックでは看護師および助産師、医師は全てこのNCPR Aコースを取得しています。さらに私院長はNCPRのインストラクターを保持しており、当院でNCPRを取得するためのコースを年に数回主催しています。

当院の価値観(企業理念に近いものです)として、『エビデンスに基づいた、親身ある産婦人科医療とサービスを提供する』を掲げています。手技に関しては、誰が行っても技術と統一がはかられ、かつクリニックならではの親近感ある医療およびサービスをこの朝活からでもアップデートしていきます。

クラミジアワクチンの可能性

こんにちは、副院長の石田です。

皆さんはクラミジアという病気をご存知でしょうか?Chlamydia trachomatisという病原菌が原因になる、いわゆる性病です。日本では最も多い性病の一つで平成30年では全国の報告数が25,000件以上でした 1)。男性では尿道炎、女性では頸管炎や子宮内膜炎を起こしますが、オーラルセックスによる咽頭炎も増加しており感染拡大の一因になっています。女性の場合は不妊の原因になったり、出産の時に赤ちゃんに感染すると肺炎や結膜炎の原因となるため特に気をつけなければなりません。

クラミジアは症状が出にくいことも感染を止めるのが難しい要因の一つです。特に女性の子宮頸管炎の場合9割が無症状と言われており、実際には報告件数を遥かに超える感染者が存在していると考えられています。そんなこんなで実は恐ろしいクラミジアですが、このたびThe Lancetという雑誌にワクチン開発に関する論文が掲載されました 2)。

どんなワクチン?

イギリスとデンマークのチームが発表した論文によると、新開発したワクチンを19~45歳の35人の女性に投与したところ注射部位の軽度の痛み以外には明らかな副反応は無く、今回試された2種類のワクチンとも(優劣はあったけど)被験者に免疫がつくことが確認できたそうです。本研究はワクチンの安全性を検証するための治験でしたが、今後は大規模臨床試験で効果、安全性ともさらに高いレベルでの評価をしていくそうです。

まとめ

今回は第1相試験なので実用にはまだまだ時間がかかりますが、本当に有効なワクチンができればHPVワクチンのように思春期を迎える前に投与することで性病を予防し、感染拡大を防げるかもしれません。近い未来に当院でも地域の患者さんたちに提供できる日が来ることを心待ちにしたいと思います。

1) 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0411-1.html

2) Sonya Abraham, et al. Lancet Infect Dis. 2019 Aug 12. Pii: S1473-3099(19)30279-8

タピオカドリンクで腸閉塞

こんにちは。

本日は少し気分を変えて、とあるブームに関するトピックをお話しします。

皆さん、タピオカドリンクはお好きでしょうか。私院長は飲んだことないのですが・・・。一年半前、ベトナム在住の弟が「日本でタピオカブームは再来する!」と宣言していました。どうやら予言は的中したようです。

以下、朝日新聞デジタルのサイトからのニュースです。

https://www.asahi.com/articles/ASM8R6DPHM8RUHBI030.html

ニュースを要約すると、『ベトナムで、とある男性がタピオカの過剰摂取で腸閉塞となり、手術をしました』とのことです(うちの弟の話ではありません)。

怖い話ですね。ただし、あまり人ごとでもないかもしれません。

妊娠中、胃腸の動きは鈍くなります。1)

特に妊娠初期は、ホルモンバランスの変化から便秘傾向が顕著となりますし、消化しにくいタピオカを過剰摂取したら・・。またタピオカドリンクは、キャッサバというイモが主材料なので、イモとしての糖質だけでなく、ミルクティーとしても糖分の摂りすぎは目に見えてますよね。

なお、妊娠中の方々は『偽性腸閉塞』という病態にも注意が必要です。2)

これについてはまた後日お話できればと思います。

1)イラストで学ぶ妊娠・分娩・産褥の生理

2)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjgs/45/3/45_45.326/_pdf