赤ちゃんの性別

こんにちは、副院長の石田です。

妊婦さんとそのご家族にとって赤ちゃんの性別は楽しみなことの1つです。超音波検査だと妊娠10週台中盤以降で判断しやすくなってくるため17週前後くらいで健診に来てくださった方に関しては「性別知りたいですか?」と伺うようにしていますが、実際に知らせると悲喜こもごもといった方もいらっしゃいます。本日はそんな性別判断の検査についてです。

性別の決定は難しい

性別を超音波で判断するのは実は結構難しいです。お股がきれいに写せるかどうかは赤ちゃんの姿勢やへその緒の場所なんかにも左右されますし、男の子の場合はおちんちんがあるので分かりやすいですが、女の子の場合は無いものを無いと言い切るのが結構チャレンジングです。以前勤めていた別の病院では、妊娠中にご両親が外来担当医から女の子と聞いていたのに産まれたら男の子だったということが1回だけありました。100%で決めるには羊水を採取して染色体検査をするのが確実ですが、性別のためだけにそこまでする人は見たことがありません。

性別確定のための新テスト

そんな感じで日本では我々産婦人科医が頑張って赤ちゃんのお股を映すわけですが、実は海外では妊娠7週くらいから性別が分かる検査があります。お母さんの血液中に混ざっている赤ちゃんの遺伝子(cell free DNA)を調べることによって性別を判定するという方法で、2010年にオランダのチームが約200人の妊婦さんを検査したところ100%正確だったとした論文を出しました 1) 。ロイターやThe New York Timesなどでこのことが記事になったのもその頃で、その後欧米では割とお馴染みになりつつあるのかざっと見ただけでもいくつかの検査会社がウェブサイトで案内を出していました。実際には妊娠9〜10週以降で受けていることが多そうですが、例えばPrenatal Genetics Centerというところだと$290で検査ができ、結果も7営業日で報告してくれるそうです 2) 。(オプションで3日で検査結果を出してくれる迅速サービスもあるみたいです。)また、驚くことに通販を利用して自宅で簡単に検査できるようなキットを販売しているSneak Peekという会社もありました 3) 。こちらはなんと$79です。

そんなに早く性別が分かる必要があるのか

「性別なんて気になるけどそんなに早く知らなくてもいいんじゃない?」という人がほとんどかと思います。実際ほとんどのご家族にとって性別は興味があることではあるものの、それ自体が何かの決断を左右することはまずありません。しかし、ほんの少数のご家族にとってはできるだけ早く性別を確認することは医学的に重要な意味を持つことがあります。

赤ちゃんの先天性疾患の中には遺伝子は引き継がれるけど実際に病気が発症するのは男の子だけということがあります。具体的には血友病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、無ガンマグロブリン血症などです。また、先天性副腎過形成という病気の場合は胎児が女の子だと性器が男性化することがあります。この病気では妊娠成立後早期に妊婦さんへステロイド治療を開始することで赤ちゃんの症状が軽快する可能性があり、前述の先天性疾患も含めてこれらの場合にはできるだけ早く性別が分かることには様々な意思決定のためにも意味があると言えるのかもしれません。

まとめ

赤ちゃんの性別を知ることはほとんどの家族にとってとても楽しみなことです。赤ちゃんの身の回りの品を買いそろえたり、名前を考えたりするのはワクワクしますが、その一方で医学的に気にしている人たちもいらっしゃるんですね。ちなみに我々産婦人科医は毎回にこやかにエコーをしていますが実は結構真剣におちんちんの有無を確認しています。それでも見えないこともごく稀にありますが、もし万が一赤ちゃんの実際の性別がエコー結果と違ってもどうか笑顔で許してやってください。幸いまだそういった経験は1回も無いけど。

1) Schaffer PG, et al. Obstet Gynecol 2010; 115(1): 117-26

2) https://www.prenatalgeneticscenter.com/prenatal-baby-gender-test.html

3) https://sneakpeektest.com