にしじまクリニックでは毎月テーマを決めて朝練を行なっています。先月から今月にかけては、主に助産師を対象に難産における実際の手技の復習や確認を行いました。そこで今回は「肩甲難産」時の対処法にてご説明します。
肩甲難産とは、児頭娩出後、肩が産道にとどまってしまい児全体を娩出できないことをいいます。巨大児や比較的高い位置からの器械分娩で起こることがあります。また児が標準体重でも、産婦の過度な体重増加や低身長なども肩甲難産の要因となります。
肩甲難産に対し『HELPERR』手技を行います。
①Help
他スタッフはもちろん、産婦本人にも情報を共有し、以下の手技の強力を得ます。児全体を娩出できた後も新生児蘇生(NCPR)に備えます。
②Episiotomy
後の腟内手技(Enter the vagina)を見越して、できれば児背側に(正中)側会陰切開を行います。
③elevate Legs
産婦の両脚・膝を本人の胸側へ付ける様な体勢にします。夫もしくはパートナーが立ち会って入れば、ご協力をいただく場合があります。
なおこの体勢にて70%以上の肩甲難産を乗り切ることができるといわれています1)。
④Push the pubis
児の両肩径を狭めるために恥骨上を押します。いわゆる児の肩を「しぼませ」手娩出するイメージです。
⑤Enter the vagina
腟内手技にて児を縦から斜めの方向にし、児の娩出をはかります。
・ルビン法:母体前方にある児の肩を直接「しぼませ」ます。
・ウッズスクリュー法:児をうつ伏せ方向に回旋させます。
・リバースウッズスクリュー法:児を仰向け方向に回旋させます。
⑥Remove the posterior arm
母体後方にある児の腕を腟入口部に向けることで、両肩径を狭めることができます。
⑦Roll the patient
小骨盤の内径が広がり、児を娩出しやすくします。
以上各手技を列挙しました。順番どおり行う必要はなく、その時の状況に応じてこれらの手技を実践していきます。もちろん、産婦さんの適切な息みもあってこそこの「難産」を乗り切れますので、改めて当院限定公開のYouTubeコンテンツやオンライン講座などでお産の予習をお願いできればと思います。
(院長執筆)
参考文献;
1) MSF. Essential obstetric and newborn care. 2019