こんにちは、副院長の石田です。
産後健診でよく相談されることの一つに赤ちゃんの臍肉芽腫があります。湿っぽい赤ちゃんのおへそをのぞいてみると小さいイボみたいなのがあって驚かれるお父さんお母さんが多いですが、実際出血することもあったりで慌ててしまう気持ちもよく分かります。そこで本日は臍肉芽腫について簡単に解説したいと思います。
臍肉芽腫とは
「さいにくげしゅ」と読みます。生まれたての赤ちゃんのおへそには臍の緒がついていますが、これが通常10日前後で自然にはずれた後、さらに2週間ほど経つと皮膚細胞に覆われて普通のおへそになります。その過程で臍の緒の組織が一部赤ちゃんのおへそに残存して炎症を起こすと臍肉芽種になると考えられています。データは限られていますが頻度としては3~6%程度の赤ちゃんに見られるとされており、決して少なくないと言えるでしょう 1)2)。放っておくと感染症の原因になると考えられているため積極的に治療されることが多いです。
臍肉芽腫の治療
硝酸銀で化学的に焼いたり根本を細い外科用の糸で縛ったりする治療は日本に限らず世界でも長く行われてきました 2)3)。しかし硝酸銀はその採算性の悪さから国内では製造販売が中止されているため現在では院内で調剤可能な小児科でしかできないこと、また肉芽腫周囲の正常皮膚も一緒に焼いてしまうことがあり、根治性が高い一方で必ずしも「理想的な治療」とは言い切れない側面もありました。一方でステロイド軟膏の高い有効性も世界的にはよく知られているため、最近ではまずそちらの処方で様子を見るという施設も増えているように感じます 2)4)。(実際当院でもリンデロン®︎などを処方することが多いです。)また、日本ではあまり一般的でないかもしれませんが海外では家庭にある食塩を臍肉芽腫に塗るだけの治療を勧められることもよくあるようです。「え、そんなんで治るの?」って思うかもですが、実は最初に提唱されたのが1972年と歴史も古く、それに伴って有効性を示すデータもたくさんあるようで、イギリスのNHS(国民保健サービス)という政府機関の資料でも推奨されているため今後は日本でも普及するかもしれませんね 5)6)7)。
まとめ
本日はよくあるお悩みの一つということで新生児の臍肉芽腫について解説いたしました。治療法についても色々と書いてはみたものの、実際にどれが選ばれるかは赤ちゃんの状態や医療施設、医療者の考え方によっても異なってくると思います。皆さんにおかれましては、まずはかかりつけの産婦人科や小児科の医師とよく相談してみてくださいね。
1) Öztaş Tülin et al. Afr Health Sci. 2022 Jun;22(2):560-564.
2) Shigeo Iijima. J Clin Med. 2023 Sep 21;12(18):6104.
3) Shau-Ru Ho, et al. Pediatr Neonatol. 2023 Aug 25:S1875-9572(23)00137-7
4) Chikako Ogawa, et al. PLoS One. 2018 Feb 13;13(2): e0192688.
5) Hansa Haftu, et al. Patient Prefer Adherence. 2020 Oct 30:14:2085-2092.
6) Arka Banerjee, et al. J Pediatr Surg. 2023 Sep;58(9):1843-1848.
7) NHS. Derbyshire Community Health Services. Care of the belly button (umbilicus)