当院でのドゥーラ(Doula)

皆さん、『ドゥーラ』という言葉を聞いたことがありますか?

ドゥーラ(Doula)は陣痛開始から分娩中を通して身体的、心理的なお産のサポートができる専門家のことを呼びます。

欧米での分娩ではかなりメジャーな存在で、訓練を受けた方々がドゥーラとして分娩の支援を行い活躍されています。

陣痛開始から分娩中に医療従事者以外でサポートしてくれる方々は、ファシリテーターとして大きなインパクトを持つと私院長は考えています。

『難産』のテーマでも一部触れましたが、当院では、分娩の際のドゥーラを『アロマセラピスト』と『旦那さん、パートナー』を位置づけています。

https://nishijima-clinic.or.jp/blog/2020/02/25/難産とは①/

分娩に立ち会うことに関する研究のメタアナリシスでは、難産、補助経腟分娩、および帝王切開の発生率が、特に初産婦の場合に低下することが示されています。硬膜外麻酔による分娩中の鎮痛がルーチンで使用されない環境で、分娩早期に支援が開始される場合、医療従事者ではなく訓練を受けた方々が妊婦を支援することにより、分娩に対し最大の効果が生じるのです。*)

旦那さんに、出産ケアの一部として短時間の特別な分娩支援訓練を受けてもらい、分娩に立ち会う方法はとても良い選択肢と考えるのです。当院では『俺のお産講座』がそれに相当します。

欧米ではこのコロナ禍でも分娩の際にドゥーラの存在は失われていません。

https://www.vogue.com/article/covid-19-coronavirus-pregnancy-childbirth-support-doulas

当院では新型コロナウイルス流行の第二波の可能性に対する感染予防対策に加え、分娩立ち合いの重要性とのバランスを慎重に検討し、分娩の立ち合い制限を一部緩和できるよう準備を進めています。

(もちろん、無理はしないことをご承知ください。)

皆さん、『お産』と『新型コロナウイルス(COVID-19)』を向き合う覚悟はできていますか?

*参考文献;

Hodnett ED, Gates S, Hofmeyr GJ, Sakala C. Continuous support for women during childbirth.
Cochrane Database Syst Rev. 2015;7(7):CD003766.

幅広い視野でみる

先日ショッキングなニュースがまいこんで来ました。

https://www.msf.or.jp/news/detail/pressrelease/afg20200514nt.html?yclid=YJAD.1589497917.mjsZ5Fydcq2mIH0e8O4TBhGacQ8HbAYXT_ANPAdTO6zbwi9Wsdf9GIzheAlzxYCuQ_fJXfKIiu9axiY-

アフガニスタンの、国境なき医師団が運営に関わる病院が襲撃をうけたのです。

この病院、産婦人科なんです。赤ちゃんや母親にも被害があったようで、本当にいたたまれない気持ちになりました。

私院長は国境なき医師団に参加した経験があります。この経験は間違いなく刺激と現在の糧となり、どんな状況でも『考え抜く・考え続ける』大切さを学びました。

私はアフリカで主に産科救急に関わる医療提供を行いました。「アフリカ」と聞くと、一見何も物資もなく、医療レベルが低そうとお考えでしょう。

実際は違います。衛生環境は日本と比べものになりませんが、皆自信とエネルギッシュでモチベーションがあり登録されたメンバーで構成された国境なき医師団です。アフリカであろうが運営に関わる病院では欧米でのスタンダードな医療を垣間みることができます。例えば美容面でも帝王切開での皮膚縫合時はステープラー(医療ホッチキス)を用いずに吸収糸での埋没縫合を行っていました。帰国後、当院でも早速採用しました。

ただ、国境なき医師団で世界をみることが「幅広い視野」とは限りません。私は昨年から院長の職を引継ぎました。医業という面からもいろいろ学ばせていただき、それは皆様やスタッフとおかれた立場や状況をより理解しようと思うようになりました。

私は常に5年先の未来を見据えながら行動しています。また副院長石田もアメリカの医師資格のアップデートなどを今後行う予定など、お互いモチベーションと「幅広い視野でみれる」のが当院での医療提供の強みにつながってくると思います。

妊婦さんや患者様にとっては、アドバイスによっては少し厳しく感じる事もあるかもしれません。ただし、根底にあるのは病態などの症状を悪化させないためで、ただ単にエクスペリエンスのアドバイスではなく、世界をみたスタンダードな知見を交えている事もご理解いただければと思います。もちろん、改善してほしい点ございましたらお申し出ください。

逆に、医療介入が少なかったと感じられた場合、それは異常がみられなかったり皆様が当院での診療に理解され、しっかり指導などを守られて経過を辿ってらっしゃる証拠かもしれません。

にしじまクリニックでこれからも安心安全な医療とサービスを提供します。それを支えるのは常々言わせていただいている「エビデンス」とアップデートされた医療、そして私たちスタッフの情熱です。にしじまクリニックが、当該地域での、皆様の「価値」となるよう努力し続けます。

アフリカで診療を行っていた時、現地スタッフから「ここは患者にとってパラダイスなんだよ」と言われました。紛争地域の中、安心安全な医療が提供されるからです。『Paradise』を英英事典で改めて調べると『place of perfect happiness』とかかれてありました。地域の違いはあれど、目指している根幹に変わりはありません。

当院での胎児心スクリーニングについて

にしじまクリニックでは20週台と30週台の2回にわたって胎児心(臓)スクリーニングを行います。私院長と副院長石田が交互にスクリーニングを行い、診断精度を上げています。

妊娠20週健康診査(健診):日本胎児心臓病学会が定める胎児心スクリーニングのレベルⅠ〜Ⅱに相当したチェックとその他胎児臓器のチェック行います。当院では超音波外来として設定しております。

胎児の位置などの影響で全てのチェック項目を見きれなかった場合は、次回の妊娠24週の健診で見直します。

24週健診の終えた後、全症例に対し電子カルテへ取り込んだ画像の再チェックを行います。チェック項目に対し、画像が不鮮明の場合は妊娠26週の助産師外来で、GCT採血の合間に再度医師が胎児心エコーを見させてもらいます。

妊娠30週健康診査(健診):胎児心スクリーニングレベルⅡ相当の見直しを行います。週数が経つことで心臓も大きくなり、心臓の壁に小さな穴が見つかる場合もあるためです。

妊娠20週健診の超音波外来同様に見きれなかった場合は、次回の妊娠32週の健診で見直します。

以下、当院のスクリーニング用紙を添付しておきます。

胎児に心臓の異常が見つかったり、もしくは気になる所見があれば埼玉医科大学総合医療センターや県立小児医療センターの超音波外来を紹介させていただきます。

参考)

日本胎児心臓病学会 https://www.jsfc.jp/index.html

ガイドラインに基づく胎児心エコーテキスト

当院での消毒対応とご家庭でのヒント

にしじまクリニックでは『エビデンスの基づいた診療を提供する』事をモットーに、私院長と副院長石田はディスカッションを日々重ねています。

新型コロナウイルスに対し情報が錯綜していますが、『本当の知るべきこと』は先人達がエビデンスを積み重ねた医学書などからも十分参考になります。

例えば消毒に関して、にしじまクリニックでは、通常の感染予防策として以下添付したマニュアルで運用しています。これは新型コロナウイルスであろうとも十分対応が可能なのです。

このマニュアルのタイトル表記で『MRSA』とありますが、これは抗菌薬に耐性のあるブドウ球菌(Methicillin Resistant Staphylococcus Aureus)を指し、ウイルスの他、院内の感染・伝搬を絶つべき菌の一つです。

『消毒薬の抗微生物スペクトラムと適応対象』の表をご覧いただけますか。ここに菌とウイルスに対し消毒効果のある薬剤一覧が確認できます。

ウイルスは構造からエンベロープウイルスとノンエンベロープウイルスに分けられます。新型コロナウイルスはエンベロープ(いわゆる膜のある)ウイルスで、アルコール消毒剤がこのウイルスにダメージを与えることができます

ちなみに胃腸炎を引き起こす『ノロウイルス』はノンエンベロープウイルスで、アルコール消毒剤が有効ではありません。ではどのウイルスにも有効なのは何か、それは

次亜塩素酸ナトリウム

です。ちなみに哺乳瓶の消毒などに用いる

ミルトン(またはピジョン哺乳びん除菌料1%次亜塩素酸ナトリウム

(液体漂白剤のハイターは5%)

です。経済産業省のホームページ

0.05%次亜塩素酸ナトリウムで机やドアノブを消毒

を新型コロナウイルスに対し推奨しています。これは当院の消毒マニュアルでも濃度がほぼ一致します。

ミルトンを0.05%へ希釈するには20倍希釈になります。上の表をご確認ください。

*取り扱いを気をつけていただきたく、使いきる、ということで500mLペットボトルで用意するならミルトン25mL(ミルトンのキャップ1杯)を入れ、水で薄めて(希釈して)ください。要するに

ミルトン(1%次亜塩素酸ナトリウム)25mL +水475mL=0.05%次亜塩素酸ナトリウム希釈液500mL

となります。

その他注意点として、次亜塩素酸ナトリウムは金属腐食性と漂白作用があります次亜塩素酸ナトリウムで清拭(せいしき)し数分後、さらに水拭きすることも覚えておいてください

まとめとして、新型コロナウイルスに対する消毒は市販の手指アルコール消毒剤で対応可能なのですが、最近はマスクより市場に出回っていない気がします。それならハンドソープを用いてしっかり手指を洗いましょう。ただし、お子さまを含め『手洗い』を完璧にできる方々は少ないです。手洗いに合わせて、お互い触れる機会が多い物には0.05%次亜塩素酸ナトリウムで清拭しましょう。

参考)

サラヤホームページ https://pro.saraya.com/kansen-yobo/bacteria-virus/2019-nCoV.html

ミルトンホームページ https://milton.jp/ekitai/index.html

新型コロナウイルス感染症 市民向け感染予防ハンドブック(第2版)http://tmpuh.net/第2版新型コロナウイルス感染症_市民向けハンドブック_20200316.pdf

*下線で強調しましたが、『次亜塩素酸ナトリウム』と『次亜塩素酸水』は異なります。

NCPRインストラクター更新講習で感じたこと

先日、NCPR(Neonatal CardioPulmonary Resuscitaion:新生児蘇生法)インストラクターの更新のため、講習を受けてきました。

以前のブログで、にしじまクリニックでのNCPRに関する朝練の様子をお伝えしました。

朝練、NCPR編

蘇生手技が適切にできなければ、新生児仮死の赤ちゃんは救えません。逆を返すとNCPRのキーマニューバー(手技)である『人工呼吸』を確実にできれば、新生児仮死の90%は蘇生可能といわれています。

下に添付した写真の道具が赤ちゃんに人工呼吸を行うための器具・バッグで、このバッグから赤ちゃんの気道へ適切な空気および酸素を送ります(『陽圧換気』と呼ばれます)。

赤ちゃんの口にマスクをあてながらこのバッグを扱い、確実で有効な人工呼吸を行うことは手技の難度が高いのです。

お産に関わる医療従事者は、NCPRは必須の資格といえます。しかしながら適切に行えるかどうかは普段から設備や道具・器具に触れていることが重要で、『Low dose, High frequency training in hospital』が望まれています。よって当院での『朝練』の取り組みに間違いはないと確信した講習会でもありました。もちろん今後もNCPRに限らずこのような取り組みを続けていきます。

参考)

インストラクター対象フォローアップコース事前学習資料

NCPR e-ラーニング(https://www.ncpr.jp