子宮頸がん検診が今年も始まりました

こんにちは、副院長の石田です。

無事に今年も6月を迎え、にしじまクリニックが担当する富士見市、ふじみ野市、三芳町では子宮頸がん検診の季節となりました。この時期になると毎回「子宮頸がん検診を受けましょう!」というブログを書くのですが、今年ももちろん書かせていただきます。

さて、「がんは早期発見が大事!」とか言われるとなんかそんな気がしますよね。がんがまだ小さい時期に見つけられて、手術とかできれいに取りきれれば治りやすいんじゃないかと誰でも思うはずです。ただ、コトはそれほど単純ではありません。というのも、定期検査をすることで早期発見と予後の改善が達成できるようになるためには、次の3つの条件を満たす必要があります。

1)がんの悪性度が高すぎない
当事者の方もいらっしゃるので具体的な病名は避けますが、世の中には「そのがんになった時点でかなり厳しい」というような、進行が速く治療が効きにくいがんというものが存在します。そのような病気の場合、そもそも早期発見したところで治すのが極めて難しいため、定期検査をする意味がほとんどないわけです。

2)がんの悪性度が低すぎない
逆に、組織学的には悪性腫瘍に分類されるけど、そもそも進行がとても遅い(下手するとがんの進行より先に寿命を迎えることもある)、あるいは治療がとてもよく効くというがんも存在します。その場合もやはり早期発見にあまり意味はなく、特徴的な症状が出た段階でちゃんと検査を受けて診断できればOKということになります。

3)早期発見のための正確で低侵襲な検査がある
究極的には、がんを発見するには肉眼で見たり手で触ってみるのが一番かもしれません。でも、がんを早期発見するために毎年全身麻酔をかけながら頭蓋骨や腹腔を切り開いて中を触りながら確認するのは、患者さんの体への負担が大きすぎて現実的ではないですよね。患者さんの身体的な苦痛がほとんど無く簡便で、しかもがんがあるときに正確に見つけられるような検査がないと意味がないわけです。

下手すると1000種類以上あるとされるがんの中で、これらの条件を満たすのは残念ながらほとんど存在しませんが、その数少ない例外の一つが子宮頸がんなのです。子宮頸がんは正常細胞が年単位の時間をかけてゆっくりがん細胞に変化していきます。本格的ながんになってしまうと治療がとても大変なのですが、一方でがんになりきる前に見つけられると、比較的簡単な治療で完治させることが可能です。加えて検査自体は子宮の出口をブラシで擦るだけという簡便さでありながらそれなりの精度を備えているため、定期的に受けていただくことでメリットが得られやすいのが特徴です。

ということでいかがでしたでしょうか?定期的な子宮頸がん検診、お勧めです。当院の地域では、今年は奇数月生まれの20歳以上の女性を対象に11月までお受けしています。生理痛や更年期障害など、別の症状で受診された方でも通常診療と一緒に検査することも可能ですので、もしご希望の場合には受付で是非お声掛けください。

子宮筋腫と不妊症

こんにちは、副院長の石田です。

子宮筋腫という病気をご存知の方は多いと思います。子宮はもともと筋肉の塊のような臓器ですが、その筋肉細胞が変異を起こして丸い塊を作るのが子宮筋腫です。小さいと数mmから、大きいものでは赤ちゃんの頭ほどに育つものもあり、重い生理や不妊症などの原因になることが知られています。なかなか赤ちゃんができないカップルが婦人科を受診して初めて子宮筋腫を指摘されるということもあると思いますが、本日はそんな時にどうしたら良いのかを一緒に考えていきましょう。

子宮筋腫と不妊症

データによってだいぶバラつきがあるものの、子宮筋腫は5~80%程度の女性が生涯で罹患すると考えられています 1)。子宮筋腫は大雑把に、子宮の外側に突き出るように発生する漿膜下筋腫、子宮の筋肉の中に埋まるように発生する筋層内筋腫、そして子宮内に向かって突き出るように発生する粘膜下筋腫の3つに分類されます。この中でも受精卵が着床する内膜の形を最も歪めてしまう粘膜下筋腫や、大きな筋腫は妊娠への影響が大きいとされていますが、その一方で子宮の形にそれほど影響を及ぼさない筋腫であっても妊娠率を下げるというデータもあり、実際には子宮の形以外でも様々な経路で妊娠を妨げていることが推測されています 2)3)。

子宮筋腫のある不妊症の治療

上述のように子宮筋腫が不妊症の原因になることが知られている一方で、多くの子宮筋腫を持つ女性が特に問題なく妊娠・出産をされていることも事実です。そのため子供ができにくいカップルに子宮筋腫が見つかった場合でも、本当にそれが不妊の原因になっているかを確定的に診断するのはほぼ不可能です。そのため世界的に見ても不妊治療としての筋腫に対する治療をどのような患者さんに行うべきかは一致した意見がありません。ただ、筋腫が強く子宮内腔を歪めていたり、適切な不妊治療を複数回行ったにも関わらず妊娠できなかった場合は、積極的に治療が検討される傾向があります。治療は原則手術(核出術)になりますが、一部の例外を除いて筋腫核出後の妊娠では子宮破裂のリスクが高まるため、その後の分娩方法は帝王切開に限定されることには注意が必要です。また、術後は子宮の手術創の治癒を待たないといけないので、通常半年程度の避妊期間を設けるため、特に40代以降では妊活開始時期の遅れによる妊娠率への影響を考慮に入れる必要があります。

まとめ

本日は子宮筋腫と不妊症について解説しました。子宮筋腫があるからといって、必ずしもそれを摘出しないと妊娠できないというわけでもない一方で、もしその筋腫が不妊の原因となっている場合、下手に手術を遅らせるとそれによる時間のロスに繋がってしまうというジレンマのある難しさがこの問題にはあります。絶対的な正解が無いため判断が難しいですが、当事者の方におかれましてはご自身がどうするべきか、かかりつけの産婦人科でよくよくご相談してみてください。

参考文献
1) Patricia Evans, et al. Am Fam Physician. 2007 May 15;75(10):1503-8.
2) Jacques Donnez, et al. Fertil Steril. 2024 Jul;122(1):31-39.
3) Georgios Michos, et al. Cureus. 2023 Dec 23;15(12):e50992.

男性にも更年期障害があるってご存知ですか?

こんにちは、副院長の石田です。

当院では普段から更年期障害を心配している女性が多く受診されます。女性の更年期というと、ホットフラッシュや発汗といった血管運動障害だったりイライラ、ウツウツなどの精神症状が一般的によく知られていますが、実は似たようなことが男性にも起こるのをご存知でしょうか?実際、少子高齢化が加速度的に進む日本では一つの社会課題としても認識されており、昨年6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針 2025(骨太方針2025)にも小さく明記されています 1)。そこで本日は、当院の患者さんたちに直接関係はないんだけど、男性の更年期について少し解説してみたいと思います。

男性更年期障害とは

医学的には「加齢男性性腺機能障害」や、英語の”late-onset hypogonadism”の頭文字をとって「LOH症候群」と呼ばれたりします。男性ホルモンはそのほとんどが精巣で作られ、認知機能や性欲、筋肉量、排尿機能などを増加させます。思春期から20歳頃までに急激に分泌量が増加し、その後加齢とともにゆるやかに減少していくのですが、それとともに代謝や活動性、性欲などが減少して、いわゆる「男性更年期」と呼ばれる状態になるのです。実際の症状としてはほてりや倦怠感、イライラ、ウツウツ、性欲低下などが代表的です。診断は症状があることを前提ですが、血液検査では総テストステロンが250ng/dL未満、遊離テストステロンが7.5pg/ml未満が基準となります 2)。ただし注意点として、一般的にテストステロンは日内リズムがあるとされていて朝にピークとなるため、午前7〜10時頃の採血が推奨されます 3)。(ただし、高齢男性では日内変動が鈍化していることから、あまり気にしなくてもよいのではないかという議論もあります 4)5)。)

男性更年期の治療

必要に応じて女性と同様、ホルモン補充療法が選択されることがあります。男性ホルモンの注射やクリームを自分で塗ったりしますが、心不全や前立腺がんなどがある場合は使うことができません。また、日本では漢方を使うこともありますが、使われる薬は女性医学の三大漢方と呼ばれる当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸をはじめとして、いわゆる女性の更年期障害で使用されるものと興味深いことにかなり共通します。そのほか薬に頼らない方法としては、これまた女性と同様で質の良い睡眠、適度な運動、バランスの良い食事といった“丁寧な暮らし“が勧められています。

まとめ

本日は男性更年期障害について簡単に解説してみました。このブログを読んでくださっている女性の皆様におかれましては、「私、いよいよ更年期かしら…。」と思ったら少し周りを見渡してみましょう。意外と男性も同様に苦しんでいるかもしれませんよ。でもさすがに婦人科で男性更年期障害の診療をするのはちょっと違うかもなので、お悩みの男性はお近くの泌尿器科か内科にご相談ください。

参考文献
1) 経済財政運営と改革の基本方針 2025について
2) 日本泌尿器科学会/日本メンズヘルス医学会. LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き
3) Ezgi Caliskan Guzelce, et al. Best Pract Res Clin Endoclinol Metab. 2022 Jul;36(4):101683.
4) N Long, et al. J Fam Pract. 2015 Jul;64(7):418–419.
5) E David Crawford, et al. Curr Med Res Opin. 2015;31(10):1911-4.

更年期障害に対するホルモン補充療法のやめ時

こんにちは、副院長の石田です。

40代に入るとホットフラッシュや発汗、イライラ、ウツウツなど更年期症状が出てくる女性が多くいらっしゃいます。これらは年齢を重ねたことによる卵巣機能の低下のために女性ホルモンが少なくなった結果として起こります。治療としては不足した女性ホルモンを薬で補うホルモン補充療法(HRT)が一般的ですが、始めたはいいもののいつまで続けたらいいのか不安になっている女性も少なくありません。そこで本日はHRTの継続期間についてお話ししたいと思います。

ホルモン補充療法の継続期間

一般的には投薬5年目、もしくは60歳が近くなってきたら「そろそろやめますか?」と医師から声がかかりやすいのかなという印象があります。これは投薬5年目以降で乳がんの発生率が上昇する可能性を、そして60歳を過ぎると新規のHRT開始に関しては心臓発作や血栓の発症率が増加する可能性をそれぞれ示唆する研究があること、加えて何となく数字的にもキリが良いことからそうなっているのかもしれません 1)2)3)。ただ、実際にはHRTをどのくらい続けるべきかについては決まった見解はありません。女性ホルモンの欠乏症状は早ければ治療開始から数年程度で治ってくることが多い一方で、人によっては強い症状が10年以上続くこともあります。そのため日本国内だけでなく国際的にもHRTの継続期間については一人ひとりの女性のコンディションに合わせて調整していきましょうということになっています 4)5)。具体的には1年に1回は続けるべきかどうかを治療効果や年齢、検査などを踏まえて検討する約束になっています。

まとめ

本日はホルモン補充療法はどのくらい続けるのかについて解説しました。上記の通り、お薬を使用する期間については人によって差がありますが、一般的な話をすると目立った副作用が無く効果が得られている場合は2〜5年程度使う人が多いような気がしていますし、実際イギリスの政府機関のウェブサイトにもそんな感じで書いてありました 6)。いずれにしてもゼロリスクの治療はありませんので、治療によって得られるメリットと続けるリスクを天秤にかけながら判断し続ける必要がありますので、現在治療中の患者さんにおかれましては主治医としっかりコミュニケーションをとっていただくのが良いと思われます。

参考文献
1) Rowan T Chlebowski, et al. JAMA. 2003 Jun 25;289(24):3243-53.
2) Jacques E Rossouw, et al. JAMA. 2007;297:1465-1477.
3) Mary Cushman, et al. JAMA. 2004:292:1573-1580.
4) 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会. ホルモン補充療法 ガイドライン. CQ403.
5) T J de Villiers, et al. Climateric. 2016 Aug;19(4):313-5.
6) National Health Service. When to take hormone replacement therapy (HRT).

更年期障害かもしれないから血液検査しようと思ったときの話

こんにちは、副院長の石田です。

日本の人口ピラミッドからも分かるように、年々更年期世代の女性は増加しており、それに伴ってテレビや雑誌、インターネット上でも更年期に関する情報を目にしない日はないほどです。そうした影響もあってか、「更年期かもしれないのでホルモンバランスを採血で調べてほしい」と受診される方が少なくありません。そこで本日は、更年期障害の診断について解説していきたいと思います。

血液検査で確認できる更年期の指標

医学的に「更年期」とは、閉経を挟んで前後およそ5年間(計10年間)の時期を指します。この時期には卵巣が徐々にその役割を終えていく過程で、女性ホルモンであるエストロゲン(E2)が低下し、その一方で卵胞刺激ホルモン(FSH)は上昇していきます。そのため血液検査ではこの2つのホルモンを測定することが多く、施設や医師によって基準値はやや異なるものの、一般的にはE2が20を下回ると低値、FSHが30を超えると高値と判断されることが多い印象です。

検査する前に知っておくべきこと

さて、有用に見えるこれらの数値ですが、更年期におけるホルモン検査にはいくつか知っておくべき注意点があります。まず大前提として、ホルモン検査だけで更年期障害を診断することはできません。更年期障害は、ホットフラッシュや発汗といった血管運動症状や、イライラ・気分の落ち込みなどの精神症状などで知られていますが、同じような症状は甲状腺の病気やうつ病、心不全、重度の貧血などでも起こり得ます。そのため、更年期障害を疑った場合には、こうした他の病気ではないことを診察や検査で確認したうえで更年期としての治療を行い、症状が改善するかどうかを見て診断につなげていきます(逆にとりあえず更年期の治療を始めてみて、改善しない場合に別の病気を疑うこともあります)。また、閉経が近づけばホルモン値は前述のように変化していきますが、更年期症状が出るかどうか、そしてその重症度には大きな個人差があります。さらに言ってしまうと、ホルモン値は計測時期によって大きく変動することがあったり、更年期的な変化をする前に症状が先んじて出ることもあるのです。したがって、血液検査の結果だけで診断や治療が決まるわけではありません。

まとめ

このように言われると「検査する意味なくない!?」となりそうですが、実際特に40代後半の女性においてこれらの女性ホルモンの計測は、更年期の診断として有用ではないとされています 1)。ただ、40代前半以前の閉経にはやや若い女性など、なんらかの理由で補助診断的に計測することも多くあるため全く不要というわけでもありません。ご自身で更年期を疑われた場合、ついつい「採血して調べてもらわなきゃ」となってしまう方も少なくありませんが、まずは最寄りの産婦人科でご自身に何が必要なのかを主治医とご相談いただければと思います。

参考文献
1) 日本産科婦人科学会 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023 CQ407