こんにちは、副院長の石田です。
先月神奈川県の小学校がインフルエンザの流行により学級閉鎖になりました 1)。冬に流行するイメージが強いインフルエンザがこの時期に?ということで驚かれた方も少なくないと思います。ということで今日はインフルエンザウイルスに関してちょっとお話ししようと思います。
そもそもインフルエンザウイルスとは何なのか
インフルエンザは気道感染を起こすウイルスで、軽い風邪症状程度から重篤な肺炎まで様々な症状を起こします。実はA〜Dまで4種類の型があるのですが、このうち流行シーズンに人間に感染を起こすのはAとBなんですね。A型はウイルス表面に発現しているヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)というタンパク質の種類でさらに細かく分けられます。ヘマグルチニンは18種類、ノイラミニダーゼは11種類あり、その組み合わせでH1N1とかH3N2とか言われます。この組み合わせの多様性がインフルエンザウイルスが変異しやすい要因の一つなんですね。一方でインフルエンザBは系統別に分類されますが、最近の流行を形成しているのはYamagata型とVictoria型です 2)。
インフルエンザの検査と治療
診断は鼻腔粘膜のぬぐい液による迅速キットを使いますが、インフルエンザの季節では特に検査せずに診断してもよいというのが最近は一般的な考え方です。というのも日本では抗インフルエンザ薬が頻繁に処方されるものの、本来インフルエンザは大部分の人達にとってただの風邪と同じであり、症状も自然に軽快するため特別な治療を必要としないという背景があります。ただし、妊婦さんや高齢者の方、その他持病などで抵抗力が弱っている方に関してはしっかりと検査、治療が必要になります。
実は暑いところで結構流行る
インフルエンザウイルスは湿度と気温が低いとウイルス活性が高くなることが知られておりそれが冬の流行という形で出ているのですが、実は暑いところだと年間を通して患者さんが出ています。私が月1回働いているカンボジアでもインフルエンザはよく診ますが、日本国内でも沖縄は時期に関係なく感染するそうです。クーラーが普及したのが原因だとか、熱帯には途上国が多く栄養状態が悪いことが原因だとか諸説立てられては色々と研究されているようですがどの説も結局立証されていないということでした 3)。
まとめ
ということで簡単でしたが今回はインフルエンザウイルスに関するお話でした。特に妊婦さんは免疫が落ちているため重症化のハイリスクと言われており注意が必要です。予防には手洗い、うがい、マスクがとても効果的ですが、それに加えて予防接種はガイドライン上もお勧めされていますので是非受けるようにしてください。当院でも妊婦さんをメインに接種を開始しておりますので希望される方はお声掛けください。ちなみにワクチンは鶏卵を使用して製造されるため卵アレルギーだと打てないと思っている人が結構いますが、実は関係なく打てます。唯一の禁忌はワクチン自体にアレルギーが出たことがある患者さんとなっていますので、もし重篤な卵アレルギーがあったとしても問題なく接種しましょうというのが今のスタンダードですのでご安心ください 4)5)。ところで暑い場所でも患者さんが多いこと、ここ数年異常気象がどうとか言われていること、神奈川でこの時期に学級閉鎖などがあるとインフルエンザの今後の流行がひょっとしたら温暖化とかに影響されるのかな?とか考えてしまいますね。今後さらなる研究が進むことを期待したいと思います。
1) https://www.kanaloco.jp/article/entry-194678.html
2) Samei W. Bolt or, et al. In: Stat Pearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2019 Jan-
3) Cecile Viboud, et al. PLoS Med. 2006 Apr; 3(4): e89
4) CDC Flu Vaccine and People with Egg Allergies. https://www.cdc.gov/flu/prevent/egg-allergies.htm#algorithm
5) Greenhawt MJ. Pediatr Ann 2013 Jul; 42(7): 122-7