女性の健康と気候変動の関係

こんにちは、副院長の石田です。

今年の夏も暑いですね。地球温暖化のせいか年々夏の暑さが過酷になる中で、私が通っていた小学校では6年生の伝統行事であった海の遠泳が、この暑さから子供を守りきれないという判断で終了してしまったそうです。
さて、そんな気候変動ではありますが、実は男性以上に女性の健康に大きな影響があるということをみなさんはご存知でしょうか?これは男女の生物学的な違いだけでなく、女性がもつ傾向のある社会的・文化的な役割も影響していると言われています。そこで本日は女性の健康と気候変動の関係について少し解説していきたいと思います。

気候変動による女性への影響

「気候変動」と聞くと「地球温暖化」という言葉が真っ先に思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか?実際に化石燃料の使用により発生する温室効果化ガスの影響で、地球の平均気温は上昇し大気汚染も深刻化していると言われています。これらの現象はさらに、水害や食糧生産の不安定化と飢餓、疫病の蔓延など様々な問題へと繋がり得るわけですが、これらは妊婦さんを中心として女性の健康に対してより大きな影響があることが知られています 1)。例えば妊婦さんが猛暑にさらされると、早産や死産、低出生体重児のリスクが上昇することが分かっています。(結論は出ていませんが、体温調節のための血流再配分による子宮血流の低下や脱水による羊水量の減少などが原因として考えられています 2)3)。)
大気汚染は心肺機能への影響が兼されますが、PM2.5という汚染物質が増えると、男性以上に女性で心臓発作のリスクが上がることが知られています。また、大気汚染でも猛暑と同様早産や死産、低出生体重児のリスクが上昇します。実際にアメリカのカルフォルニア州のある地域では、火力発電所が閉鎖してからの10年間で早産が27%減少したというデータもありました 4)。
そのほか注目すべきは水害の影響です。アメリカでハリケーン被害にあった妊婦さんはそうでない方と比べて低出生体重児のリスクが2〜3倍になったことが分かっています。加えて妊婦さんに限らずハリケーンに被災した女性では性的なものを含めた暴力被害にあうリスクが3倍程度に上昇したことも判明しました 1)。

まとめ

本日は気候変動と女性の健康について少しお話しさせていただきました。環境問題が体に良くないことは皆さんご存知かと思いますが、より女性に負担がかかりやすいことまでは知らない人も多かったのでは無いでしょうか?加えてこれらの影響は貧困層や有色人種など、社会的に不利に扱われる機会の多いグループにも偏っていることが知られており、弱い立場の人ほどダメージが大きいことも問題視されています 5)。これから生まれてくる赤ちゃんたちも含めて地球に住むみんなが気持ちよく過ごせるように、一人ひとりが自然環境について考え、行動を起こすことが大切ですね。

参考文献
1) Emily Sbiroli, et al. J Clim Change Health 2022;8:100169.
2) Louisa Samuels, et al. Int J Biometeorol. 2022 Aug;66(8):1505-1513.
3) Siyi He, et al. Environ Int. 2018 Feb;111:295-300.
4) JA Casey, et al. Am J Epidemiol. 2018;187(8):1586-1594.
5) American College of Obstetricians & Gynecologists. Committee Statement Number 30. July 2026.