胎児先天性疾患の早期発見のための取り組み

こんにちは、副院長の石田です。

先日他院で妊娠の診断となった患者さんがにしじまクリニックを受診されましたが、その方は分娩施設をどうやって選んだらいいか分からなくてご相談に来られたということでした。

確かに妊娠した時に産婦人科を選ぶのって大変ですよね。ネットやママ友の口コミなんかも参考になると思いますが、実際に行われている医療がどの程度ちゃんとしているかを知るのは容易ではありません。何なら我々専門家でも他地域の病院の実態は分からないことも多いです。そこで本日は手前味噌ではありますが、当院での取り組みの一部をご紹介させていただこうと思います。

赤ちゃんの奇形

先天性疾患というと本当にたくさんの病気が存在しますが、妊婦健診で見つかる確率が高いのは超音波で分かる奇形です。胎児奇形は概ね2〜4%の赤ちゃんに見つかりますが、これらは大きく大奇形と小奇形に分けられます 1)2)。大奇形というのは放置すると医学的、あるいは社会的に損失を伴うため確実に治療を要するようなもので、具体的には心臓や腸などの内蔵や骨格の奇形を指します。一方で小奇形というのはそれ自体が生命や機能に異常をきたさないもので、見た目の問題だけという疾患です。一般的に妊婦健診で重点的に検索されるのはもちろん大奇形です。

当院のシステム

当院では可能な限り赤ちゃんの大きな疾患を見逃さないようにいくつものステップで確認しています。

1. 妊娠11〜13週:以前院長のブログでもご紹介いたしましたが、この時期に赤ちゃんの首の裏が厚く浮腫んだりする場合にはダウン症などの染色体異常を疑う必要があります。染色体異常がある場合は大奇形を伴うことが多いですが、当院では英国のFetal Medicine Foundation(FMF)という胎児診断に関する組織の認証を受けた院長と私がしっかりと超音波で確認しています。
2. 妊娠20〜21週:当院ではこの時期の健診を「超音波外来」として赤ちゃんに病気がないかをチェックしています。確認の範囲は中枢神経、顔面、胸腹部臓器、脊椎、四肢、臍帯などですが、チェック項目はリスト化してあるため、どちらの医師を受診しても同様のスクリーニングが受けられます。
3. 妊娠30〜31週:妊娠中期の超音波外来で問題なければ大丈夫なことがほとんどですが、当院では万全を期してこの時期にも再度、赤ちゃんの心奇形を中心にスクリーニングをかけています。その際には(診療状況によりますが)原則的に超音波外来の時と違う方の医師が担当することで目を変えてダブルチェックができるように配慮しています。
4. 出生後:通常の妊婦健診に加えて上記のようなステップを行っていても出生前の診断が難しい病気があります。特にそれが心奇形の場合は多くの他の疾患と違って出生後数日以内に状態が急変することもあるため、当院では出生24時間後の赤ちゃん全例に腕と足の酸素飽和度の差を利用した先天性心疾患スクリーニングを行っています。

クオリティーコントロール

これらのステップはただ定めただけでなく、院内で日常的に行われる医療者間の話し合い、学会、勉強会への参加、年1回のFMFの認証更新試験などを通じて不定期かつ頻回にプロセスを見直しながらより良いものへと進化させています。また、異常が疑われた段階で正確な診断と早期医療介入が実現できるように埼玉医科大学の胎児超音波外来をはじめとした周辺の周産期センターとも緊密に連携を取りながら母児のリスクを最大限ヘッジできるような体制を敷いています。

まとめ

当院のような小規模施設ではきめ細やかなケアを提供しやすいというメリットがある一方で大病院と比べると医療資源の制約を受けがちです。しかし、にしじまクリニックでは決してそれを仕方なしとせずに、患者さん一人ひとりに寄り添いながらも高品質な医療を提供できるような体制づくりを日々行っています。もし他にも当院での妊婦健診や出産に関して疑問に思われることがありましたら外来でご説明可能ですので、ご予約の上お気軽にお越しください。

1) Mai CT, et al. Birth Defects Res. 2019;111(18):1420

2) Feldkamp MI, et al. BMJ. 2017;357:j2249