麻酔を行うためのレベル(高さ)

無痛分娩も選択帝王切開も、全身麻酔ではなく局所麻酔を脊髄近くの腔に注入して鎮痛をはかります。

局所麻酔を注入するには専用の針があり、それを背中から穿刺します。穿刺部位は、脊髄神経が皮膚に分布する『デルマトーム』にそって、目的とする鎮痛範囲の中心となる椎間に穿刺を行います。

椎間のメルクマールは背中側の正中に突き出ている『棘(きょく)突起』となります。

針を椎間へ入りやすくするためには体位が重要で、できるだけ「かがんだ」姿勢をとってもらいます。

・側臥位の場合:顔はお腹をのぞき込み、膝はお腹につくような体位

・体重増加(BMI 30以上)や棘突起がわかりずらい場合は座位で穿刺を行います:座位の場合は上半身を介護者にゆだねるようにしてください(脱力姿勢)。それによって腰が突き出る体位となります。

硬膜外麻酔は黄(色)靭帯を超え、硬膜の外側の空間(硬膜外腔)に針を入れます。

一方帝王切開で行う脊髄くも膜下麻酔は硬膜を越え、硬膜の内側の空間に針を入れ局所麻酔を注入します。にしじまクリニックでは『硬膜を越える』感覚がわかり、また術後の頭痛が起こりにくい27G(ゲージ)ペンシルポイント針を採用しています。

そして穿刺のレベル(高さ)は、胸椎から腰椎の間で穿刺を行います。胸椎(Thoracic vertebra)は12個、腰椎(Lumbar vertebra)は5個の椎骨から成り立っています。

■硬膜外麻酔:T(胸椎)12〜L(腰椎)4に行います。

硬膜外麻酔に関しては、『帝王切開後の鎮痛目的』と、『無痛分娩のため』と痛みを取りたい場所が異なるので穿刺場所も変わります。そして局所麻酔薬の注入量を調節し、効かせたい脊髄分節範囲を狙った麻酔を行います。これを『分節麻酔』といいます。

一般的には帝王切開ではTh12-L1、

無痛分娩ではL3-4を狙って穿刺を行います。

■脊髄くも膜下麻酔:L3-4あたりに行います。

いずれの麻酔も、麻酔が効き過ぎてしまった万が一の場合に、すぐに対処できる体制は必須となります。

(院長執筆)