COVID-19 まとめ④:治療について

こんにちは、副院長の石田です。

今日はCOVID-19になってしまった時の治療についてです。

現在のところ確立された有効な治療は無い

多くの方がご存知のことと思いますが、今のところ確実に効果があるとされる有効な治療はありません。熱には解熱薬、咳には鎮咳薬をといった感じで各症状が辛い時にそれに合わせてお薬を使う対症療法がメインになります。そして重症化した際には入院し、呼吸不全などがあれば人工呼吸器やECMOと呼ばれる人工肺を用いて全身管理を行います。ちなみにたまに誤解があるところですが、人工呼吸器やECMOは別に感染症を治療してくれるわけではなく、単に機能が低下した肺の役割をサポートしてくれているだけです。結局ウイルスを体から排除したり、傷ついた体を修復するのは自分の免疫・回復能力ということですね。その意味でも普段からの体のメンテナンスがとても大切なのです。

非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の使用

NSAIDsとはイブプロフェン(ブルフェン®︎)、ロキソプロフェン(ロキソニン®︎)、ジクロフェナク(ボルタレン®︎)などの解熱鎮痛薬のことです。これらは日常的によく使われる素晴らしいお薬ではありますが、COVID-19での解熱薬は一般的にアセトアミノフェン(カロナール®︎)というNSAIDsではないお薬を使用することが多いです。これはコロナに感染した数人の若者がNSAIDsを服用後に重症化したという報告があったこと(本当にNSAIDsが原因だったのかは不明)、もともとインフルエンザの子供にNSAIDsを投与するとライ症候群という致命的な合併症を起こす危険があり、コロナでもなんとなくそれが懸念されていることなどが理由です。加えてフランスのオリヴィエ厚生大臣が3/14にNSAIDsがコロナウイルス感染者に有害事象をもたらす可能性があるとツイートしたのが世界的に広まり、それがさらにデマを生んでコロナ以上の爆発力で世界に拡散しました 1)。その後すぐにWHOを始めとする世界中の保健機関がNSAIDsと重症化の間には科学的に証明された因果関係は存在しないことを公表しました 2)。ただ、アセトアミノフェン自体は安価で手に入りやすく、NSAIDsと違って妊婦や小児にも使用しやすいことから上記とは関係なく第一選択として使用されることが多いです。ちなみにコロナに限らず重症感染症では解熱薬を使用すると死亡率が上昇する可能性が示唆されています 3)。

アビガン®︎とは

ファビピラビル(アビガン®︎)はRNAポリメラーゼ阻害薬という種類の薬で、ウイルスの遺伝子の複製を邪魔するお薬です。もともと抗インフルエンザ薬として日本の富士フィルム富山化学が開発しましたが、インフルエンザと同様にRNAを遺伝子として持つコロナウイルスにも有効なのでは無いかということで使われ始めました。現在臨床試験が行われていますが、動物実験で問題が認められたことから妊婦さんは使用できません 4)。また、アビガンの他にもヒドロキシクロロキン(元々マラリアの薬だけど、感染症以外の病気にも有効性が確認されているすごい薬。)をはじめ色々な薬が治験に入っており、その効果が期待されています。

感染した後の自己隔離はいつまで?

さて、発熱と咳が4日間続いて保健所に行き、PCR検査で陽性となった後に自宅待機を命じられた場合、一体いつになったら隔離が解けるのでしょうか。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると検査ベースの判断としては

1) 解熱薬を使用せずとも発熱がない
2) 咳や呼吸困難などの症状が改善している
3) 24時間以上間隔を空けた検査で少なくとも2回連続で陰性となる

を全て満たした場合としています。また、検査が受けられない場合の指標としては

1) 解熱薬を使用しなくても少なくとも72時間以上発熱がない
2) 咳や呼吸困難などの症状が改善している
3) 初めて発症してから7日以上が経過している

を全て満たしていれば隔離終了で良いということでした。
ただし、この基準は周囲への感染の危険を大幅に下げるとはしている一方で、可能性を0にできるわけではないとも言っています。ちなみに無症状で検査のみ陽性とでた場合にはその日から自己隔離を開始、その後7日間無症状なら隔離解除となりますが、さらに3日間はマスク着用と他人との距離を2m以上取ることが必要とされています 5)。

まとめ

ということで効くとされるお薬のない感染症ではありますが、治療に関して気になる点をいくつか解説してみました。次回は妊婦さんのコロナウイルス感染について書こうと思います。

1) Olivier Veran: twitter

2) WHO: Could ibuprofen worsen disease for people with COVID-19?

3) Byung Ho Lee, et al. Crit Care. 2012;16(1):450

4) 白木公康. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含むウイルス感染症と抗ウイルス薬の特徴

5) CDC: Coronavirus Disease 2019, Ending Home Isolation

COVID-19 まとめ③:検査について

こんにちは、副院長の石田です。

本日はコロナウイルスの検査についてです。最初に言っておくと、ちょっとややこしいです。

検査方法の解説とPCRの限界

新型コロナウイルス感染を疑われた患者さんは、一般的にPCR(核酸増幅法)という手法でウイルスの遺伝子を検出することによって診断を確定します。検体は主に喀痰を使用しますが、痰が出ない人は喉や鼻の奥を綿棒で拭って採取することもあります。PCRという言葉がこの1ヶ月くらいで広く社会に浸透した印象がありますが、それと同時に偽陽性、偽陰性なんて言葉もよく耳にしますよね。これらの言葉が「病気じゃないのに検査が陽性に出てしまう」、「病気なのに検査が陰性に出てしまう」という状況を示していることをご存知の方も多いと思いますが、実際にどのくらい問題になるのでしょうか?そこで本日は一緒に計算してみようと思います。

まず、上記を検証するには検査の質を決める感度(感染者の何%を陽性と診断できるか)、特異度(健康な人の何%が陰性と診断できるか)、そして罹患率(検査する人の何%が本当に感染しているか)の3つの数字が必要になります。PCRの感度、特異度は諸説ありますが、本日は「両方とも99%」という超高性能検査として扱ってみましょう。対象は全東京都民とし、罹患率は1%と仮定してみます。東京の人口は計算しやすいように1000万人としますが、罹患率1%であれば10万人が既に感染していることになるので一刻も早い感染者の同定が必要ですね。

計算にはこちらの表を使用します。縦が病気の有無、横が検査結果です。まず、全検査対象数である10,000,000を右下に入れます。

続いて罹患率が1%なので感染者数:100,000人と健康な人の数:9,900,000人をそれぞれ記入します。

感度99%なので病気の100,000人中99,000人が陽性判定(1,000人が陰性)となり、特異度99%なので健康な9,900,000人中9,801,000人が陰性(99,000人が陽性)になります。

すると検査陽性の人の総数は99,000+99,000=198,000人、検査陰性の人の総数は1,000+9,801,000=9,802,000人になりました。

さて、これを見て既にお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、なんと検査陽性の人の半数は本当は感染していません。これを統計用語で「陽性的中率」(この場合は50%)といいます。そして割合は低いですが検査陰性の人の中にも1,000人もの感染者が潜んでいることになります。実はこれこそが流行当初から、専門家がこぞって「検査を無差別にやってはいけない」と言い続けていた理由です。今回の試算は感度・特異度ともに99%(超高スペック)、加えて都民が既に10万人感染しているという条件でやっているにも関わらず惨憺たる結果になりました。これをより実際の数字に近いであろう感度60%、特異度90%、罹患率0.1%に置き換えて再計算してみると検査陽性者中、本当の感染者の割合は0.6%程度になります。病院には残りの100万人近い偽陽性の患者さんまでもが一緒に殺到し、一瞬で医療崩壊が起こるわけです。孫正義社長の100万検査キット配布が実現するとまずかったのはこういうことでした。さらに実際の検査では、感染者から採取した検体にウイルスがちゃんと入っているかも問題になります。ウイルスは主に下気道といって肺の奥にたくさんいるのですが、とある研究によると感染者の喀痰ですら72%、上気道の拭い検体では僅かに32%しかウイルスが検出されませんでした 1)。以上のようにPCR検査自体は弱点だらけなのです。

PCRの弱点を補完するために

ではどうしたら良いのでしょうか?実は上記の計算中にその答えがあるのですが、検査を受ける患者さんが実際に感染しているであろう確率(検査前確率)を上げておくことで偽陽性の問題は大きく改善します。もちろん患者さんに1日人の集まるところで過ごしていただいてから検査するということではなく、本当に感染が疑われる人にだけ検査をするということです。最初の試算では罹患率1%と仮定した集団に検査を行いましたが、例えばコロナに感染している確率80%の人だけに絞って検査をした場合、感度60%、特異度90%だとしても陽性的中率は96%まで改善します。そしてこの検査前確率を引き上げる方法こそが、以下の厚労省からのご提案だったというわけです。特徴的な症状がある人だけに検査をすることでより正確な結果を得ようとしていたんですね。もちろん検査をめんどくさがっていたわけではありません。

その他胸部CT検査の方がPCRより感度が良いかもという報告もあるようですが、その一方でアメリカ放射線学会はCT上の肺炎像がコロナウイルスだけの特徴的なものではないことから第一の検査として使用することには否定的です 2)3)4)。

まとめ

というわけで随分と分かりにくい話だったと思いますがいかがでしたでしょうか?もし「コロナにかかったかな?」と思っても、余裕がある場合は少し様子を見てみるのも大切だということがご理解いただければ幸いです。そもそもコロナウイルスの検査は医療者は完全防御のうえ、陰圧室という特別な施設で検体を採取する必要があるため一般的な医療施設では実施することすら不可能ですので、いきなり病院に行っても検査してもらえるわけではありません。調子が悪かったり、受診するべきか迷った場合は上記の通り最寄の帰国者接触者相談センターへ電話で相談してみましょう。

1) Wang W, et al. JAMA 2020 Mar 11.

2) Fang Y, et al. Radiology. 2020 Feb 19.

3) Ai T, et al. Radiology. 2020 Feb 26.

4) ACR Recommendations for the use of Chest Radiography and Computed Tomography (CT) for Suspected COVID-19 Infection

COVID-19 まとめ②:症状、重症化のリスク

こんにちは、副院長の石田です。

前回の記事の続きです。本日は臨床的な側面からの記事です。どういった症状が出て、どういった人たちが重症化しやすいかをまとめてみました。

COVID-19の症状

人種によって微妙に違う可能性もありますが、最も多く見られる症状は発熱(83-99%)です。次いで咳(59-82%)、倦怠感(44-70%)のような症状も一般的です。その他、一部の人達に食欲不振(40-84%)、呼吸困難感(31-40%)、痰(28-33%)筋肉痛(11-35%)などが見られます 1)。武漢大学病院の報告で印象的だったのは上気道感染なのに意外と咽頭痛が少ない(17.4%)ことと、下痢(10.1%)、吐き気(10.1%)などの消化器症状が出る人がいることでしょうか 2)。ただ、この感染症は無症状で経過する方も多いという特徴があります。国民全員に対して検査をしている国が存在しないことから感染者の何割が本当に症状を呈するかはわかりませんが、数少ない全数検査をしたダイアモンドプリンセス号の例で見ると約半数が無症状であったことが分かります 3)。飽くまで定点観測であること(検査時点で無症状のまま陽性が出た後に発症した可能性がある)、また年齢比が実際の社会と同じでは無い(実社会より高齢者の割合が断トツに高い)ことを考えるとこの数字をこのまま受け取ることはできませんが、参考にしてみてください。

ちなみに巷では味や匂いが分からなくなったら確定みたいな風潮がありますが、味覚障害や嗅覚障害はインフルエンザなどの上気道感染でも起こり得る症状でコロナウイルスに特徴的なわけではありません。メカニズムとしては上気道の炎症により一時的に味覚や嗅覚を司る細胞への血流障害が起きるため感じにくくなるんですね。って思ってたら日本耳鼻咽喉科学会も同じこと言ってくれてました 4)。(もちろん、こちらに書いてあるように感覚障害を含めて体調不良を感じたら何らかの感染症を疑う必要はあります。)

重症化のリスクについて

中国で行われた44672例の患者さんを対象にした研究では81%が軽症、14%が中等症、そして5%が重症となりました。感染が確認された場合の致死率は2.3%ですが、80歳以上では14.8%、重症の患者さんだけで見ると49.0%となります 5)。アメリカ疾病予防管理センターでは重症化するリスクとして高齢者(特に65歳以上)であるということ以外に肺疾患、心血管疾患、糖尿病、肝疾患、悪性腫瘍、人工透析を要する腎不全などの基礎疾患を持っている方や、喫煙者、肥満症(特にBMI>=40)などの生活習慣的な部分を挙げています 1)。もちろんリスク要因が多い人の方が危険ということになりますが、ある報告によれば重症化した人達は平均して2.7個のリスクを保有していたということでした 6)。

まとめ

症状だけで見ると、軽症で済めば本当にただの風邪って感じですね。無症状の人が少なからずいること、軽症者が多く動き回れてしまうこと、人によっては潜伏期間が2週間程度まであることなどから感染が拡がりやすいというのはやはりありそうです。年齢や基礎疾患などは今更慌ててもどうにもなりませんが、とりあえず今からできるリスク対策は禁煙です。タバコの危険度についてはデータによって幅がありますが、2月の終わりに発表された中国からの論文では喫煙者だと重症化のリスクが非喫煙者に比べて14倍以上になる可能性も示唆されています 7)。加熱式タバコや受動喫煙も十分に良くありませんので、この4月から受動喫煙を取締る改正健康増進法や関連条例も施行されましたし、喫煙者の方におかれましてはこの機会に禁煙されることを強くお勧めいたします 8)9)。

1) CDC: Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)

2) Wang D, et al. JAMA. 2020 Feb 7.

3) 国立感染症研究所:ダイアモンドプリンセス号におけるCOVID-19症例

4) 日本耳鼻咽喉科学会:嗅覚・味覚障害と新型コロナウイルス感染について

5) Zunyou Wu, et al. JAMA. 2020 Feb 24.

6) Graziano Onder, et al. JAMA. March 23, 2020.

7) Liu W, et al. Chin Med J. 2020 Feb 28.

8) 厚生労働省:受動喫煙対策

9) 東京都福祉保健局:東京都受動喫煙防止条例

COVID-19 まとめ①:コロナウイルスについて

こんにちは、副院長の石田です。

コロナウイルス、いよいよエラいことになってきましたね。皆さん既に医療者並にたくさんの知識を備えていらっしゃることとは思いますが、色々と情報も出揃ってきているので改めてこのブログでまとめてみようと思います。というわけで今回はコロナウイルスについてです。

コロナウイルスとは

コロナウイルスとは動物と人間の双方に感染することができるエンベロープウイルスでウイルス表面に独特なスパイクを持っているのが特徴です。その形が王冠に見えることからラテン語で王冠を表す「コロナ」が名前になったんですね。ちなみにエンベロープとはウイルス表面を覆っている膜のことで、感染対象の細胞内に侵入したり免疫による攻撃を回避する役割を持っていますが、それ自体は脂質でできていることからアルコールなどで容易に破壊されるため消毒が楽です。風邪の10〜15%、特に流行の最盛期には大人の上気道感染症の1/3はコロナウイルスが原因とされているくらいありふれたウイルスなので、それ自体は目新しくありません。

※写真は国立感染症研究所のウェブサイトからお借りしてきました。

新型コロナウイルスはどのように発見されたのか

2019年12月、湖北省武漢で肺炎の集団発生が確認されました。そこで原因微生物を特定するべく患者さんの検体より採取されたゲノム配列を解析したところ、新型のコロナウイルスが発見されたということです。このウイルスはSARS-CoV-2 (Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2) と名付けられました。これにちなんでよくある誤解ですが、COVID-19というのはウイルスの名前ではなくウイルスが引き起こす「病気の名前」です。エイズを起こすのがHIVというウイルスであるのと一緒ですね。

感染経路

疫学調査により武漢にある海鮮市場から発生したのではないかと考えられていますが、本当の発生源は未だによく分かっていません 。ただ、現在は人から人への感染がメインと考えられています 1)2)。今のところ有力視されている感染経路は飛沫感染と接触感染です。患者さんの咳やくしゃみなどにより体外に出た小さな粒子が他人の口や鼻などの粘膜に付着することで伝染していくんですね。飛沫感染の場合、通常2m以上は飛ばないので他人との距離を保つことが予防にとって重要になります。ただ、空気中でウイルスが3時間程度漂ったという報告もあり、今後この知見は変わってくるかもしれません 3)。以上のことから予防には手洗い、うがい、マスクの他、不要不急の外出や他人との接触を避けること、またよく手が触れる場所は積極的に消毒することが勧められているわけですね。

潜伏期間

感染から14日間が潜伏期間と考えられていますが、これは最長14日間というだけで実際には5.2日間くらいがウイルスへの暴露から発症までの平均的な時間と考えられています 4)5)。なので「本日の新規感染者は2週間前の感染状況を反映している」というのは誤解のある部分で、実際には検査に最長で数日かかることを考えても概ね1週間〜2週間前くらいにウイルスをもらった人達の人数ということになります 6)。

まとめ

今回はコロナウイルスの特徴をご紹介いたしました。皆さんが既に知っている情報も多いとは思いますが、参考になったら幸いです。次回はCOVID-19について症状を含め臨床的な話をご紹介しようと思います。

1) 厚生労働省:新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第1版

2) WHO: Novel Coronavirus Situation Report-1

3) van Doremalen N, et al. N Engl J Med. 2020 Mar 17

4) Special Expert Group for Control of the Epidemic of Novel Coronavirus Pneumonia of the Chinese Preventive Medicine Association. Zhonghua Yu Fang Yi Xue Za Zhi. 2020 Feb 14; 41(2): 139-144

5) Li Q, et al. N Engl J Med. 2020 Mar 26; 382(13): 1199-1207

6) 厚生労働省:新型コロナウイルスに関するQ&A

月の満ち欠けは陣痛、出産と関係があるか

こんにちは、副院長の石田です。

満月の夜、夜勤スタッフは緊張の面持ちで出勤してきます。「今日は荒れるよ…。」

いにしえより人類は闇夜を照らす月の不思議な魅力に時にどうしようもないほど惹きつけられ、時にその姿に魔力を感じ恐れてきました。そして潮の満ち干きはおろか、出産すら月の影響を受けていると考えてきたのです。実際に産婦人科にかけられているカレンダーには月の満ち欠けが記載されていますし、マタニティーアプリの中にはやはりその日の月の状態を確認できる機能が付いているものもあります。そういえば数年前のスーパームーンの時にうちの奥さんが「お金が貯まるから」とか言って月に向かってお財布を振ってたら、気がつくと隣で知らないインド人が同じように真似して振っていました。

というわけで今日は月と陣痛、出産などの関係に関してお話ししたいと思います。

そもそもなんで月と出産数に関係があるのか

地球上にある様々なものは直接的、間接的に月の影響を受けています。例えば満月のときは太陽、地球、月が一直線上に並ぶことで地球に及ぼす影響が最も強くなるためその辺りで海は大潮を迎えます。人間の体も6割は水分でできており、同じように太陽と月の影響を受けやすいというわけです。

実際どうなのか

いや、それ本当なの?ってことで皆様に代わって調べてまいりました。まず、アイルランドより18ヶ月間で10,027件の分娩に対して月のサイクルと出産件数の関係を調べたやつ1)、続いてイタリアより327件の分娩に関するretrospective analysis 2)、そしてさらには1997年から2001年までの実に564,039件という膨大な数の分娩を月の満ち欠け62周期にわたり検証したアメリカの研究3)。そう、その全てが結論づけています。

「月とお産は関係なし」

無関係かよ!!!いやいや、これだけ言ってたら何かしら関係するものあるでしょ?例えば月がどうだと赤ちゃんが元気に生まれてくるとか、満月だと女の子が多いとか。

「それも関係なし」4)

その他にも世界のあちこちから調べてみたよって研究がいくつも出ていましたが、ことごとく関係ありませんでしたという結論で締めくくられていました。ふと思ったんですが、この言い伝えって日本だけじゃなくて世界中で言われてるんですね。月、すごい。

ちなみに生理はどうなの?ってことで調べてみたところ、1980年代に出た古い研究が月の周期と生理周期がある程度同期する可能性があるようなことを示唆していました5)6)。まぁ、古すぎるしfull textも読んでいないので実際どうなのかはよく分かりませんが…。

結論

お産と月のコンディションは関係ないみたいですので皆さん安心してください。でも、高層ビルが増えたりして夜空を見上げる機会が少なくなっている現代で、月の具合をみながら「赤ちゃんまだかなー?」って家族でお月様を眺めるのはきっとステキな思い出になるのでおススメです。

あと、夜に月に向かってお財布を振るのはお勧めしません。悪い奴が近くにいたらひったくられます。どうしてもやるならご自宅の安全な場所でお願いいたします。

1) Ong S, et al. J Obstet Gynaecol. 1998 Nov; 18(6): 538-9

2) Lagana AS, et al. Kathmandu Univ Med J (KUMJ). 2014 Oct-Dec; 12(48): 233-7

3) Arliss JM, et al. Am J Obstet Gynecol. 2005 May; 192(5): 1462-4

4) Staboulidou I, et al. Acts Obstet Gynecol Scand. 2008; 87(8): 875-9

5) Law SP. Acta Obstet Gynecol Scand. 1986; 65(1): 45-8

6) Friedmann E. Am J Obstet Gynecol. 1981 Jun 1; 140(3): 350