子育てにおける絵本の読み聞かせの効果について

こんにちは、副院長の石田です。

突然ですがこのブログを読んでくださっているお父さん、お母さんは普段お子さんに絵本を読んでいらっしゃいますでしょうか?子育てには正解というものがあまりなく、それが故に世の親は苦悩し続けるわけですが、こと絵本に関してはその有用性が色々と示されています。というわけで今日は絵本の読み聞かせが持つ効果についてのお話です。

クシュラの奇跡

皆さんは『クシュラの奇跡』という本をご存知でしょうか?1984年に発刊されたこの本はニュージーランドに生まれたクシュラという染色体異常による重い障害を持って生まれた子供の成長の記録です。子育ては困難を極めてまともに睡眠も取れなかった両親が、ふと生後4ヶ月のクシュラに本を読み聞かせると強い関心を示したのです。それからというもの二人は一日14冊の本を彼女に読み聞かせ続けたところ、精神発達遅滞や身体障害があったにも関わらずクシュラが5歳になる頃には平均より遥かに高い知性を身につけて自分で本を読めるようになったということでした 1)。

絵本の持つ学力への影響

絵本は子供の語彙力を伸ばすのに非常に効果的であることは数々の研究でも証明されていますが、言語能力に限らず数学力も向上する可能性が知られています 2)3)4)。子供に読む絵本が数学力を伸ばすのに役立つというと意外な気もしますが、これに関してはもう少し大きくなったお兄ちゃんお姉ちゃんでも読書と算数力の相関が日本の教育系大手企業であるベネッセの調査によっても示されています。ベネッセは自社で提供している家庭学習教材に電子書籍サービスが組み込まれていますが、その利用状況と学力の関係を調べたところ教科別では算数で最も読書量の増加による点数の伸びが示されたということでした 5)。これについては文章中に与えられた問いや条件を読み取る力が読書によって高まったのではないかとされています。いずれにしても絵本に触れる習慣があれば成長に伴い自ずと読書に対する親和性も上がるでしょうし、その中で様々な側面での好影響があることは想像に難くありません。また、読書量が多い人間は収入が高いというデータに至ってはあらゆるところで公表されています。

相関関係と因果関係

ここまで書いておいて何ですが、読書量と学力、生涯収入に関しては相関関係は示されていても因果関係ははっきりしていません。どういうことかと言うと「本をたくさん読む子だから頭が良くなって稼ぎの良い仕事にもつける」のか「もともと頭が良くて将来高収入を得られるような子だから本もたくさん読む」のかは分からないということです。ただ、個人的には本を読み聞かせたり昔話を寝かしつけに語ってあげることは子供の情緒を安定化させて想像力を伸ばすのに確実に良い効果があると考えています。というのも以前「食事は体の栄養、絵本は心の栄養」という言葉を聞いた時にそういうものかと思って我が子への読み聞かせの時間を意識的に作るようにしたところ、語彙力やお絵かきで使う色彩量、お話作りの内容の多様性などがみるみる向上していったということを経験しました。

まとめ

たくさん本を読んであげることは決して楽な作業ではありませんが、その反面で絵本を通して彼らと向き合う時間は子供の将来に大きな可能性を授けてあげられる無二のプレゼントとなるかもしれません。子供との時間をどう過ごしたらいいか分からない時には是非お子さんを連れて図書館にでも出かけてみることを(新型コロナウイルスが収束した後)お勧めいたします。

1) ドロシー・バトラー 『クシュラの奇跡』のら出版

2) Biemiller, et al. Journal of Educational Psychology; 98(1): 44-62

3) Horst JS, et al. Front Phychol. 2011 Feb 17; 2: 17

4) Maria van den Heuvel-Panhuizen, et al. Educ Psychol (Lond). 2016 Feb 7; 36(2): 323-346

5) https://berd.benesse.jp/up_images/textarea/bigdata/1026releasenewsletter.pdf?utm_source=banner&utm_medium=banner&utm_campaign=fromebookpage20181026